みかん小説
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"「冷たい嫁」と書かれた分担表" 第9話

忘れたり疑ったりするがあっても、互いを壊さない距を選ぶことはできる。

が売れたあと、浩夫婦は相続の借りを求めなかった。宅ローンの返済は厳しいままだったが、それは彼らが自分で向きう問題だった。美穂と佐子は親しくならず、施設の事で会えば挨拶を交わす程度の関係に落ち着いた。

正志は、結婚記に佐子へ同居を再したいと申した。佐子はすぐには答えず、これからの事、活費、志津への訪問についていたしい分担表を見せた。以に夫がいた《たい》という文字は、もうどこにもない。

「表がなければ族じゃない、とはわない」と佐子は言った。「でも、表にするほど話しわなければ、また私が黙って引き受けます。それはもうしません」

正志は内容を読み、自分の担当欄へ署名した。佐子は半活を見直すことを条件に、週末からしずつ元ので過ごすことにした。許したから戻るのではなく、夫が変わり続けるかを自分の目で選ぶためだった。

センターの仕事も続けた。朝6は忙しかったが、きな鍋からつ湯気や、同僚と献を確認する声のにいると、自分のが戻ってきたようにじた。

ある、正志から話が入り、志津がしたとらされた。

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なら佐子は仕事を退し、すぐ施設へ向かっただろう。だが正志は「今は俺が病院へ付き添う。終わったら連絡する」と続けた。

夕方、佐子が施設を訪ねると、志津はベッドで眠っていた。正志は診察内容と薬の説をノートへ記し、護師へ今夜の対応を確認していた。見事な変ではない。薬の名違え、類の置き所も分からず、何度も職員へ尋ねていた。それでも、自分の役目としてそこにいた。

志津が目を覚まし、佐子を見ると、「遅かったわね」と言った。

「仕事がありましたから」

「嫁なのに」

子は腹をて、それからし笑った。「嫁です。でも、息子の代わりではありません」

志津はが分からないように目を閉じた。正志は隣でさくうなずいた。

族は、誰かすれば丸く収まるものではなかった。丸く見えていたのは、押し込められたの痛みがから見えなかっただけだ。佐子は義母を見捨てなかったが、自分まで差しすこともやめた。

帰り際、正志が診察のノートを持ち、佐子は自分の仕事鞄を持った。の荷物は別々で、どちらかが相の分まで抱えることはなかった。

施設の玄関をると、がっていた。佐子は傘を閉じ、自分ので濡れたへ踏みした。

翌朝も、彼女はいつものに仕事へ向かった。

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義母の症状が消えたわけでも、夫婦のに残った傷がなくなったわけでもない。それでも、誰かを支えることと、自分のけ渡すことは違うのだと、もう迷わず言える。

子の予定表には、仕事、義母への訪問、自分の休が同じきさの文字で並んでいた。どれかつだけが特別に優先されることはない。その当たりを守ることが、彼女が58歳から始めたしい暮らしだった。

それから1が過ぎた頃、センターにしいパート職員が入った。52歳の女性で、く義父を介護していたためで働くのは12ぶりだという。初は調理器具の置き所を何度も違え、昼休みになると「では毎作っていたのに、仕事になると何もできませんね」と肩を落とした。

子は、庭で続けてきたことが無かったことになるわけではないと伝えた。内に複数の料理を仕げ、材を無駄にせず、体調の違うわせる力は、すぐには数字に表れない。それでも確かにについている。かつて面接で同じ言葉を自分へ向けてもらいたかったのだと、話しながら気づいた。

数か、佐子はの研修を任されるようになった。役職がついたわけでも、料がきくがったわけでもない。しかし、自分が経験した回りが、今度は誰かの再発をしだけ楽にしていた。

族のために失ったとっていたのすべてが戻ることはなくても、そのをこれからどう使うかは選べるのだとった。

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