"「無職の父」と呼ばれた6年間" 第2話
その週末、美咲は居を悠へ見せると言い、息子を連れした。公平は反対せず、測定器具と補を鞄へ入れ、緊急連絡の順をいたカードを渡した。
夕方5、美咲から話が入った。悠がショッピングモールで震え始め、センサーの警告が鳴っているという。公平は数値と識状態を確認し、鞄のブドウ糖を取らせ、15分に再測定するよう伝えた。
悠は回復したが、美咲は予定よりく帰宅した。息子を寝かせたあと、「あなたが難しく考えさせるから私まで怖くなる」と泣いた。
公平は責めなかった。怖さは、病気を軽く扱わないために必なでもある。問題は、怖いから任せ続け、婚のだけ自分ならできると言い切ることだった。
翌、美咲の机に居の賃貸借契約が置かれていた。契約始は2週。入居者欄には美咲と悠の名があり、公平の同を得るから息子との活が確定事項としてかれていた。
公平は居の契約を写真に残し、原本には触れなかった。妻の持ち物を勝に調べたと争いになることを避けるため、美咲へ見つけたことを伝え、いつ契約したのか尋ねた。
美咲は1かだと認めた。婚を切りすから部を探し、会社にはひとり親になる能性を相談していた。公平と話せば反対され、何もまないとったという。
広告
「僕が反対するかどうかも、話していないのに決めたんだね」
「6、何を決めても悠の病気を理由に止めたでしょう」
公平にはい当たることがあった。美咲が研修へ参加したいと言った、緊急に戻れないと反対した。族旅のき先も病院との距で決め、では息子の事を先に調べた。全のためだったが、美咲には夫がすべてを管理しているように見えていた。
方、美咲も代わりの対応策を探すに、公平へ任せて仕事を選んだ。夫婦は互いの満を話しわず、「父は育児、母は収入」という役割へ閉じこもった。その結果、公平は自分だけが息子を理解しているとい、美咲は自分だけが族を養っているとうようになった。
公平は契約を婚の裏切りの証拠としてではなく、別居始の計画がどこまでんでいたかを示す資料として弁護士へ伝えた。弁護士からは、相を責める材料を増やすより、子どもの居所を急に変えない暫定なを求めるよう助言された。
夫婦は週、悠ので平静を装った。しかし子どもは変化をじていた。美咲がしい具のサイトを見れば画面を覗き、公平が類を理すれば「病院の?」と尋ねた。説しないことが、子どもを守ることにはなっていなかった。
2は悠へ、婚について同士で話しっていること、すぐ転するとは決まっていないこと、どちらの親とも会えなくなるわけではないことを緒に伝えた。
広告
美咲は満そうだったが、息子ので「私が連れていく」とは言わなかった。
悠は「ぼくが決めるの?」と尋ねた。公平は、希望は聞くが、で決める責任を負わせないと答えた。その言葉をにしながら、自分も息子の「父とみたい」という答えだけを求めていたことに気づいた。
公平は学の担任へ、婚協議であることだけを伝えた。どちらの親が正しいか判断してほしいのではなく、転や緊急連絡先の変更を方の説だけでめないよう頼んだ。
担任は困った顔をしたあと、すでに美咲から転予定の連絡を受けているとかした。しい学へ渡す健康管理資料も求められ、養護教諭が準備を始めていたという。
公平はそので続きを止めろとは言わなかった。親同士の協議が終わっていない事実を記録し、必な連絡は両親へうよう求めた。
面談の終わり、担任が枚の作文用をした。週の学級活で《今、いちばん配なこと》をいた際、悠が提したものだった。
《ぼくはお母さんとみたいです。お父さんは仕事をしていないので、ぼくのせいでることがあります》
公平は息が止まった。自分が鳴った記憶を探した。血糖で識がぼんやりした息子へい声をしたこと、注射を嫌がるを押さえたことはある。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
病院へ行かない黒い車
