"姉の代わりに嫁いだ私" 第6話
「でも、あのの私は、断れないことと、自分で何も決めないことを同じにしていたのかもしれません」
志津は黙った。
その言葉は、自分にも当てはまる気がした。
結婚そのものは選べなかった。
しかし結婚してから、どうきるかまで全部決められているわけではない。
そう考えるようになったのは、まだ最のことだった。
その変化を、くなった姉はどう見るだろう。
志津は々、そんなことを考えるようになった。
を変えようとすればするほど、父との衝突は増えた。
父にとって松は、単なる商売ではなかった。
祖父から受け継ぎ、自分が守り、次の代へ渡すものだった。
だからこそ、昔からの方法を変えることは、先代までを否定することのようにじていた。
あるの夕方、宗郎が古い取引先からの仕入れを半分に減らしたことをり、父が帳へ乗り込んできた。
「誰の許で決めた!」
の者たちが斉にを止めた。
宗郎はちがった。
「私が決めました」
「おは松を壊すつもりか!」
父の声がに響いた。
志津は奥からてきた。
「お父さん」
「志津は黙っていろ」
いつもの言葉だった。
子供の頃から、父との話をしているは必ずそう言われた。
女には関係ない。
子供には分からない。
黙っていろ。
だが志津は戻らなかった。
「黙りません」
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父が振り返った。
「何だと?」
「宗郎さんだけが決めたんじゃありません。私も緒に帳簿を見ました」
「おに何が分かる」
胸の奥に、昔なら押し込めていたりが湧いた。
「分かろうとしているんです」
志津は父をまっすぐ見た。
「分からないから帳簿を見て、客の話を聞いて、何が売れているか調べているんです」
「女が商売にをすな」
その瞬、志津ので何かが切れた。
「だったら、どうして私をのために嫁がせたんですか」
父が黙った。
の者たちも息を呑んだ。
志津は続けた。
「姉さんがくなって12で、私に宗郎さんと結婚しろと言いましたよね」
「今その話をするな」
「します」
「志津!」
「松を守るためだと言いました。を残すためだって」
父の顔が赤くなった。
「だったら私は、こののことを考えます」
志津は帳簿をに取った。
「壊そうとしているんじゃありません。もう壊れそうだから変えようとしてるんです」
誰も何も言わなかった。
しばらくして父は、宗郎を睨んだ。
「おが志津に余計なことを教えたのか」
宗郎は首を横に振った。
「志津さんが自分で考えたことです」
父はさらに険しい顔になった。
だが、そのはそれ以何も言わず、奥へ戻っていった。
志津は力が抜けたように子へ座った。
が震えていた。
宗郎がさな声で言った。
「丈夫ですか」
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「丈夫じゃありません」
志津は答えた。
「怖かったです」
「そうでしょうね」
「でも、言わなかったらもっと腹がったといます」
宗郎は頷いた。
そのを境に、父が急に考えを変えたわけではなかった。
相変わらず、しい仕入れ方法には満を言った。
志津が帳へることにも、いい顔はしなかった。
それでも以のように「女は黙っていろ」と言う回数は減った。
の売がわずかながら持ち直し始めたこともきかった。
しく扱った商品が売れた。
方から注文が入った。
古い庫を理したことで、倉のにも余裕ができた。
数字はしずつ変わっていった。
ある晩、父は夕の席で、何気ない調で言った。
「このの若い客向けの反物、また仕入れるのか」
志津は驚いて顔をげた。
「売れていますから、そのつもりです」
「そうか」
父はそれだけ言って噌汁をんだ。
宗郎は何も言わなかった。
だが事の、廊で志津に声で言った。
「今のは、認めたということじゃないですか」
「まさか」
「しだけ」
「お父さんが?」
志津はわず笑った。
その夜、久しぶりに姉の部へ入った。
千代がくなって以来、必な以はなるべくづかなかった所だった。
鏡台。
本棚。
箪笥。
部にはもう姉の匂いはほとんど残っていない。
志津は窓をけ、たい空気を入れた。
がしずつ変わっていることを、姉に話したくなった。
姉ならどうしただろう。
宗郎が言ったように、本当はもっと学びたかった姉なら。
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