"「無職の父」と呼ばれた6年間" 第1話
「婚したい。悠は私が連れていく」
妻の美咲がそう告げたのは、10歳の息子が自で眠っただった。39歳の佐伯公平は洗い終えた注射器具を乾燥ケースへ入れながら、妻の言葉を聞いていた。
悠は4歳のに1型糖尿病を発症した。血糖値の確認、事量にわせたインスリン量の計算、血糖の対応。発症直は夜にも何度も測定が必で、公平は物流会社を退職し、息子の活を支える側へ回った。
当、美咲は広告会社で働き始めたばかりだった。夫婦で話しい、公平がに仕事をれると決めたはずだったが、6が過ぎた今、その選択は妻の言葉ので別のに変わっていた。
「無職のあなたに、病気のある子どもを育てられるとう?」
公平はを疑った。通院へ付き添い、学の担任と養護教諭へ対応を説し、毎の事を計算してきたのは自分だった。美咲は仕事が忙しく、平の帰宅は夜10を過ぎることがい。
「育ててきたのは、僕だよ」
「私の収入で、でしょう」
美咲はすでに弁護士へ相談し、会社のくに2LDKの部も見つけたという。両親も協力すると話しており、悠には転の能性まで伝えていた。
公平は、なぜ先に息子へ話したのかと尋ねた。美咲は「子どもにも準備が必だから」と答えた。準備という言葉を使いながら、公平だけが何もらされていなかった。
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翌朝、悠は卓でほとんど喋らなかった。センサーの数値は定していたが、普段ならべる卵焼きを残した。公平が体調を尋ねると、「お母さんと引っ越したら、お父さんはになるの」とさく聞いた。
「まだ何も決まっていないよ」
「でも、お母さんは決まったって言った」
公平は妻へのりを息子へ向けないよう、返事をみ込んだ。婚を拒めば族が戻るわけではない。必なのは、悠の活が同士の争いで崩れないようにすることだった。
そのの午、公平は庭問題に詳しい弁護士へ相談予約を入れた。話で「無職ですが」と言いかけ、訂正した。
「今は事と、持病のある息子の養育を担当しています」
初回相談へ持参する資料を尋ねると、活状況、収入、居、学や医療との関わりが分かる記録を理するよう言われた。親権が冊の帳だけで決まることはなく、子どもの利益を複数の事から考えるという。
公平は押し入れから、6保してきた学の連絡帳をした。最初のページには、発症に幼稚園へ戻ったの文字があった。
《昼の測定は父が来園してう。母は勤務の都で連絡がつきにくいため、緊急は父へ》
公平は連絡帳だけでなく、通院予定表、薬局の細、学とのメール、事記録を順に並べた。
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息子をしている証を作るようで抵抗があったが、記憶だけでは6分の活を説できない。
美咲は公平の作業を見て、「私を悪い母親にするつもり?」と警戒した。公平は、妻のを否定する資料ではなく、自分が何を担ってきたか示す記録だと答えた。
「稼いできたのは私よ。あなたたちの活を支えたのも私」
それは事実だった。公平は妻の収入を軽く扱うつもりはない。だが、収入を得る役割と、毎の養育を担う役割のどちらかだけを親の資格にはできなかった。
数、美咲の母・佳代子が訪ねてきた。娘が仕事と育児を両できるよう自分たちが伝う、公平も再就職してをて直すべきだと話した。悪のある言い方ではなかったが、孫の現の活についてはほとんどらなかった。
公平が血糖の対応を尋ねると、佳代子は「甘い物をべさせればいいのでしょう」と答えた。どの程度の糖分を取らせ、再測定をいつい、改善しなければどうするかまでは答えられない。
「これから覚えます」と佳代子は言った。
「覚えてもらうことは必です。でも、今できないことを、もうできる提で転や引っ越しを決めないでください」
美咲は、専なことを独占して自分たちを排除していると公平を責めた。公平は6、妻にも祖父母にも講習を受けてほしいと頼んだことをいした。
美咲は仕事、佳代子は父親の通院を理由に参加しなかった。
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