"「介護が悪い」と責めた家族の3日後" 第25話
会社での俊夫のも急激に悪化していた。
これまでは「親の介護をしながら働く派な男」として振るい、輩に尊敬されていた。
しかし弁護士からの通は、彼の見栄を完全に打ち砕いた。
庭裁判所の続きが正式にみ、義母の財産管理は第者である専に移した。
俊夫は使い込んだ300万円を返還しなければならない。
括で返せる貯などなく、彼は自分の料から毎分割で支払う法な誓約をかされた。
さらに私の弁護士を通じて、婚に伴う慰謝料と財産分与の続きも始まった。
自由に使えるおは完全に底をついた。
切にしていたしいゴルフクラブも、古ショップに束文で売るしかなかった。
昼休み、同僚からランチに誘われても、俊夫は笑いで断るしかない。
「悪い、今はちょっと胃の調子が悪くてな。」
彼がにしているのは、コンビニのいおにぎり1つだけだ。
週末のゴルフも、夜のみ会も全て断るようになった。
気よく酒を奢っていた彼の姿は、もうどこにもない。
湯から漏れ聞こえるが、俊夫のに入った。
「佐藤さん、最付きい悪いですね。なんか奥さんに逃げられておもないらしいですよ。」
俊夫は唇をく噛み締めた。
彼が何よりも切にしていた世体が、音をてて崩れていく。
広告
その屈辱に耐えながら、彼はパソコンの画面をうつろな目で見つめるしかなかった。
誰かに愚痴を言おうにも、彼には本当の友も、族の温もりもすでに残されていなかったのだ。
方、実での義母の介護は、しい形へ変わりつつあった。
主介護者となった弓は、最初は戸惑うことばかりだった。
義母をベッドから子に移す、自分の腰に痛みがって泣きそうになるもあった。
事がうまくみ込めず、激しくむせる義母を見て、どうしていいか分からずパニックになりかけたこともある。
しかし弓は、決して1で抱え込まなかった。
私が残したあの分い介護ノートをき、そこにかれた記録を1つずつ確認した。
『分は必ずとろみをつける。』
『むせたは無理に背を叩かず、体を起こして落ち着くのを待つ。』
私の残したさなメモが、弓のを1つ1つ支えていた。
分からないことがあれば、すぐにケアマネージャーの岸さんや訪問護師さんに話で相談した。
「弓さん、1で頑張りすぎないでくださいね。私たちはチームですから。」
岸さんの言葉に、弓は何度も話で涙を流した。
プロのサービスを適切に使い、負担を分散させながら命を守っていく。
それは私が111で背負わされてきたものを、正しい形に直していく作業でもあった。
広告
あるの夕方、弓が義母の夕の介助をしていると、俊夫が会社から帰ってきた。
彼はを引きずるようにリビングに入り、ドカッとソファーに座り込んだ。
「おい、腰が痛い。肩も凝った。湿布を貼ってくれ。」
弓は義母の元を優しくタオルで拭きながら、たく言い放った。
「自分で貼って。が届かないなら壁にでも擦りつければ。」
「なんだと!しは兄を労ったらどうだ!」
弓はを止めた。
「私は今、お母さんの事なの。それよりお兄ちゃんも、しはお母さんの伝いをしたらどう?」
俊夫は嫌そうな顔をしてちがった。
「俺は疲れてるんだ。おがやればいいだろう。」
彼は母親の顔を見ようともせず、そのまま自分の部へ逃げるように入っていった。
弓はさくため息をつき、義母の方を見た。
義母はしそうな顔で、俊夫の部の閉まったドアを見つめていた。
「ごめんね、弓。あの子、本当にの貧しいになってしまった……」
弓は義母のを両で握り、優しく微笑んだ。
「お母さんが謝ることじゃないわ。それに私はもう、あのには何も期待してないから。」
その頃、私は実からで30分ほどれたさなアパートにいた。
婚の財産分与で得たわずかなおを元に借りた、私だけのしいおだ。
取りはさな1LDK。
部にはさなテーブルと布団、そして必最限のしかない。
でも私にはそれで分だった。
朝、目覚まし計をかけずに、窓から差し込む朝で自然に目が覚める。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
「冷たい嫁」と書かれた分担表
