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"「もう戻るな」と言った息子へ" 第2話

「……嫌がらせだなんて、そんなことをした覚えは切ないわ。志、お願いだから落ち着いて私の話を聞いてちょうだい。私は耶さんに、悪なんて何もしていないわ」

に息子の腕へを伸ばし、の潔を訴えようとした。だが、志はそのを乱暴に払い除け、たく顔を背けた。まるで私の声など最初からしない雑音であるかのように、線をへと落とす。

「お母さん、もういいんです……。私たち、夫婦入らずの切にしたいんです」

耶がハンカチ越しに顔をげ、ややかな線を私に向けた。その声音には、先ほどまでの泣き声とは裏腹に、私をこのから完全に排除しようとする固な拒絶の志が宿っていた。 私の臓は、鐘のように激しく打鐘を繰り返していた。証拠も事実確認もないまま、嫁の涙の言だけで、実の母親を罪としてから追いすというのか。

「……確かな証拠もないのに、私を追いすというの? 、呉で真面目に働いて、あなたをに育てげたこの母親を、そんな確かな噂だけで切り捨てるのね……」

悔しさと痛ないが喉元まで込みげてきたが、私は唇をく噛みしめ、必に涙をこらえた。ここで取り乱して泣き叫ぶことだけは、私の矜持が許さなかった。 志は私の顔を直しようとせず、宙を睨みつけたままであった。

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「母さん、これは耶と俺で話しって決めたことだ。の朝までに荷物をまとめてくれ」

その言葉に被せるように、耶が然と言い放った。

「お母さんの荷物は、最限でお願いしますね。このは、これからは私たちのものですから」

耶の放った無慈な言葉が、胸の奥くまで突き刺さる。 、夫が界してからというもの、の詰まったこのを必に守り、維持管理の費用も私が面してきた。すべては息子夫婦が自由なく暮らせるようにと捧げてきたものだったのに、彼女はそれを当然の権利のように奪い取ろうとしている。

私はく息を吸い込み、乱れかけた呼吸をえた。

「……分かったわ。きます。でも志、いつか必ず、今悔するが来るわよ」

静かに、しかし凛とした声でそう告げると、私はに背を向け、自分の部へと歩きした。 軋む廊みながら、仏置されたき夫の遺界に入る。 (あなた……私はこれから、体どうすればいいの?) でそう問いかけた。しかし、絶望の暗の奥底で、私のに何か途方もなくきな転が訪れようとしている予が、微かに、しかし確かに芽え始めていた。

翌朝、の空がみ始めた頃、私は暗い自さなスーツケースのに正座していた。

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の呉勤務で培ったの品や、夫とのささやかな記の品々。それらをたったつの鞄に押し込めなければならない現実の虚しさに、胸が張り裂けそうになる。何を残し、何を捨てるべきか。選別のたびに指先が震えた。

その触れもなく部の引き戸が乱暴にけ放たれた。

「母さん、ってくれよ」

志が仁王ちしていた。その険しい表には、かつて私を「お母さん」と慕っていた息子の面など微も残されていなかった。 志の背から、耶が腕を組みながら姿を現した。その元には、勝利を確信したような勝ち誇った笑みが浮かんでいる。

「お母さん、これからは私たちのしい活が始まるんです。どうか私たちの邪魔をしないでくださいね」

ろすようなその酷な線を受け、私のスーツケースを閉めるが激しく震えた。それはりなのか、なのか、自分でも判別がつかなかった。私は無言でがり、スーツケースの持ちく握りしめると、度も振り返ることなく玄関の敷居を跨いだ。

取りで扉をた瞬端でち話をしていた所の田さんと鈴さんの姿が目に入った。は私の姿を認めるなり、ピタリと会話を止め、顔を見わせてひそひそと囁きった。

田さんがわざとらしい笑みを浮かべ、声をかけてくる。

「あら、川島さん、おかけですか?」

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