"親孝行214点の姉が降りた日" 第7話
嫌な予がした。
「まさか、兄ちゃん?」
い沈黙があった。
それだけで答えは分かった。
隆弘が勤めているのは、従業員20ほどのさな印刷会社だった。、型の印刷設備が故障したに受注が減り、に与の支払いが遅れた期があった。さらに女の学受験がなり、予備代、受験料、入学準備が続いて計が急激に苦しくなったという。
6万円、5万円、7万円。
必になるたび、正子から借りていた。
「じゃあ、姉ちゃんは?」
『ってる』
悠はわずちがった。
「何で何も言わなかったんですか。兄ちゃんが姉ちゃんを疑ったも黙ってたでしょう」
絵美は疲れたような声で答えた。
『お義母さんが、誰にも言わないでって頼んだの』
さらに事は複雑だった。正子は最初、自分でATMへこうとしたが、カードを管理していた恵子から「通帳に残るから、でみんなに聞かれるよ」と止められている。それでも「隆弘だって今変なんだから」と譲らなかったため、最には恵子自がATMでをろし、母へ渡していた。
つまり、誰かが記録だけを見れば、恵子が18万円を使ったように見える形になっていた。
「兄ちゃん、自分が疑われるに言うべきだったでしょう」
『私もそう言った』
絵美の声にはりが混じっていた。
『昨、それで喧嘩したの。隆弘は、“自分が借りた18万円と、恵子さんがのを使ってるかもしれない話は別だ”って言うんだけど』
「理屈では別ですけど、自分のことを隠したまま姉ちゃんだけ疑うのは違いますよ」
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『私も同じこと言った』
その週末、族は再び実へ集まった。
隆弘はらかに居が悪そうに座り、全員がそろうと最初にをげた。
「母さんから18万円借りました」
悠はすぐに聞いた。
「何で黙ってたんだよ」
「返すつもりだったからだよ。庭ののことまで兄弟に言う必ないとった」
「じゃあ、姉ちゃんを疑ったは?」
隆弘はを閉じた。
恵子は兄を睨むこともせず、黙って座っていた。その静けさの方が、悠には鳴られるより怖くじられた。
「悪かった」
隆弘が言う。
「何が?」
恵子が初めてをいた。
「疑ったこと」
「それだけ?」
隆弘は言葉を失った。
恵子は静かに続けた。
「私、あんたがお母さんから18万円借りたこと自体を責めてるんじゃないよ。お母さんが貸したいなら、それはの問題だから」
「……悪かったよ」
「私はお母さんに頼まれて、あんたがに困ってることを黙ってた。そのせいで自分が疑われても黙ってた」
隆弘の顔から、次第に気な表が消えていった。
「何で黙ったとう?」
答えられない兄に代わり、正子がさな声で言った。
「私が頼んだのよ。隆弘はプライドがいから、弟たちには言わないでって」
恵子は母を見た。
「また私が、お母さんのために悪い役をやったんだよ」
正子は顔を伏せた。
その、佳奈がをいた。
「これ、親孝ポイントと同じじゃないですか」
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全員が彼女を見る。
「誰かが“仕方ないから私がやる”って引き受ける。周りは事をらないから、そのが何をしているかも分からない。そうしてから、引き受けただけに満が残る」
恵子の顔がわずかにいた。
父の介護もそうだった。
母のの秘密もそうだった。
誰かが黙って背負い、周囲はそれをらない。
そして最に「そんなに変だったなんてらなかった」と言う。
恵子は座卓のに置いてあったポイント表へを伸ばした。
そのは初めて、自分からを裏返した。
18万円の件を話しったその、さらに別の問題がらかになった。
絵美が何気なく自分の得点を確認し、「私、先週まで34点じゃなかったですか」と言った。最の覧表では41点になっており、そのに7点分の用事をした覚えがないという。
恵子は首を傾げた。
「私、してないよ」
族のポイント表はGoogleスプレッドシートで管理されており、編集来るのは恵子と正子の2だけだった。恵子が変更履歴をくと、夜11過ぎや夜0台に、正子のアカウントから何度も数字がき換えられていることが分かった。
絵美、プラス7点。
悠、プラス5点。
隆弘、プラス4点。
逆に、恵子はマイナス12点。
「母さん、これ何?」
悠が尋ねると、正子は目を逸らした。
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