"名札を戻せなかった夏" 第11話
それとも、その名で泣き、働き、し、族を作ったそのものなのか。
美津子も澄も、最まで確な答えをすことはできなかった。
ただ1つだけ、2が同じように認められることがあった。
昭19。
10歳だった2は、親元をれて列に乗った。
翌、帰るを失った。
そして、それぞれ別の名を胸につけたまま、戦争の終わった本をき始めた。
もし名札を交換していなければ、全く違うになっていた。
もし伯母が寺へ来るに、名札を元へ戻していれば。
もし教師が名を呼んだ、美津子が先にちがっていれば。
もし澄が「私は違います」と言っていれば。
もしあの夜、美津子が「、本当のことを言おう」と答えていれば。
どこか1つ違っていたら、2の21はしなかった。
けれどには、から選び直せない瞬がある。
そのにはの分からなかったさなが、何も先まで自分を連れていくことがある。
2枚の名札も、そうだった。
ほんの冗談のつもりで交換した。
翌に戻すつもりだった。
それなのに、その名札は戦争が終わっても2の胸かられなかった。
布そのものは、やがて古くなり、なくなったかもしれない。
けれどそこにかれていた名は残った。
21。
ようやく再会した2は、名を元に戻すことを選ばなかった。
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戻せなかったとも言える。
すでに2のろには、それぞれ別のが続いていたからだ。
それでも別れ際、澄が「美津ちゃん」と呼んだだけは、本当の名が戻ってきた。
誰かのものを奪うための名ではない。
戸籍を直すための名でもない。
10歳の頃の友達が、自分を覚えている証として呼んだ名だった。
美津子は、その言を聞いて泣いた。
失ったとっていたものが、完全に消えたわけではなかったからだ。
「私たち、違えたのかな」
澄の問いに、美津子は「分からない」と答えた。
おそらく、それ以に正しい答えはなかった。
戦争という代は、子どもたちにさえ、にも答えられない選択を迫った。
そして2は、自分たちなりの方法でその先をきた。
正しかったからき延びたのではない。
違っていなかったから幸せになれたのでもない。
ただ、きるしかなかった。
昭19の。
疎列ので交換された2枚の名札。
そのさな布切れは、2のを入れ替えた。
そして21、古い写真によって秘密がらかになったにも、2は元へ戻ることを選ばなかった。
なぜなら、その頃にはもう、借りたはずの名のに、自分自のがあまりにもく根をろしていたからだった。
桐美津子としてまれた女性。
森澄としてまれた女性。
2は互いの名で母親になり、庭を持ち、きてきた。
それでも2だけはっていた。
自分が誰だったのか。
相が誰だったのか。
そして、あのに何を選んだのか。
名を取り戻すことはしなかった。
けれど本当の名を忘れることもなかった。
それが、2が21の歳を経てたどり着いた、唯の答えだった。
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