"面接官の誤算" 第9話
俺を馬鹿にしたが罰を受ければ気分はれるかもしれないが、それでは佐野が言う「内のみ」と差なくなってしまう。
佐野はまだ納得していなかった。
「でも、会社に損害をしたわけじゃないでしょう」
そう言うと、兄ではなく岸本社が顔をげた。
「ているよ」
い声だった。
佐野が初めて、社の顔を正面から見た。
岸本は採用関連の資料をに持ち、何度もページをめくった。
「最終面接で自然に落とされた材のに、競社で管理職になっているが何もいる。採用途で辞退したからも、面接対応を理由に挙げる回答が来ている。これは分な損失だ」
材は数字だけでは測れない。
誰を採らなかったことで、会社がいくら失ったか正確に計算することもできない。
けれど、会社の名を背負って応募者と接するが、個な偏見によってを狭くしていれば、期には組織そのものがくなる。
兄はその点を最初から問題にしていた。
「優秀なだけ欲しい。その考え自体は違っていません」
兄は佐野へ言った。
「でも、あなたは『優秀な』を探していたんじゃない。自分が優秀だといやすいだけを選んでいた」
佐野は唇を引き結んだ。
「違う」
「では、なぜ庭環境が評価項目に入るんですか」
「性を見るためです」
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「母子庭なら性に問題がある?」
「そういうでは――」
「面接では、そう言いましたね」
兄の声は最まで静かだった。
佐野は何度か言葉を探したが、まともな説はてこなかった。
俺はその姿を見ながら、つだけはっきり理解した。
あの。
俺が。
言い返さなくてよかった。
あそこで鳴りっていたら、「な応募者と面接官のトラブル」で終わっていたかもしれない。しかし黙って帰り、事実をそのまま持ち帰ったことで、初めて俺以のが受けてきた扱いまで表へすことができた。
本当にだったのは。
俺が。
勝つことではなかった。
同じ所で。
何が起き続けていたのかを。
らかにすることだった。
佐野への説が段落したところで、兄はもう冊の資料を取りした。それまで黙って聞いていた岸本社が、その表を見た瞬にわずかに表を変えた。兄が今ここへ来た目が、事部の処分だけではないことを理解したのだとう。
「岸本社。次はこちらです」
兄がそう言うと、佐野は瞬だけしたように見えた。自分だけが責められているわけではないと分かり、社にも問題があるなら話が曖昧になるとったのかもしれない。しかし実際には逆で、会社全体の管理責任まで調査対象になっていたということだった。
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親会社へ寄せられていた相談のには、採用部とは別に、管理職からの適切な言について訴えるものもあった。特に女性社員から、酒席や社内事で体な距を詰められたり、容姿について繰り返し発言されたりしたという申告が複数あり、その部は岸本自に関するものだった。
兄は断定な表現を避けながら、確認済みの事実だけを説した。社内事の写真、当の参加者への聞き取り、相談窓に残されていた記録。単なる噂ではなく、会社として正式に調査すべき内容が何も放置されていた。
「私は、そんなつもりでは……」
岸本の声がさくなった。
「問題は、どういうつもりだったかだけではありません」
親会社のコンプライアンス責任者が答えた。
「相がだと伝えたも同様の言が続いていたという証言があります。また、相談を受けた管理部が分な調査をわなかった点についても、経営責任を確認する必があります」
俺はその話を聞きながら、し複雑な気持ちになっていた。
最初はただ。
佐野へ。
謝らせたい。
それくらい。
っていた。
自分や母を。
馬鹿にしたことを。
悔させたい。
そんな気持ちが。
なかったと言えば。
嘘になる。
しかし調査がむほど、これは俺個の復讐として片づけていい話ではなくなっていた。
組織のでを持つが、自分の覚をルールだとい込み、それを止める仕組みも能していなかった。
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