"親孝行214点の姉が降りた日" 第1話
「今から、お母さんへの親孝は全部点数にします」
45歳の姉・恵子がそう宣言した、39歳の瀬悠は、最初は姉なりの冗談だとっていた。父・秀夫の回忌を終えたばかりの曜で、実の居には母の正子を囲むように、3のきょうだいとその配偶者が集まっていた。線の匂いがまだ残る座敷の座卓に、恵子は法の残り物ではなく、A3サイズに印刷した枚の表を広げた。
表のには、《瀬・親孝ポイント 2026度》ときくかれていた。病院への付き添いは3点、実の掃除は2点、買い物代は1点、泊して母の様子を見るは5点、さらに1万円以の費用を負担すれば1点が加算される。方、頼まれた用事を断ればマイナス2点、約束したに30分以遅れたはマイナス1点という、まるで会社の事評価のような規則まで並んでいた。
「姉ちゃん、何なんだよ、これ」
悠が半分笑いながら尋ねても、恵子は笑わなかった。赤いボールペンをにしたまま、「見た通り。ではみんな“何かあったら言って”って言うけど、実際に誰が何をしたかは、が経てば分からなくなるでしょう」と真顔で答えた。その言い方には、すでに何度も同じ満をみ込んできた特のさがあった。
43歳の兄・隆弘が表を持ちげ、「親孝に点数なんかつけるのかよ」
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と呆れたように言った。すると恵子は、「やっただけが覚えていて、やらなかったは忘れるから」と返した。隆弘が「別に忘れたっていいだろ」と言うと、恵子は髪を入れず、「やってないは、そう言えるよね」と言い放った。
恵子は、夫の浩と婚し、17歳の娘・莉奈を連れて実へ戻ってきていた。表向きは婚の活が落ち着くまでのな同居という話だったが、すでにくが過ぎている。その、72歳になった正子の通院、買い物、役所の続き、庭の管理などを最もく引き受けていたのが恵子であることは、悠も認めざるを得なかった。
「それで、点数がいと何があるの?」
悠の妻・佳奈が静かに尋ねた。36歳の佳奈は介護施設で事務職をしており、族の介護をめぐって揉める庭も数く見ている。そのためか、姉弟がになり始めても、恵子が何を目にしているのかを先に確かめようとしていた。
恵子は待っていたように枚目のを取りした。「100点を超えたは、お母さんが入院したり介護が必になった、見を優先する。50点未満のには、とりあえず実の鍵を預けない」と説した。さらに、将来このをどうするか話しうことになったも、誰が母を支えてきたかを示す資料としてポイントを残すつもりだと言った。
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その言で、部の空気が変わった。
実は築38の古い戸建てだったが、を含めれば2,000万円の価値はあると言われていた。相続分をポイントだけで決められるわけではないことくらい全員分かっていたが、恵子が「参考にする」と言っただけでも、の匂いが混ざった瞬に話は別物になった。
「待ってくれよ。相続まで姉ちゃんが採点するのか?」
悠が聞くと、恵子は眉をげた。「決めるなんて言ってないでしょう。誰が実際にお母さんを支えたのか、から“俺もやった”“私もやった”って言いさないようにするだけ」と返した。その説と同に、恵子はすでに作ってあった現の順位表を座卓へ置いた。
恵子、186点。隆弘、42点。隆弘の妻・絵美、31点。悠、28点。佳奈、24点。
数字を見せられた瞬、悠は自分がとして28点と評価されたようなを覚えた。頼まれたにはで40分かけて実へ来たし、父の闘病も来る範囲では伝ってきたつもりだった。それなのに、姉が独自に作った表のでは、186対28という圧倒な差で「親孝な弟」に分類されている。
「こんなの姉ちゃんが勝につけただけだろ」
その反論も、恵子には定済みだったらしい。彼女は座卓の脇から数冊の学ノートをし、母の通院、買い物のレシート、病院の駐券、タクシー代、誰が何に実へ来たかまでいた記録を見せた。
単なるではなく、証拠まで準備されていることが、かえって悠の苛ちをくした。
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