"尋ね人が呼んだ母の旧姓" 第4話
文子はその言葉を聞いた瞬、腹をてたという。
「何言ってるの。緒に帰るのよ」
子は々しく笑った。
「そうね」
そのは、それで話が終わった。
だが数。
移の混乱ので、子は突然姿を消した。
「いなくなったって、どういうこと?」
夫がわず尋ねた。
文子はしばらく答えなかった。
「本当に、分からなかったの」
々が斉に移するで、わずかな、子とはぐれた。
最初はすぐ見つかるとった。
文子は恵子のを引きながら、何度も周囲を探した。
名を呼んだ。
ち止まって待った。
に尋ねた。
だが、子は戻ってこなかった。
「事故だったのか、別の所へ移されたのか、それさえ分からなかった」
当は、誰かが突然見えなくなることが珍しくなかった。
族が同じ列に乗れない。
移先を勘違いする。
病気で途に残る。
わずかなき違いが、そのまま永の別れになってしまうことさえあった。
残された恵子は泣き続けた。
「お母さん」
何度もそう呼んだ。
文子には返す言葉がなかった。
自分だってだった。
のべ物があるかも分からない。
本へ本当に戻れるのかも分からない。
それでも、目ののさな子どもをそのへ置いていくことだけはできなかった。
「子さんに頼まれていたから?」
清が聞いた。
文子はし考え、首を横に振った。
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「それだけじゃないとう」
最初は確かに、子との約束だった。
だが緒に歩き始めると、それだけではなくなった。
恵子のさなを握っているうちに、そのをすことができなくなった。
べ物がないには、自分の分を半分にした。
恵子が疲れて歩けなくなれば、荷物を減らして背負った。
夜になると、寒さを避けるため体を寄せて眠った。
恵子が夜に目を覚まし、
「お母さんは?」
と尋ねるたび、文子は胸が詰まった。
「きっとまた会えるから」
最初はそう答えていた。
だがが経つほど、その言葉を言うのも苦しくなった。
それでも泣いている恵子を抱き寄せ、
「丈夫。本まで緒に帰ろう」
と繰り返した。
そうして何も過ごした。
やがて恵子は、文子を頼るようになった。
歩くは自分からを握る。
事のは隣に座る。
眠るもれたがらない。
文子は自分が母親になったつもりなどなかった。
ただ、目のの子どもを守らなければとっていただけだった。
ところが、本へ戻るための続きをめる段階で問題が起きた。
恵子には、族関係を分に証できるものが残っていなかった。
混乱ので失われたのか、もともと子が持っていたのか。
文子にも分からなかった。
「この子との関係は?」
そう尋ねられた、文子は答えに詰まった。
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友の子ども。
緒にしているだけ。
本当なら、そう言えばよかったのかもしれない。
しかし、そう答えたら恵子と引きされるのではないかという恐怖が文子を襲った。
ここまで緒に来た。
子に頼まれた。
本へ連れて帰ると恵子自にも約束した。
その子をらない誰かのに渡すことが怖かった。
文子は、とっさに言った。
「この子は、私の娘です」
茶のが静まり返った。
清は文子を見たままかなかった。
夫は改めて古い記録へ目を落とした。
「母 文子」
「子 恵子」
その文字は、文子がついた1つの嘘からまれたものだった。
「嘘だったの」
文子は言った。
「でも、あのはそれしかいつかなかった」
その、続きのも文子は母親として扱われた。
恵子も周囲がそう呼ぶのを聞き、いつしか文子を「お母さん」と呼ぶようになった。
「最初に呼ばれた、訂正できなかった」
文子は両をく握った。
「本当のお母さんじゃないって言ったら、この子がまた1になるような気がしたの」
恵子は何も言わず聞いていた。
文子は彼女の方を度見たが、すぐ線を落とした。
2はそのまま本へ戻った。
だが、帰国できたからといって、すぐ穏やかな活が待っていたわけではなかった。
本へ戻った文子には、頼れるものがほとんどなかった。
自分自の活をて直すだけでも精いっぱいだった。
む所を確保し、べ物をに入れ、これからどうきるか考えなければならなかった。
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