みかん小説
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"「もう戻るな」と言った息子へ" 第3話

その声音には、らかにの内り尽くしているかのような、探るような響きが含まれていた。

「……ええ、し用事がありまして」

私が曖昧に濁して通り過ぎようとすると、鈴さんが蔑むような線を向けながらを挟んできた。

耶さん、本当に変だったみたいですねえ。お姑さんからの酷い嫁いびりで……」

その言葉を聞いた瞬、私のはアスファルトのに縫い止められたように凍りついた。 嫁いびり。私が? 体誰が、いつのにそんな根も葉もない嘘を町内に広めたというのか。

「……そんなこと、私は切しておりません!」

に声を張りげて否定した。しかし、の主婦のややかな表は微だにしなかった。それどころか、憐れみと侮蔑が混ざりった線で私を取り囲む。

「川島さん、もう認めた方がいいですよ。耶さんが泣きながら町内の皆さんに相談されていたのを、皆さん見ていらっしゃいますから」

田さんの無慈な言葉が、私のく抉り取った。 この町で所付きいを切にし、誠実に暮らしてきた私の信用が、たったつの巧妙な嘘によって瞬で崩れっていく。弁の言葉すら届かない現実のに、私は唇を噛みしめるしかなかった。

逃げるように歩きした私の背に、自宅の玄関先から志の声が追いかけてきた。

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「もう度と戻ってくるな! おみたいな性格の悪い母親は、うちにはいらないんだよ!」

息子の残酷極まりない罵声に、私のきくよろめいた。 性格の悪い母親――この私が? 毎朝に起きて温かい朝を用し、志の好物を欠かさず作り、息子の健康だけを祈り続けてきたこの私が、なぜそこまで罵倒されなければならないのか。

「お母さん、私たちの幸せを邪魔しないでくださいねー!」

耶の笑いが、たい朝に乗って私の朶を打った。 私は俯き、スーツケースを引きずりながら必に歩をめた。

通りへと抜ける角を曲がったところで、呉苦楽を共にしてきた元同僚の田さんと鉢わせした。

「良子さん! どうしたの? 顔が真っ青よ」

さんの温かい声を聞いた瞬、張り詰めていた糸が切れ、目から涙が溢れそうになった。しかし、私は咄嗟にハンカチで目元を押さえ、涙を押し留めた。で醜態を晒すわけにはいかない。

「……実は、息子夫婦とし折りいが悪くなってしまってね」

私が言葉を濁すと、田さんは息を呑み、信じられないといった表で私を見つめた。

「……まさか、あの噂は本当だったの? 良子さんがお嫁さんを毎いびり倒しているっていう……」

さんまでもがその噂をっていたことに、私は愕然とした。

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同じ職で机を並べ、私のとなりをり尽くしているはずの同僚にまで、私はすでに悪辣な姑として見なされているのか。

「違うのよ、田さん! 私は何もしていないわ!」

「でも良子さん、耶さんのお母様が、先の町内会の集まりで涙ながらに話していたのよ。良子さんが毎耶さんに言いがかりをつけて、いじめているって……」

耶の母親――えみ子。 その名を聞いた瞬、私の背筋にたいものがった。私は耶の実とは冠婚葬祭以でほとんど交流を持っていなかったはずだ。それなのに、なぜ彼女が町内会で私の悪評を触れ回っているのか。

取りのまま、私は夕方、駅くのさなへと駆け込んだ。 応対した若い員の線も、どこか余所余所しくたかった。きっとこの辺にも、悪名い姑の噂が届いているのだろう。

「こちらの物件でよろしいですか?」

提示されたのは、築数の古い造アパートの1DKだった。賃は万円。わずかな暮らしのには決して楽な費ではないが、今夜の根を確保するためには背に腹は代えられない。私は震えるで契約に署名した。

埃っぽいアパートの部を踏み入れた瞬方の壁から押し寄せるような烈な孤独に襲われた。 畳のにスーツケースを置き、座り込む。

ここには夫の位牌も仏壇もない。毎朝欠かさずあげていた線りも、お供えのを取り替える課も、すべて奪われてしまった。

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