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"「もう戻るな」と言った息子へ" 第5話

温かい言葉に包まれ、ようやく呼吸が楽になったそのの入りの鈴がカランと鳴った。 入ってきたのは、見覚えのある若い女性客だった。耶の代の同級である裕子さんであった。

「あら、川島さん……」

裕子さんは私を見るなり、し驚いたようにを止めた。

「裕子さん、お久しぶりです」

私が会釈をすると、裕子さんは周囲を気に病むように見回した声で私に歩み寄ってきた。

「良子さん……実は私、ずっと気になっていることがあって……」

「何かしら?」

耶のお母様……えみ子さんのことなんです。最、町内会のあちこちで、良子さんのことに関しておかしな話を言いふらしているんです」

私の臓が、再びドクンと嫌な音をてて鐘を打ち始めた。やはり、噂の発信源は耶の母親のえみ子だったのだ。

「えみ子さんが、具体にどんな話をされているの?」

裕子さんはさらに声を潜め、困惑を滲ませながら語った。

「えみ子さんが言うには、良子さんが毎耶の作る料理にネチネチと文句をつけてべさせなかったって……。でも、私、耶本から直接聞いていたんです。『お義母さんはいつも私の料理を美しいって褒めてくれて、本当に優しいの』って。だから、どう考えても辻褄がわないんです」

私ので、散らばっていたパズルのピースが急速に繋がり始めた。

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えみ子がに嘘を捏造し、町内にばら撒いている。しかし、体何のために?

「それに……えみ子さんは良子さんの悪を言う、まるで自分の目で見てきたかのように妙に詳細に語るんです。でも、えみ子さんが川島さんのお宅に頻繁に入りしていたなんて話、聞いたことがありませんし……」

裕子さんの指摘に、私は息を呑んだ。

「ええ……えみ子さんがうちに来たことなんて、こので数回のお茶程度よ。同居の様子なんて見ているはずがないわ」

「そうですよね。だから絶対におかしいんです」

裕子さんは腕計に目を落とし、ハッとした表を浮かべた。

「ごめんなさい、もう仕事に戻らなくちゃ。でも良子さん、私は絶対に良子さんの方ですからね!」

裕子さんがっていった部始終を聞いていた吉岡が、極めて真剣な面持ちで私のてきた。

「良子さん……これ、もしかしたらあなた、完全に罠に嵌められたんじゃないかしら」

「罠……ですか?」

「ええ。えみ子という、実は以にも別の所で似たような銭や親族トラブルを起こしていたって、呉業界のいから聞いたことがあるのよ」

美咲さんも神妙な顔で頷いた。

「私も噂を聞いたことがあります。自分の娘の結婚相の実と揉めて、あることないこと言いふらして慰謝料を巻きげ、結局婚に追い込んだとか……」

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私の全に、微細な震えがった。 もしそれが事実なら、私は最初から、えみ子と耶のによって綿密に仕組まれた策略の標にされていたということなのか。

「良子さん、ただ耐えているだけじゃ駄目よ。徹底に証拠を集めなさい」

吉岡の力い助言に、私はく頷いた。そうだ。いつまでも被害者面をして泣き寝入りしているではない。真実を暴き、自らの誇りを取り戻すためのを起こさなければならない。

そのの帰り、私は量販ち寄り、のひらに収まる超型のICレコーダーを購入した。もしえみ子が再び私の名誉を傷つける嘘を触れ回っているなら、その音声を完全に記録してやろうとに決めた。

アパートへ戻り、集ポストをけると、通のい封が入っていた。 表にも裏にも、差の名かれていない。 胸騒ぎを覚えながら部に入り、恐る恐る封筒を破ると、から便箋が枚現れた。そこには、きでたっただけ記されていた。

『真実をりたければ、の午央公園の噴へ来てください』

指先が微かに震えた。これは何かの罠だろうか。それとも、私を助けようとする誰かからの接触なのだろうか。 しかし、今の私には、失うものなど何つ残されていなかった。

「……、必ずくわ」

夕暮れの窓のを見つめながら、私は固く誓った。に及ぶ暗の孤独に、終止符を打つづいていると信じて。

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