"姉の代わりに嫁いだ私" 第10話
実際、始まりは志津が選んだものではなかった。
父の決定。
松の借。
榊原との関係。
跡取りの必。
それらが志津を宗郎と結婚させた。
宗郎もまた、その縁談を選んでいなかった。
阪へたいを諦め、の命令を受け入れた。
そしてくなった千代も同じだった。
もっと学びたかった。
けれどのために縁談を受け入れようとしていた。
3とも、それぞれ違ういを抱えながら、同じ「」というきな枠のにいた。
志津がそれをった、宗郎への見方が変わった。
姉への見方も変わった。
そして、自分自への見方も変わった。
自分だけが幸なのではない。
だからしなければならない、というではなかった。
むしろ逆だった。
誰もが代やに縛られているのなら、そので何を変えられるかを考えなければならない。
志津は、へた。
帳へ座った。
仕入れにもをした。
若い客にう商品を増やした。
方の客へ見本を送った。
古い取引を見直した。
「女が過ぎる」
親戚にも、の者にも、何度も言われた。
そのたび志津は、笑って返すようになった。
「では、私をのために嫁がせたのは何だったんです」
誰も、うまく答えることができなかった。
父に言われた通り、のために結婚した。
だからこそのことを考える。
その理屈を、誰も否定できなかった。
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数をかけ、松はさいながらも商売をて直した。
宗郎は主となった。
志津は「主を支える妻」として奥へ消えることはなかった。
客は彼女を若奥さんと呼び続けたが、やがて「志津さんに選んでもらいたい」と言う者が増えた。
仕入れ先でも、最初は宗郎の代理だとわれていた。
しかし何度も通ううちに、志津自と商談をする相が増えた。
あるの。
先へ若い娘とその母親が入ってきた。
娘はるいの反物へ目を留めた。
母親はもっと落ち着いたを勧めている。
かつて志津が見た景とよく似ていた。
娘は迷いながら、何度も同じ反物へを伸ばしていた。
志津はづいた。
「そのがお好きですか」
娘はし恥ずかしそうに頷いた。
母親が言った。
「でもし派でしょう」
志津は反物を娘の肩へわせてみた。
「よくお似いですよ」
娘の顔がるくなった。
母親も、鏡に映った姿を見てし考えた。
「そうやねえ」
そのやり取りを見ながら、志津は議な気持ちになった。
自分も18歳だった。
何も選べないとっていた。
着るものより、もっときなそのものを。
あれから何も経った。
選べなかったことは今も消えない。
姉のも。
無理に決められた縁談も。
父に言われた言葉も。
どれもなかったことにはできない。
しかし、選べなかった始まりが、そののすべてまで決めるわけではなかった。
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夜、を閉めた。
志津は仏へ入った。
千代の位牌のに座る。
引きしから、古くなったを取りした。
何度も読んだため、折り目が柔らかくなっていた。
「嫌なら断りなさい」
そして、
「ただ、松だけは潰さないでほしい」
昔の志津は、その2つの言葉に苦しんだ。
自由になれと言いながら、を背負わせる姉をずるいとった。
今も、矛盾しただとう。
それでも、その矛盾こそ千代だったのだと分かるようになった。
族を捨てられない。
妹を縛りたくない。
自分も自由になりたい。
全部本当だった。
千代は最まで答えをせなかった。
だから志津に正しい答えを残したのではない。
迷ったままの言葉を残したのだ。
志津は位牌を見つめた。
「姉さん」
さく呼んだ。
「、まだありますよ」
返事はない。
「私、宗郎さんと緒にやっています」
から、を片づける音が聞こえた。
宗郎が帳を閉めているのだろう。
「でもね、姉さんの代わりじゃないから」
志津はし笑った。
「それだけは、もう誰にも言わせません」
を丁寧に畳み、元の封筒へ戻した。
廊へると、宗郎が待っていた。
「終わりましたか」
「はい」
「は朝から仕入れでしたね」
「ええ」
「私もきましょうか」
志津は首を横に振った。
「丈夫です。私1できます」
宗郎は笑った。
「そう言うといました」
「何ですか、その言い方」
2は並んで廊を歩いた。
数、同じにみながらほとんどをきかなかった2だった。
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