「健一が事故に遭ったの。危篤よ。すぐ病院へ向かいなさい!」 義母からの電話を受けた由美子は、夫の安否を案じ、家の前に用意されていた黒いハイヤーへ飛び乗った。 しかし車は、病院とはまったく違う方向へ走り出す。やがて連れて行かれたのは、電波も届かない山奥の古びた宿だった。 問い詰める由美子に、運転手は申し訳なさそうに告げる。 「すみません……指示どおりです」 夫の事故、義母の悲鳴、そして病院へ向かうはずだった車。すべては、由美子を家から遠ざけるために仕組まれた罠だった。 その裏で、夫と義母は何を終わらせようとしていたのか。 25年間、黙って耐えてきた妻が、たった一言から家族の嘘を暴き始める――。因果応報|夫婦|真相1.7万字5 166 -
完結第11話
消えた指輪と義父の手帳
結婚2年目の美咲は、義母・富美子から突然、亡き義父が贈った大切な指輪を盗んだと疑われる。 防犯カメラには、夜中に美咲が仏間へ入る姿が映っていた。だが美咲は、ただ窓を閉めただけ。身に覚えのない疑いをかけられたうえ、夫の亮介までもが「バッグを見せれば終わる」と言ったことで、美咲は家を出る決意をする。 しかしその後、義姉から告げられたのは、7年前にも同じような“盗難騒ぎ”があったという事実だった。 さらに、亡き義父の手帳には、富美子が隠し続けてきた家族の秘密が残されていた。 消えた指輪は、誰が持ち出したのか。 そして義母はなぜ、真実を知りながら美咲を疑い続けたのか――。嫁姑|真実|親子関係1.6万字5 560 -
完結第10話
隠し子を知っていた55歳妻
結婚30年。55歳の律子は、61歳の夫・正典から突然「好きな人がいる」と告げられる。相手は34歳の女性。そして2人の間には、3歳の男の子までいた。しかし律子は驚かなかった。「れん君でしょう? 1年前から知っていました」。夫の顔から血の気が引く。離婚届を差し出されても、律子は微笑んで「離婚しません」と拒否した。夫への愛が残っていたからではない。この1年間、弁護士への相談、財産や年金の確認、仕事探しまで、誰にも知られず自分の人生を立て直す準備をしていたからだ。30年間、自分の人生を夫の都合で決められてきた妻は、最後の別れの日だけは自分で選ぶと決めていた――夫婦|不倫1.4万字5 2592 -
完結第11話
貧乏人と呼ばれた食卓
長男夫婦が3連休に帰省し、久しぶりに家族で食卓を囲むはずだった。 母の真紀子は、息子夫婦のために煮物や豚汁を用意し、昔と変わらない温かい夕飯を作ろうとしていた。ところが、台所で2人きりになった瞬間、長男嫁の美沙は笑いながら言い放つ。 「あんたの手作りとか無理だから、高級寿司出せよ、貧乏人」 その一言で、これまで見過ごしてきた違和感が一気に表へ出る。人を持ち物や育ちで見下す美沙の本性。そして、真紀子の過去まで侮辱された時、普段は温厚な夫・隆志が静かに立ち上がった。 「今日限りで絶縁だ」 さらに隆志が呼び出した“ある男”の登場によって、美沙の家庭に隠されていた価値観と金の問題まで明らかになっていく。 古い皿、手作りの料理、そして家族として本当に大切なものとは何か。 一度壊れた食卓から、それぞれの人生が大きく動き出す――。絶縁|親子関係1.7万字5 1408 -
完結第13話
古い工場を渡された嫁
食品会社を一代で守ってきた山代会長は、ある夜、庭で長男夫婦の会話を偶然聞いてしまう。 「お母様、これから先どれだけ生きられるかしら」 信じていた嫁が、自分の命も会社も、すでに財産として数えている――。その一言をきっかけに、会長はある決断をする。 自分は重い病にかかり、会社も危機にある。そう家族に告げ、2人の嫁に後継者を決めるための試練を与えたのだ。 華やかな長男の嫁・彩佳には会社を。 不器用で人の良すぎる次男の嫁・ユナには、地方にある廃業寸前の古い工場を。 誰もが、勝者と敗者は決まったと思っていた。 しかし3か月後、会社を手に入れた嫁と、古い工場へ送られた嫁の運命は、誰も予想しなかった形で逆転していく――。兄弟姉妹|嫁姑|相続|親子関係2.0万字5 501 -
