昭和19年、学童疎開の列車に乗った二人の少女は、ほんのいたずらのつもりで胸の名札を取り替えた。 「明日になったら戻そうね」 そう笑って交わした小さな約束。けれど、戦争はその約束を簡単には戻せないものにしてしまう。 東京大空襲、家族の消息不明、終戦直後の混乱。迎えのない子どもたちが不安の中で待つ寺に、ある日、一人の伯母が現れる。 「桐生美津子を引き取りに来ました」 その時、立ち上がったのは、本当の美津子ではなかった。 たった一枚の名札が、二人の人生を入れ替えてしまう。 そして21年後、古い疎開写真に残された違和感が、封じられていた真実を静かに呼び覚ます――。