"親孝行214点の姉が降りた日" 第12話
自分ばかりだとい続けた何もの。
それら全部を、84という数字で見返したかった。
「でも姉ちゃんが番やったのは事実だろ」
悠が言うと、恵子は静かに答えた。
『たぶん、もう“誰が番”って話じゃないんだよ』
翌、悠は破られていた3枚をコピーではなく原本のまま恵子へ渡した。
そのを持つべきなのは、自分ではなく姉だとった。
翌週の曜、久しぶりに族全員が実へ集まった。
親孝ポイントを始めたと同じ居、同じ座卓だった。
しかし半以とは空気が違った。
恵子は枚のA3用を持ってきた。
最に保されていたポイント表だった。
正子が勝に操作した数字をすべて修正へ戻してあり、最終な記録では、恵子214点、隆弘73点、絵美58点、悠66点、佳奈47点になっていた。
「これで最にする」
恵子はそう言うと、全員のでを半分に破いた。
さらにもう度折り、細かく破る。
正子はしもったいなさそうに見ていた。
「せっかく記録したのに」
「だから捨てるんだよ」
恵子は母を見る。
「記録することが悪いんじゃない。誰が病院へったとか、誰が薬を受け取ったとか、そういう報は必。でもそれを、“誰のが番いか”みたいな順位にはしない」
その代わり、恵子はしいノートを冊持ってきた。
表には、《お母さんの活》とだけいてあった。
広告
病院の予約。
薬の内容。
訪問護の連絡先。
デイサービス。
支払った費用。
通院を担当する。
そこに点数をく欄はなかった。
「来ないはどうする?」
隆弘が尋ねる。
佳奈が答えた。
「来ないって言う」
「でも誰かがやらないと困るだろ」
「だからのサービスを使う」
「がかかる」
正子がいつものように言うと、今度は悠が笑った。
「母さんの活のために使うんだよ」
「でも、もったいないじゃない」
「俺たちのだって無料じゃないぞ」
正子が驚いたように息子を見る。
悠は慌てて付け加えた。
「別に母さんから取るってじゃないよ。でも仕事休んだり、佳奈が子供の予定変えたり、姉ちゃんが働けなくなったりするのも、全部何かを使ってるってこと」
「そういうこと」
恵子が笑った。
そこで絵美がをげた。
「私もつ決めておきたい」
隆弘が嫌な予をしたような顔をする。
「何?」
「誰かが“自分がやる”って言うに、配偶者のまで勝に含めないこと」
隆弘の顔が赤くなった。
「まだ言うのかよ」
「言う」
部に笑いが起こった。
悠も佳奈を見る。
「俺も気をつける」
「本当に?」
「本当に」
「今“たぶん”って言おうとしたでしょう」
また笑いが広がった。
しばらくして、正子は恵子へ向き直った。
「私のせいで仕事を変えたとか、浩さんとうまくいかなくなったとか、全部私のせいって言われても……」
広告
恵子は首を横に振った。
「全部お母さんのせいにはしないよ」
正子が顔をげる。
「私が断らなかったこともある。お父さんのことだから、自分からきたいとったもあった」
恵子はし考えてから続けた。
「でもね、やりたいと、やらなきゃいけないは違ったんだよ」
正子は黙った。
「そこだけは分かってほしい」
「……うん」
すぐに何もかも許したわけではない。
積みなった満が、の話しいで消えるわけでもない。
それでも、そのは初めて、介護をする娘とされる母ではなく、恵子と正子というのとして話しているように悠には見えた。
族会議が終わる頃、細かく破られたポイント表はゴミ箱のに入っていた。
誰も拾わなかった。
それから1が過ぎ、正子は73歳になった。
脈は薬で定し、週に度デイサービスへ通っている。最初は「老ばっかりで嫌」と文句を言っていたが、最では同じテーブルの女性たちと昼にトランプをするのが楽しみになり、迎えのが来るになると自分から玄関で待つようになった。
恵子は元の別の旅会社に再就職し、予約センターでフルタイム勤務を始めた。莉奈が専学へ学した、料の夜に悠へ話してきて、「やっと自分の料だけで賃払えた」と笑った。
実へ来るのは週に度ほど。
毎ではない。
仕事に正子から話がかかっても、られないにはない。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
消えた指輪と義父の手帳
結婚2年目の美咲は、義母・富美子から突然、亡き義父が贈った大切な指輪を盗んだと疑われる。 防犯カメラには、夜中に美咲が仏間へ入る姿が映っていた。だが美咲は、ただ窓を閉めただけ。身に覚えのない疑いをかけられたうえ、夫の亮介までもが「バッグを見せれば終わる」と言ったことで、美咲は家を出る決意をする。 しかしその後、義姉から告げられたのは、7年前にも同じような“盗難騒ぎ”があったという事実だった。 さらに、亡き義父の手帳には、富美子が隠し続けてきた家族の秘密が残されていた。 消えた指輪は、誰が持ち出したのか。 そして義母はなぜ、真実を知りながら美咲を疑い続けたのか――。嫁姑|真実|親子関係1.6万字5 560 -