義母の介護を一人で背負うことを断った佐和子に、夫は冷たく言い放った。 「介護をしないなら、遺産は弟夫婦に譲る」 これまで買い物も通院も掃除も、黙って引き受けてきたのは佐和子だった。それなのに、義母の家で現金が消え始めると、疑いの目は真っ先に彼女へ向けられる。 さらに見つかったのは、義母が書いたはずの《佐和子さんがしたこと》というノート。そこには、覚えのない失敗や盗みの記録が並んでいた。 本当に義母の思い込みなのか。 それとも、誰かが佐和子を“悪い嫁”に仕立てようとしているのか。 介護、遺産、家の売却、消えた薬――。 家族のために我慢し続けてきた妻が、ようやく自分の人生を取り戻すまでの物語。兄弟姉妹|嫁姑|相続|介護1.4萬字5 32 -
完結第13話
閉じ込められた臨月の妻
妊娠38週、予定日まであと12日の加奈。夫が海外出張へ出た2日後、突然訪ねてきた義両親は「様子を見に来た」と言いながら、家事や学歴を責め続けた。そして義母に促され、家庭用サウナの中を確認しようと入った瞬間、背後で扉が閉まる。外側には南京錠。スマートフォンまで奪われた。「私たちから息子を奪った罰よ」。そう言い残し、義両親は5泊7日の温泉旅行へ出発した。水もなく、いつ陣痛が始まってもおかしくない密室。しかし加奈には、義両親が知らないことがあった。このサウナは、かつて一級建築士だった加奈自身が安全設計に関わった機種だった――。嫁姑|親子関係|修羅場2.0萬字5 548 -
完結第12話
ゆで卵ひとつで嫁をやめた朝
夜勤明けの朝9時、16時間働いて帰宅した千明の前に置かれたのは、冷たいゆで卵が1つだけだった。 食卓には夫と義母のための朝食が並んでいる。炊きたてのご飯、味噌汁、焼き魚、小鉢。けれど、千明の分だけはなかった。 「食べられるだけ感謝しろ」 義母のその一言で、千明の中で8年間張りつめていたものが静かに切れる。 同居する義母の生活費、光熱費、食費、固定資産税まで支え続けてきたのは誰だったのか。夫は本当に何も知らなかったのか。そして、毎月の明細に隠れていた“もう一つの家族”とは――。 家を出て3日後、義母からの着信は100件に達した。 たった1つのゆで卵から始まった決別が、8年間隠されてきた家族の金と嘘を暴いていく。嫁姑|絶縁1.9萬字5 1237 -
完結第6話
帰宅した夜、夫の嘘を知った
里帰り出産を終え、生後2ヶ月の息子を抱いてようやく自宅へ戻った美咲。夫・直人との3人暮らしが始まると思っていたその夜、隣人が突然玄関を叩いた。「毎晩毎晩、夜中までいい加減にしてください」。さらに「ご主人には前にも2回注意しました」と告げられ、美咲は耳を疑う。この2ヶ月、美咲は一度も家に帰っていない。では、隣人が何度も見かけた“妻らしき女性”は誰だったのか。問い詰められた直人は「会社の後輩が1度泊まっただけ」と説明するが、翌朝、隣人の証言によってその嘘も崩れ始める。出産のため家を離れていた2ヶ月間、自分の家庭で何が起きていたのか――美咲は静かに真実を確かめ始める。嫁姑|夫婦|不倫8.8千字5 1492 -
完結第15話
消えた実印
嫁が実印を隠した本当の理由。 姑が泥棒だと思った相手は、家を守るために動いていた。 70歳の誕生日を前に、仏壇から消えた大切な実印。 前日に家へ来ていたのは、長男の嫁・香織だけだった。 家の売却を調べていた嫁。 勝手に印鑑を持ち出した嫁。 文江は、すべてを裏切りだと思っていた。 しかし、弁護士から届いた一通の書類によって、隠されていた真実が明らかになる。 母の家を売ろうとしていた本当の人物は誰なのか。 そして、嫁が命をかけて守ろうとしていたものとは――。嫁姑|親不孝2.3萬字5 752 -
完結第10話
捨てられた妻の逆転相続
十年間、義母の介護を一人で背負い続けた妻・恵子。 しかし、四十九日の法要が終わった直後、夫から告げられたのは「もう君の役目は終わった」という冷たい離婚宣告だった。 家族のために尽くしてきた年月を、ただの「役目」としか見ていなかった夫と息子。 何も言い返さず家を出た恵子だったが、翌日、誰も知らなかった一通の封筒が加納家で見つかる。 そこに記されていた亡き義母の最後の意思が、家族の運命を大きく変えていく――。嫁姑|夫婦|介護1.4萬字5 1145 -
