"姉の代わりに嫁いだ私" 第8話
派な姉ではなかった。
のために全てを受け入れた娘でもなかった。
ただ、20代の若い女性だった。
もっと学びたかった。
きたかった。
自分のを選びたかった。
それでも族を捨てることもできなかった。
迷いながらんでいった。
志津はを胸へ抱いた。
初めて、姉をかわいそうだとった。
そして初めて、姉と自分が同じ所にったような気がした。
を見つけてから、志津は以より姉をいすようになった。
だが、そのいし方はし変わっていた。
以は、何をするにも「姉ならどうしただろう」と考えていた。
自分の失敗を姉と比べ、りないところを数えていた。
今は違った。
姉なら迷ったかもしれない。
姉なら怖がったかもしれない。
姉なら父に言い返せなかったかもしれない。
あるいは、言い返したかもしれない。
答えなど誰にも分からない。
くなった姉を、勝に完璧なへ作り変える必はなかった。
志津は志津としてへた。
宗郎とともに仕入れ先を見直し、若い女性向けの商品を増やした。
方の客への見本送付も続けた。
そのうち、志津自が仕入れ先へ向くことも増えた。
最初は、取引相が戸惑った。
「若奥さんご本が?」
「はい」
「若旦は?」
「におります」
「では、今は何のご用で」
「私が仕入れに来ました」
相の顔を見るたび、志津は内し緊張した。
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それでも引かなかった。
。
触り。
値段。
客の好み。
つずつ確認し、自分で選んだ。
へ戻ると、宗郎が品物を見た。
「これは売れそうですね」
「でしょう」
「こっちはし胆じゃないですか」
「だからいいんです」
「父が驚きますよ」
「もう驚き慣れてます」
2は顔を見わせて笑った。
結婚した当初、夕の席でもほとんど話さなかったことがい昔のようだった。
恋から始まった夫婦ではない。
今でも志津は、最初の縁談が正しかったとはっていなかった。
宗郎も同じだった。
ただ、選べなかった始まりので、2はしずつ互いを選び直していた。
ある、父の古いが松へ来た。
志津が帳で注文の確認をしていると、その男は驚いた顔をした。
「若奥さんが帳に?」
「はい」
「松も変わったなあ」
その調には、褒めるばかりではなかった。
「昔は女がこんなへることはなかった」
志津は笑った。
「昔とは商売も変わりましたから」
「しかし女はを守る方が事やろ」
志津はし考えたで言った。
「私はを守っていますよ」
男が目を丸くした。
「帳で?」
「がなくなったら、も守れませんから」
くで聞いていた宗郎が咳払いをした。
笑いを堪えているのが分かった。
客が帰ると、志津は宗郎を睨んだ。
「また笑いましたね」
「すみません」
「何が面いんですか」
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「あなたがあまりにも迷いなく言うから」
志津は帳簿を閉じた。
「迷いますよ」
「そうは見えません」
「毎回、言ったで臓が鳴ってます」
宗郎はし驚いた顔をした。
「そうなんですか」
「当たりです」
志津はため息をついた。
「でも、怖いから黙るのはもう嫌なんです」
宗郎は静かに頷いた。
「私もです」
その言葉に、志津はしだけ笑った。
宗郎もまた、変わっていた。
父親やに逆らえず、決められた縁談を受け入れた男。
だが今は、松のために自分の見を言い、には榊原の父とも衝突するようになった。
阪へるという昔のは、もう追っていない。
それでも、自分で選ぶことを諦めたわけではなかった。
2とも、失ったものはある。
戻らないものもある。
けれど、これから先まで誰かに決めてもらう必はなかった。
そのことを、志津はようやく理解し始めていた。
数が過ぎた。
松の経営は、ようやく定を取り戻し始めていた。
以のようなきな利益がるわけではない。
それでも借はしずつ減り、売れ残りの庫も理され、資繰りに追われる々からは抜けしつつあった。
宗郎は正式にを継ぐことになった。
父は完全に商売から退いたわけではなかったが、以ほど細かなことにはをさなくなった。
ある、父が志津を呼んだ。
以、宗郎との縁談を告げられたのと同じ座敷だった。
志津はその所へ座ると、数の記憶が鮮によみがえった。
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