みかん小説
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"ただいまの裏にあった10年" 第12話

その始まりは偽物だった。

だが、毎朝作った弁当は本物だった。

緒に卓を囲んだも、病気を配した夜も、旅先で笑ったことも、失いたくないとった気持ちも、本物だった。

そして本当の健が戻ってきた、彼はもう23歳の青の姿ではなかった。

さな骨と、父から贈られた腕計。

それが10隠されていた真実を連れて帰ってきた。

失われた命は戻らない。

佐藤夫妻が健と過ごせたはずのも戻らない。

がついた嘘も、本が犯した罪も消えることはない。

それでも、そのきる々まで過のまま止まり続ける必はなかった。

窓のには桜が咲いていた。

かず子は庭を見ながら、い昔をしていた。

23歳の健が自転へまたがり、「ってきます」と笑ったの朝。

痩せた田が玄関にち、「ただいま」と言ったの夕方。

遺骨箱から腕計がてきたあの

そして今、正が同じ玄関から「ただいま」と入ってくる。

同じ言葉なのに、もう怖くはなかった。

の支度をするかず子の横で、田の妻が料理を伝っていた。

誠と田はテレビを見ながら話し、正はその隣で笑っていた。

仏壇には、23歳の健の写真がある。

写真のの青だけは、歳を取らない。

が仏壇のへ座った。

静かにわせる。

「健さん、今も来ました」

では族の声が聞こえていた。

は目を閉じた。

自分が奪った名

自分が借りていた

そして、そのった温かさ。

しばらくして目をけると、かず子が卓から呼んだ。

「田さん、ご飯できたわよ」

昔なら「健」と呼ばれていた。

今は、もう違う。

は自分の名で振り返った。

「はい、今きます」

そして族の待つ卓へ向かった。

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