"姉の代わりに嫁いだ私" 第5話
番が言葉に詰まった。
志津は帳簿を閉じずに続けた。
「だったら、こののことをる権利くらいあります」
横にいた宗郎が、さく笑った。
志津はすぐに睨んだ。
「何がおかしいんです」
「いや」
宗郎は首を振った。
「ようやく、あなた自がてきたとって」
志津は瞬言葉を失った。
それから再び帳簿へ線を戻した。
頬がしくなったのを、宗郎に気づかれたくなかった。
松をて直すため、宗郎はいくつかの提案をした。
まず、昔からの付きいという理由だけで続けていた仕入れを見直した。
品質は悪くないが、何も売れず倉に積まれている反物がすぎた。
「これ以、売れないものを買い続ける余裕はありません」
宗郎が言うと、父は激しく反発した。
「先代からの付きいやぞ」
「付きいを切るとは言っていません。量を減らすんです」
「そんなことをしたら信用をなくす」
「がなくなったら、信用も何も残りません」
父と宗郎の言い争いは何度も続いた。
志津はそのに入りながら、の客を観察するようになった。
若い女性が母親と緒に来た、どんな反物に目を止めるのか。
何を見て、何を買わずに帰るのか。
ある、20歳ほどの女性がるいの反物をに取った。
しかし母親が言った。
「もうし落ち着いたものにしなさい」
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女性は残そうに反物を戻した。
その姿を見た志津は、翌宗郎へ話した。
「若い向けの品を、しまとめて見せたらどうでしょう」
「まとめて?」
「今は全部同じように並んでいます。若いが入りやすいところを作ったら」
宗郎は考えた。
「やってみましょう」
番たちは難しい顔をした。
父も「の品格が落ちる」と反対した。
それでも2は、先の角だけを変えた。
若い女性が好みそうなるい柄を集め、これまでより見やすく並べた。
すぐに成功したわけではない。
だが以より、若い客がを止めるようになった。
「これ、綺麗やね」
「こんなも置いてはったんや」
そんな声が聞こえるたび、志津は嬉しくなった。
さらに宗郎は、方の客へ見本を送る方法を考えた。
まで来られない得客へ、さな見本を送り、注文を受ける。
昔からの客との関係を切るのではなく、付きい方を変える。
志津もをくのを伝った。
「こちらのは、実物の方がし柔らかく見えます」
「先のお召し物にうといます」
客の顔をい浮かべながら、通ずつ言葉を変えた。
次第に返事が来るようになった。
「若奥さんの選んだものを見せてほしい」
そんな注文まで届くようになった。
志津は初めて、自分が松の役にっているとじた。
それまでは、のために嫁がされたとっていた。
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自分は借をつなぐための具だった。
だが今は違った。
自分の考えがの売につながる。
客がぶ。
その実は、志津が今までわったことのないものだった。
しかし変化を嫌う者もかった。
番の1は、志津が仕入れについて見を言うたび満そうな顔をした。
「昔は女主が帳へるようなことはありませんでした」
ある、とうとうそう言われた。
志津はを止めた。
「昔は、今ほども苦しくなかったんでしょう」
「それとこれとは別です」
「別じゃありません」
番の顔が険しくなった。
そこへ宗郎が来た。
志津は助けを求めるつもりはなかった。
宗郎もを挟まなかった。
志津は自分で続けた。
「私はのためにこのへ嫁ぐよう言われました」
「若奥さん……」
「それなのに、のことにはをすなと言うんですか」
番は黙った。
「都のいいだけ松の嫁で、都が悪くなれば女は奥へ引っ込めというのは、おかしくありませんか」
宗郎がほんのし元を緩めた。
志津はそれを見逃さなかった。
「また笑ってるでしょう」
番がった、志津が言うと、宗郎は否定しなかった。
「しだけ」
「何がそんなにおかしいんです」
「最初に会ったとは、ずいぶん違うとって」
「最初?」
「座敷で、私を睨んでいたです」
志津は顔をしかめた。
「あれはあなたが悪いんです」
「分かっています」
「断れないなんて言うから」
「実際、断れませんでした」
宗郎はそう言った、し表を変えた。
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