"姉の代わりに嫁いだ私" 第7話
帳へ座っただろうか。
父に言い返しただろうか。
考えても答えはなかった。
それでも志津は、しずつ姉を自分のからさなければならないとい始めていた。
自分は千代ではない。
それはもう、しいことではなかった。
そのが見つかったのは、千代がくなってからかなりが経った頃だった。
季節が変わり、志津は姉の類をしずつ理することにした。
いつまでも全てをそのままにしておくわけにはいかない。
そうえるようになるまで、いが必だった。
箪笥には千代が好んでいた着物が何枚も残っていた。
志津は1枚ずつ取りし、畳み直した。
いの紋。
母から譲られた帯。
女学を卒業したに父が買った着物。
その帯のに、何かいものが挟まっていた。
志津はを止めた。
封だった。
表には、見覚えのある字で宛名がかれていた。
「志津へ」
姉の字だった。
胸がきく鳴った。
志津はそのに座り込み、しばらく封をけられなかった。
なぜ姉は、自分宛てのを渡さず箪笥へ隠したのか。
いついたのか。
震える指で封をいた。
には数枚の便箋が入っていた。
最初にかれていたのは、志津がらなかったことだった。
千代は、自分の病気がいことを、族がっていたよりくからっていた。
医者と父の話を偶然聞いてしまったらしい。
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では「しく休めばよくなる」と言われていた。
志津もそう信じていた。
千代は何も言わなかった。
父が隠していることも、医者が言葉を濁していることも、全て分かっていた。
志津は便箋を持ったまま、何度も息をえた。
読みめる。
やがて、ある文で目が止まった。
「もし私が祝言まできられなかったら、きっと父さんはあなたに同じ話をするといます」
志津の指が震えた。
姉はっていた。
自分がねば、松には跡取りがいなくなる。
榊原との縁談が宙に浮く。
そして父がどうするかも分かっていた。
妹に同じ男を娶らせる。
姉は、それを予していた。
志津は続きを読んだ。
「嫌なら断りなさい」
涙が滴、便箋へ落ちた。
志津は慌てて指で拭った。
姉は、自分に断っていいと言っていた。
自分があの、父に「嫌です」と言ったことを、姉が聞いてくれていたような気がした。
しかし、さらにへ目を移した、志津は息を止めた。
もう1あった。
「ただ、松だけは潰さないでほしい」
志津は何度も読み返した。
嫌なら断りなさい。
でもは守ってほしい。
矛盾している。
結局、姉も自分へ松を背負わせようとしているのではないか。
自由にしろと言いながら、かられられないよう紐を結んでいるのではないか。
涙が次々と溢れた。
「ずるい……」
誰もいない部で、志津は呟いた。
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「姉さん、ずるいわ」
その夜、宗郎がから戻ると、志津はを差しした。
宗郎は黙って読んだ。
読み終わっても、すぐには何も言わなかった。
「姉さんはずるいです」
志津は言った。
「私には嫌なら断れって言うくせに、は守れって」
宗郎はを机に置いた。
「そうですね」
いがけない返事だった。
志津は顔をげた。
「否定しないんですか」
「矛盾していますから」
「でしょう」
志津の声が震えた。
「結局、私に背負わせてるんです。自分ができなかったことを」
「たぶん」
宗郎は静かに言った。
「千代さんにも、答えが分からなかったんだといます」
志津は黙った。
「を守りたい。でも妹には自分のようになってほしくない。その2つを、どちらも捨てられなかったんでしょう」
「それじゃ私はどうしたらよかったんです」
「分かりません」
宗郎は答えた。
「千代さんも分からなかったんだといます」
志津は目を伏せた。
姉は、いつも正しいだとっていた。
迷わない。
泣かない。
族のことを番に考える。
志津が困ったには必ず答えをしてくれる。
そんな姉だった。
でも違った。
千代も迷っていた。
自分の命がくないとりながら、のことを配した。
妹のを配した。
2つの願いがぶつかりい、どちらを選べばいいのか分からないままをいた。
「姉さんも、怖かったんでしょうか」
志津が言った。
「きっと」
宗郎は頷いた。
その瞬、志津ので千代の姿が変わった。
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