みかん小説
本棚

"「介護が悪い」と責めた家族の3日後" 第24話

今の私にはただの用品でしかなかったからだ。

支度はたったの5分で終わった。

に、私はもう1度だけ義母さんの部の襖をけた。

義母さんはベッドので静かに目を覚ましていた。

での話しいの声を、きっと聞いていたのだろう。

その表には、しみと私への申し訳なさが滲んでいた。

さん……」

義母さんの目から、筋の涙がこぼれた。

「私のせいであなたのを台無しにしてしまって。俊夫が本当にひどいことを……」

私はベッドのそばにしゃがみ込み、義母さんのを優しく握った。

「お義母さん、謝らないでください。私のは台無しになんてなっていません。」

私はからの笑顔で義母さんを見つめた。

「お義母さんがいてくれたから、私は優しさのることができました。これからは俊夫さんの妻としてではなく、という1としてお義母さんに会いに来ますから。」

義母さんは私の言葉を聞いて、何度も何度も頷いた。

「ありがとう。本当にありがとうね。」

その温かい、私ので1つのきな物語が終わったような覚があった。

リビングに戻ると、弓が私を待っていた。

さん、これからの介護のやり方、私に教えてくれますか?」

弓の目は真剣そのものだった。

「私がお母さんを守ります。だから分からないことがあったら、話してもいいですか?」

広告

私は頷き、バッグのからしいノートを取りした。

「もちろんよ。このノートに基本なことは全部いてあるわ。岸さんや訪問護師さんにもしっかり頼るのよ。」

私は弓にノートを渡した。

「1で抱え込まないことが介護の鉄則だから。」

それは私から弓への、公式な引き継ぎの証だった。

私はスーツケースを引き、玄関へ向かった。

リビングのには、俊夫がまだ座り込んだままかずにいた。

私は最に1度だけ振り返り、彼に声をかけた。

「さようなら。もう2度と、あなたのお世話をすることはありません。」

俊夫は顔をげなかった。

ただ彼の震える背だけが、その部に取り残されていた。

私は玄関のドアをけ、た。

の夕暮れの空が、どこまでもく澄み切っていた。

たいが頬を撫でていくが、議と寒さはじなかった。

私の取りは軽く、呼吸はく、体の芯から力が湧いてくるのをじていた。

しかし物語はこれで終わりではない。

た私に待ち受けている、しいの始まり。

そして私を失ったあのがこれからどのような形へ変わっていくのか。

本当のでの解決は、まだし先にあったのだ。

私が実り、婚届に判を押させてから2週が過ぎた。

俊夫の朝は、以とは全く違うえ切ったものになっていた。

広告

目覚まし計のけたたましい音が、乱れた寝に響き渡る。

俊夫はを抱えながら、1で起きがった。

リビングへ向かっても、温かい噌汁の匂いはしない。

卓には、昨夜彼がべた弁当の空箱と空き缶が転がっているだけだ。

ワイシャツはシワだらけで、アイロンをかけてくれる妻はもういない。

俊夫はため息をつきながら、よれよれのシャツに腕を通した。

首回りがし黄ばんでいることに気づいたが、自分で洗濯をする気力もなかった。

義母の部からは、訪問介護のヘルパーさんのるい声が聞こえてくる。

弓も朝くから実に来て、ヘルパーさんと緒に義母の着替えを伝っていた。

俊夫は台所へ蔵庫をけたが、には古い調料しかない。

彼は舌打ちをして、忙しくく弓に向かって声をかけた。

「おい、俺の朝飯はないのか?」

弓はを止めることなく、たい背を向けたまま答えた。

「自分のご飯くらい、自分で用してよ。もうでしょう。」

「俺はこれから仕事にくんだぞ。しは兄の世話を……」

弓はキッと兄を睨んだ。

「私はお母さんの介護に来てるの。お兄ちゃんの政婦じゃないわ。」

弓の言葉には片の容赦もなかった。

俊夫は鳴り返そうとしたが、弓の隣にいるヘルパーさんの目線に気づき、をつぐんだ。

自分のなのに、彼には居所がない。

彼は空腹のまま、逃げるようにて会社へ向かった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: