"親孝行214点の姉が降りた日" 第4話
「母さん、18万円は何に使った?」
隆弘が改めて聞くと、正子は「細かいことは覚えてない」と答えた。
その返事が、かえって疑いをくした。
隆弘の妻・絵美が、「レシートはありますか」と穏やかに尋ねた。恵子が「全部取ってあるわけじゃない」と言うと、絵美はし困ったように、「ポイントのは駐券まで残してあるから、こういうこそ記録があるとって」と続けた。
悠も、それまで黙っていたが、のでは姉を疑い始めていた。親孝ポイントの管理、実の鍵、母の通帳、病院の判断、将来のの扱いまで、しずつすべての権限が恵子へ集まっているように見えたからである。
「姉ちゃん、回カード返した方がいいんじゃない?」
悠が言うと、恵子は傷ついたような目で弟を見た。
「悠まで私を疑うの?」
「疑ってるっていうより、で管理するからこういう話になるんだよ。誰が見ても分かるようにした方がいいって言ってるだけ」
「じゃあ誰がやるの?」
恵子はそのにいる全員を見回した。
「隆弘? に2回来ればいい方でしょう。悠はポイントが嫌だってになって来なくなった。絵美さんも佳奈さんも、介護員扱いするなって言う。じゃあ、お母さんの通帳や薬や病院の予定、誰が毎見るの?」
誰もすぐには答えられなかった。
その沈黙こそ、恵子がく抱えていた満の正体だった。
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佳奈はしばらく考えた、「誰も恵子さんに全部やってくれとは言っていないといます」と言った。「が番やっているから、ですべて決めていい、という形になるのがおかしいと言っているだけです」と続けると、恵子の表がさらにくなった。
その、正子が突然声をげた。
「もうやめなさい。そのおは私が使ったの」
全員が母を見る。
「何に使ったんだよ」
隆弘が尋ねると、正子は「言いたくない」と答えた。
「18万円だぞ」
「私のおでしょう。何に使ってもいいじゃない」
それ以、正子は何も説しなかった。
話はそこで打ち切られたが、誰納得していなかった。帰り際、隆弘は駐で悠を呼び止め、「姉ちゃん、絶対何か隠してるぞ」と声で言った。
「母さんが自分で使ったって言ってただろ」
「母さん、をかばうああいう言い方するんだよ。昔からそうだったじゃないか」
「誰をかばってるって?」
隆弘は実の窓を見げた。
「恵子だろ」
その夜、悠が連の話を佳奈へすると、妻はスマートフォンに送られてきた通帳の写真をしばらく眺めていた。そしてにも、「私は恵子さんが使ったんじゃない気がする」と言った。
「どうして?」
「6万円、5万円、7万円って、毎回額が違うでしょう。自分の活費として抜くなら、もうしまとめてしてもいい気がする」
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「じゃあ何だよ」
佳奈は写真を拡しながら考えた。
「誰かに必な額だけ、その都度渡したんじゃない?」
悠は、そのは半信半疑だった。
しかし数、18万円を受け取っていた物が分かった、族の疑いはまったく違う方向へ向かうことになる。
の問題が解決しないまま数が過ぎた頃、正子が父の部をそろそろ片づけたいと言いした。秀夫がくなって2が経つのに、机のの文具も、釣り具も、会社員代の名刺入れもほとんどそのまま残されていた。正子自では捨てるかどうか決められないため、子供たち3で見てほしいということだった。
曜の午、恵子、隆弘、悠の3は久しぶりに父の部へ入った。引きしをければ古い領収がてきて、本棚にはいつ買ったのか分からない健康本が何冊も並んでいる。「これは捨てていいだろ」「それは母さんに聞いた方がいい」と言いながら、しずつ段ボールへ分けていった。
机の番の引きしから、3冊の学ノートがてきた。
表には父の字で、《治療》《計》《お願い》とかれていた。
悠が何気なく《お願い》とかれた冊をくと、最初のページには父が肺がんの治療を始めた頃の付が並んでいた。《412 恵子 病院 1》《415 正子 薬》《420 恵子 病院 2》《423 隆弘 1》。名、頼んだこと、その横に数字がかれており、ページがむにつれて数字は増えていった。
恵子、17、32、51、そして最の方では84。
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