"2本のさつま芋" 第2話
「学で悪いことだって習った」
「分かってる」
「じゃあ、なんで買うんだよ」
澄子は正夫ではなく、に置かれた米袋を見た。
「あなたたちがお腹を空かせてるから」
正夫は黙った。
それは理由として分からないわけではなかった。
しかし、だからこそ納得できなかった。
悪いことをするには、それぞれ理由があるはずだ。
理由があるなら決まりを破っていいということになれば、法律は何のためにあるのか。
「みんながそうしたら、本はまた駄目になる」
正夫は言った。
しい言い方になった。
母ならるとった。
だが澄子は鳴らなかった。
「そうかもしれないね」
それだけ言って、米袋を台所の隅へ運んだ。
その態度が、正夫にはかえって理解できなかった。
悪いなら悪いと認めればいい。
正しいなら正しいと説すればいい。
なのに母は、どちらも言わなかった。
翌。
正夫は学帰りに交番へ入った。
自分は違っていない。
そのは、本気でそう信じていた。
翌の夕方。
正夫がに帰ってしばらくすると、玄関のからい声が聞こえた。
扉をけると、警察官がっていた。
、正夫が入った交番とは別の警察官だった。
澄子もすでに仕事から戻っていた。
制姿を見た瞬、母の表が変わった。
「本澄子さんですか」
「はい」
警察官はのへ入り、いくつか質問を始めた。
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正夫は部の隅で、その様子を見ていた。
昨、自分が伝えたことが本当にき始めたのだと、そのになって初めて実した。
澄子が農から持ち帰った米袋が調べられた。
どこでに入れたのか。
誰から買ったのか。
どれだけ持ち帰ったのか。
澄子はつつ答えていた。
声は落ち着いていた。
だが、は膝のでく握られていた。
幼い弟には、何が起きているのか分からない。
母のくに座り、袖をつかんでさなかった。
妹は玄関のくで泣き始めた。
「母ちゃん、どこくの?」
澄子は妹へ振り返ったが、すぐに答えられなかった。
警察官が何か説した。
事を聞く必があるということだった。
正夫は、その言葉を聞きながら、胸ので自分に言い聞かせた。
母が悪いことをしたのだから仕方がない。
決まりを破ったのだから、調べられるのは当然だ。
そう考えなければ、目のの景を見ていられなかった。
澄子はちがった。
弟がさらにく袖を引いた。
「母ちゃん、かないで」
澄子はしゃがみ込み、弟のを撫でた。
「すぐ帰ってくるから」
その声を聞いた妹が、ますます泣いた。
正夫はけなかった。
自分が警察へらせた。
そのことを母はまだらないはずだとっていた。
だから、顔をわせるのが怖かった。
澄子は靴を履いた。
玄関をる直、ゆっくり振り返った。
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線が正夫へ向いた。
正夫の臓がく鳴った。
母は何か言うのではないかとった。
どうして警察へ言ったの。
あんたのせいだ。
そんな言葉を覚悟した。
だが、澄子は鳴らなかった。
責めもしなかった。
ただ言だけ言った。
「弟たちを頼むね」
その言葉を残して、をた。
扉が閉まったも、正夫はしばらくそこからけなかった。
妹の泣き声だけが続いていた。
弟は母がていった玄関をじっと見つめていた。
正夫は、自分がしっかりしなければならないとった。
母から「弟たちを頼む」と言われた。
それなら自分が事を用しなければならない。
台所へった。
戸棚をけた。
何かあるとった。
しは米が残っているかもしれない。
麦でもいい。
しかし、何もなかった。
何度探しても同じだった。
残っていたのは、さつま芋が2本だけだった。
正夫はそれを見つめた。
母が農から持ち帰ってきたものだった。
昨までなら、それを見れば「でに入れたものだ」とっただろう。
だが今は違った。
それが今夜、族のへ入る唯のべ物だった。
正夫は芋を用した。
妹と弟たちに分ける。
きさがしでも平等になるように見ながら切った。
自分の分は残らなかった。
いや、残さなかった。
5歳の弟が正夫の元を見た。
「兄ちゃんのは?」
正夫は反射に答えた。
「俺は腹減ってない」
言った瞬、自分のからた言葉に驚いた。
その言葉は、自分のものではなかった。
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