完結第11話
私を変えた元嫁
老舗和菓子店「宮本屋」を守ってきた宮本美津江は、一人息子の結婚相手・梨奈を初めて見た時、心の中でこう思った。 「この子なら、教えれば変えられる」 靴の揃え方、挨拶、お辞儀、言葉遣い、店での立ち居振る舞い。美津江はかつて自分が姑に教え込まれたように、嫁である梨奈を“宮本屋にふさわしい人”へ育てようとした。 最初は頼りなかった梨奈も、やがて店の顔となり、若女将として客に愛される存在になっていく。売上も伸び、雑誌やテレビにも取り上げられ、美津江は誇らしげに言った。 「この子は、私が育てたのよ」 けれどその言葉は、少しずつ梨奈の心を傷つけていた。 そんな中、息子・拓海の裏切りが発覚する。梨奈は家を出て、宮本屋を去る決意をするが、美津江が最初に心配したのは、嫁の心ではなく店の未来だった。 梨奈は本当に、美津江に育てられただけの嫁だったのか。 そして、宮本屋に残された美津江は、梨奈のいない店で初めて、自分が何を奪い、何を見落としてきたのかを知る。 嫁を変えようとした姑と、自分の人生を取り戻そうとした元嫁。 これは、家族でも他人でもない二人の女性が、衝突の末にもう一度向き合っていく物語。嫁姑|第二の人生1.6萬字5 403 -
完結第11話
捨てた料理の代償
義母・美智子と同居しながら、穏やかに暮らしていた奈々子。 ところが、お盆になると義妹の杏奈夫婦が突然帰省してくる。連絡もなく家へ上がり込み、食事を当然のように食べ、手伝いもせず、さらには義母へ金まで借りようとする二人。注意されるたび、杏奈は奈々子を「他人」扱いし、実家を乗っ取った嫁のように責め続けていた。 そして迎えたお盆の夕食。 食卓に並んだ料理を見た杏奈は、皆の前で言い放つ。 「他人が作った食事なんて、汚くて食べられない」 さらに翔太まで調子に乗り、料理を捨てようとする。 しかし、その料理には杏奈夫婦が知らない“ある秘密”があった。 閉じられていた和室の襖が開いた瞬間、杏奈の顔色は一変する。 翌朝、この家を出ていくことになったのは、「他人」と呼ばれた奈々子ではなかった――。兄弟姉妹|嫁姑1.7萬字5 8139 -
完結第13話
実印を押さない母
3年前、「半年だけ」という約束で始まった息子一家との同居。 夫を亡くし、一人暮らしだった67歳の佐伯佳代子は、息子夫婦と孫たちを自宅に迎え入れた。最初は賑やかで温かな暮らしだったが、いつの間にか食事、洗濯、孫の送迎、生活費の負担まで、すべてが佳代子の“当然の役目”になっていく。 そんなある日、息子が何気ない口調で切り出した。 「母さん、この家さ。そろそろ俺の名義にしない?」 家族だから。どうせ将来は相続するから。リフォームのためだから。 そう説明されながらも、佳代子の胸には小さな違和感が残る。そして偶然見つけた一枚の書類には、名義変更後の家の売却と、佳代子を高齢者住宅へ移す計画が書かれていた。 家族のために黙ってきた母が、初めて自分の人生を選び直す。 名義変更の日、佳代子が判子を押したのは、家を渡す書類ではなかった――。嫁姑|親子関係|金銭問題2.0萬字5 2078 -
完結第14話
4200万円の隠し家
日曜日の午後、佳代のもとへ義母から一本の電話が入る。 「家のローン、なんでまだ払ってないの?」 しかし佳代には、心当たりがなかった。夫・慎也から聞かされていたのは、義母と義妹が“手頃な賃貸”へ引っ越したという話だけ。けれど電話をきっかけに調べてみると、そこには4200万円で購入された新築の家と、夫が背負った3600万円のローンが隠されていた。 しかも所有者欄には、夫と義妹の名前。妻である佳代の名前はどこにもない。 さらに慎也は、亡き父が佳代に残した2400万円の遺産まで、返済計画の一部として勝手に考えていた。義母にも義妹にも、それぞれ都合のいい説明をしながら。 「家族のため」という言葉の裏で、夫は一体どこまで嘘を重ねていたのか。 一本の電話から、27年間信じてきた夫婦の形が静かに崩れ始める。人生逆転|嫁姑|金銭問題2.2萬字5 2062