"姉の代わりに嫁いだ私" 第4話
志津はわず眉をひそめた。
「姉さんがそんなことを?」
「ええ」
「余計なことを」
そう言いながら、志津の元にはしだけ笑みが浮かんだ。
宗郎も笑った。
それが、2が夫婦になってから初めて同じことで笑った夜だった。
志津はその、宗郎を「姉の婚約者」ではなく、初めて1のとして見た気がした。
そして宗郎もまた、自分を「千代の妹」だけではなく、志津として見ようとしている。
そうえた。
しかし2が互いを理解し始めた頃、松には別の問題が迫っていた。
宗郎がの帳簿を本格に調べ始めたのだ。
宗郎が松へ婿入りして数か。
父はしずつ帳の仕事を宗郎へ任せるようになっていた。
最初は仕入れ先とのやり取りや支払いの確認程度だったが、宗郎は古い帳簿まで遡り、のの流れを調べ始めた。
数の夜。
を閉めた、宗郎は帳に残っていた。
志津が奥から茶を運ぶと、机のには何冊もの帳簿が広げられていた。
「まだ仕事をしているんですか」
「し気になることがあって」
宗郎はを置いた。
顔には疲れが見えていた。
「何かあったんですか」
「松の経営は、聞いていたより悪いです」
志津は茶を置くを止めた。
父からは、商いが厳しいとは聞いていた。
そのために榊原との結びつきをめる必がある、とも言われた。
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だが宗郎が示した数字は、志津が像していた以だった。
借。
売れ残った反物。
回収できていない売掛。
利益のほとんどていない昔ながらの取引。
「これだけ……?」
志津は帳簿を見つめた。
「このまま同じ商売を続けたら、数も持たないといます」
翌、宗郎は父へ話した。
父は嫌そうに帳簿を閉じた。
「げさに騒ぐな」
「げさではありません」
「松は代続いている」
「代続いたことと、これから続けられるかどうかは別です」
父の顔が変わった。
「婿に来て何かだ。分かったようなことを言うな」
宗郎は引かなかった。
「昔からのやり方を全部捨てろとは言っていません。ただ、数字を見てください」
「数字だけで商売ができるか」
父は声を荒らげた。
「客との付きいがある。仕入れ先との義理もある。何も続いてきた関係や」
「その付きいのために赤字をし続けたら、そのものがなくなります」
志津は廊から、そのやり取りを聞いていた。
父に正面から反論する宗郎を見るのは初めてだった。
の縁談には逆らえなかったが、商売のことになると歩も引かない。
その違いが、志津にはし議だった。
代は変わり始めていた。
京都でも百貨がを増し、々の買い物の仕方はしずつ変化していた。
価な呉を馴染みのから買う客だけではない。
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しいものを見て選びたい若い客も増えていた。
装もしずつ広がり始めていた。
松の先だけが、何もと同じような顔をしていた。
ある晩、宗郎が志津へ言った。
「あなたはの商品を見て、どういますか」
志津は驚いた。
「私に聞くんですか」
「あなたくらいのの女性が、何を欲しいのかりたいんです」
志津は反物を見回した。
幼い頃から見慣れた品々だった。
「綺麗です」
「それだけですか」
「……し、たい気がします」
宗郎が顔をげた。
志津は慌てて続けた。
「品が悪いってじゃありません。でも、若いが普段着たいとうものはないです」
「私もそういます」
「それなら、もっとるいを増やしたらどうですか」
「番が反対するでしょうね」
志津は笑った。
「父も反対します」
「でしょうね」
その会話がきっかけだった。
志津はしずつ、帳の仕事を見るようになった。
最初は宗郎の横で数字を読むだけだった。
やがて客の注文と仕入れを照らしわせ、どの商品が売れているのかを緒に確認するようになった。
ある、それを見た古参の番が眉をひそめた。
「若奥さん」
「はい」
「帳のことは、男衆に任せておけばよろしいんです」
志津は顔をげた。
「どうしてですか」
「どうしてと言われましても……若奥さんは奥のことをしてくだされば」
以の志津なら黙ったかもしれない。
だが、そのは違った。
「こののために、私は結婚したんでしょう」
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