完結第14話
親孝行214点の姉が降りた日
父の三回忌を終えた日、長女の恵子は突然、家族の前に一枚の表を広げた。 「今日から、お母さんへの親孝行は全部点数にします」 通院の付き添い、買い物、掃除、泊まりの見守り。母を支えた行動には点数がつき、断れば減点される。最初は姉の暴走にしか見えなかったその制度は、やがて家族の不満と過去の傷を次々に浮かび上がらせていく。 さらに母の通帳から消えた18万円、父が残した《お願い》のノート、そして破られていた最後のページ。 半年後、母が本当に倒れた夜、誰よりも高い点数を取っていた恵子は静かに告げる。 「私、もうお母さんとは同居しない」 親孝行とは何なのか。 誰かを支えることに、点数をつけた家族が最後に知った“数字にできないもの”とは――。兄弟姉妹|親不孝|親子関係2.0万字5 0 -
完結第10話
子どもを救って、僕は処分された
交差点で飛び出しかけた子どもを避けるため、市営バス運転士の北川蓮はとっさに急ブレーキを踏んだ。 子どもとの接触は避けられた。しかし車内では、降車しようとして立ち上がった高齢女性が転倒し、右手首を骨折してしまう。 翌朝、会社が蓮に差し出したのは「前方確認不足による危険運転」を認める謝罪文だった。 信号は見落としていない。子どもは確かに車道へ出かけていた。けれど、乗客を傷つけたこともまた事実だった。 会社は早く責任を運転士ひとりに押しつけようとし、世間は記事の見出しだけで蓮を責める。そんな中、蓮のもとに差出人不明の一通の手紙が届く。 そこには、事故の日に誰も語らなかった“もう一つの真実”が書かれていた。 守った命と、傷つけてしまった人生。 正しさだけでは割り切れない事故の先で、若い運転士が本当の責任と向き合っていく物語。因果応報|人生逆転1.5万字5 0 -
完結第10話
米寿の席で外された嫁
米寿祝いの席で、義母は親族の前で突然言った。 「秋子さんには、明日から店へ来てもらわなくて結構です」 33年間、朝早くから和菓子店《松月堂》を支えてきた秋子。餡を練り、注文を管理し、繁忙期には夜まで働いてきた日々は、義母の一言で“家族の手伝い”として片づけられた。 しかも店から外された秋子に、今度は義母の通院や世話を任せるつもりだった。 何も言わず席を立ったその夜、秋子は古い段ボール箱の中から、亡き義父が残した一通の封筒を見つける。 そこに入っていたのは、秋子を守るための遺言ではなかった。 店の帳簿に隠されていた不自然な金の流れ、説明されていない借金、そして義父が最後まで言えなかった家族の秘密。 「家族だから」という言葉の下で、誰が何を背負わされていたのか。 33年間奪われてきた時間と仕事の価値を、秋子が静かに取り戻していく物語。人生逆転|嫁姑|親子関係1.5万字5 1220 -
完結第11話
荷造りの日に消えた夫の行き先
7年間、脳梗塞で倒れた夫・修一を支え続けてきた香織。 仕事を辞め、食事も薬も通院もすべて管理し、夫が再び歩けるようになるまで寄り添ってきた。ところが回復した修一が最初に告げたのは、感謝ではなく「離婚してほしい」という言葉だった。 理由は、妹のいる新潟で暮らしたいから。 香織は、自分の7年間がすべて否定されたように感じる。だが荷物を整理する中で、夫が密かにつけていた一冊のノートを見つける。そこには、香織への感謝と罪悪感、そして誰にも言えなかった本音が記されていた。 さらに引っ越し当日、迎えに来たはずの義妹が突然言い放つ。 「兄は引き取りません」 夫は本当に妻から逃げたかったのか。義妹はなぜ直前で拒んだのか。そして香織が7年間守り続けていたものは、夫だったのか、それとも自分自身の恐怖だったのか。 介護、夫婦、家族の責任、そして人生の後半をどう生きるかを描く、静かな再出発の物語。夫婦|介護1.6万字5 739