みかん小説
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"4時20分で止まった遺品" 第12話

その、アパートの壊れた湯器を修理するがなく、ね着をして寒さに耐えた夜があった。

『おは悪いではない。だが、に優しさゆえに破滅する。に最初からを握らせれば、そのは決してくその元に留まることはない。 だから私は、おに直接渡さず、誰も見向きもしないボロ倉庫の壁の裏に隠したのだ。 遺言も、そのためにあのようにかせた。 や田畑という目に見える骨を投げてやれば、欲な裕があんな臭いボロ倉庫の権利など気にも留めないことは分かっていたからだ。 そして、遺言本の釘を刺しておいた。 つは、倉庫とその敷の物品のすべてをおの単独名義にすること。 もうつは、あの古い腕計をおに別途相続させることだ。 この庫をける方法は、あの計の裏蓋のにしかない』

浩司は、庫のの腕計を見つめた。 裏蓋の内側の『4、20』。

『あの計は、私の母がおたちの祖母が、私が松原精密をげた最初のに買ってくれたものだ。 計の針は、私がに固定して止めた。 浩司、おがこの世に産声をげた刻が、昭、午分だったからだ』

――トントン。トントン。

のベッドで、計を叩きながら浩司を見つめていた父の瞳。

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父はを尋ねていたのではなかった。自分が命がけで守り抜きたかった息子のまれた刻を、そのそのものを指し示していたのだ。

浩司は、涙で文字が滲む最の便箋をめくった。

、おが私のためにしてくれたことのすべてを、私はっている。 脳の病のせいで、おの顔すらせないがあったと、正気に戻ったに医師から聞いた。そんなけない夜、おがベッドの脇でどれほど涙を流していたか、私は聞くことができなかった。聞けば、私のが申し訳なさで張り裂けてしまうとったからだ。 すまなかった。私はおを試したのではない。ただ、おと、お族の未来を守りたかったのだ。 これは、すべておのものだ。 誰にもげる必はない。兄に対しても、円たりとも渡してはならない。 胸を張って、自分のきなさい』

然とした万の文章はそこで終わっていた。 しかし、その便箋の最段に、震えるボールペンの跡で、たっただけ、殴りきのような文字が残されていた。 の直、病院のベッドので、最の力を振り絞っていたことが目で分かる文字だった。

『浩司、もうゆっくりお休み』

浩司はそのを、指先で何度も、何度もなぞった。 、夜に父が目を覚ますたびにび起き、続けて熟できた夜など度もなかった浩司の体を気遣う、父の最の祈りだった。

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浩司はを抱きしめ、庫のたい鉄扉に額を押し当てて、声をげて泣いた。

夕方、アパートへ戻った浩司は、卓のに座る苗にそのを静かに渡した。 苗は最初、戸惑ったようにを受け取ったが、ページをめくるにつれてその瞳に涙が溢れし、最を読み終えた、両で顔を覆って静かに肩を震わせた。

しばらくの沈黙の苗はがり、台所の流し台へと向かった。 の蛇を捻り、が流れる音がく続いた。やがてを止め、戻ってきた苗のには、綺麗に洗われ、固く絞られた布巾が握られていた。

「……お義父様の作業着、私が綺麗にお洗濯しておきますね」

苗は、浩司が脱いだ父の形見の作業着を両で受け取ると、おしそうに胸に抱きしめた。

翌朝、浩司はの延べ棒を自宅に持ち帰ることはせず、まず遺言を作成した野弁護士の事務所へ話を入れた。事を聞いた弁護士は即座に「現の保全が最優先です。何もかさないでください」と指示をした。

そのの午、野弁護士ち会いのもと、公認の貴属鑑定士と税理士が倉庫の隠し部へと入った。 鑑定士は袋をはめ、庫からインゴットを本ずつ取りして精密秤に乗せ、刻印されたシリアルナンバーと父が遺した購入証の束をつひとつ照していった。

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