完結第11話
貧乏人と呼ばれた食卓
長男夫婦が3連休に帰省し、久しぶりに家族で食卓を囲むはずだった。 母の真紀子は、息子夫婦のために煮物や豚汁を用意し、昔と変わらない温かい夕飯を作ろうとしていた。ところが、台所で2人きりになった瞬間、長男嫁の美沙は笑いながら言い放つ。 「あんたの手作りとか無理だから、高級寿司出せよ、貧乏人」 その一言で、これまで見過ごしてきた違和感が一気に表へ出る。人を持ち物や育ちで見下す美沙の本性。そして、真紀子の過去まで侮辱された時、普段は温厚な夫・隆志が静かに立ち上がった。 「今日限りで絶縁だ」 さらに隆志が呼び出した“ある男”の登場によって、美沙の家庭に隠されていた価値観と金の問題まで明らかになっていく。 古い皿、手作りの料理、そして家族として本当に大切なものとは何か。 一度壊れた食卓から、それぞれの人生が大きく動き出す――。絶縁|親子関係1.7万字5 1408 -
完結第13話
古い工場を渡された嫁
食品会社を一代で守ってきた山代会長は、ある夜、庭で長男夫婦の会話を偶然聞いてしまう。 「お母様、これから先どれだけ生きられるかしら」 信じていた嫁が、自分の命も会社も、すでに財産として数えている――。その一言をきっかけに、会長はある決断をする。 自分は重い病にかかり、会社も危機にある。そう家族に告げ、2人の嫁に後継者を決めるための試練を与えたのだ。 華やかな長男の嫁・彩佳には会社を。 不器用で人の良すぎる次男の嫁・ユナには、地方にある廃業寸前の古い工場を。 誰もが、勝者と敗者は決まったと思っていた。 しかし3か月後、会社を手に入れた嫁と、古い工場へ送られた嫁の運命は、誰も予想しなかった形で逆転していく――。兄弟姉妹|嫁姑|相続|親子関係2.0万字5 501 -
完結第10話
「冷たい嫁」と書かれた分担表
義母の介護を一人で背負うことを断った佐和子に、夫は冷たく言い放った。 「介護をしないなら、遺産は弟夫婦に譲る」 これまで買い物も通院も掃除も、黙って引き受けてきたのは佐和子だった。それなのに、義母の家で現金が消え始めると、疑いの目は真っ先に彼女へ向けられる。 さらに見つかったのは、義母が書いたはずの《佐和子さんがしたこと》というノート。そこには、覚えのない失敗や盗みの記録が並んでいた。 本当に義母の思い込みなのか。 それとも、誰かが佐和子を“悪い嫁”に仕立てようとしているのか。 介護、遺産、家の売却、消えた薬――。 家族のために我慢し続けてきた妻が、ようやく自分の人生を取り戻すまでの物語。兄弟姉妹|嫁姑|相続|介護1.4万字5 2214 -
完結第10話
「無職の父」と呼ばれた6年間
「無職のあなたに、病気のある子どもを育てられると思う?」 妻・美咲からそう言われた佐伯公平は、言葉を失った。10歳の息子・悠人は、4歳の頃から1型糖尿病と向き合っている。血糖値の確認、食事管理、通院、学校との連絡――そのすべてを6年間支えてきたのは、公平だった。 しかし妻は、安定した収入を理由に息子を連れて出ていこうとしていた。さらに、悠人にはすでに新しい部屋や転校の話まで伝えられていた。 父親として過ごしてきた時間は、「無職」という一言で消されてしまうのか。 公平は、6年間の連絡帳と医療記録を手に取る。そこには、誰にも見えなかった父と息子の日々が残されていた。 親権をめぐる争いの中で明らかになる、夫婦のすれ違い、息子の本当の気持ち、そして“家族”の形。 これは、父親として生きてきた時間を取り戻すための、静かな戦いの物語。人生逆転|夫婦|親子関係1.5万字5 7 -
完結第10話
米寿の席で外された嫁
米寿祝いの席で、義母は親族の前で突然言った。 「秋子さんには、明日から店へ来てもらわなくて結構です」 33年間、朝早くから和菓子店《松月堂》を支えてきた秋子。餡を練り、注文を管理し、繁忙期には夜まで働いてきた日々は、義母の一言で“家族の手伝い”として片づけられた。 しかも店から外された秋子に、今度は義母の通院や世話を任せるつもりだった。 何も言わず席を立ったその夜、秋子は古い段ボール箱の中から、亡き義父が残した一通の封筒を見つける。 そこに入っていたのは、秋子を守るための遺言ではなかった。 店の帳簿に隠されていた不自然な金の流れ、説明されていない借金、そして義父が最後まで言えなかった家族の秘密。 「家族だから」という言葉の下で、誰が何を背負わされていたのか。 33年間奪われてきた時間と仕事の価値を、秋子が静かに取り戻していく物語。人生逆転|嫁姑|親子関係1.5万字5 1220 -
完結第11話
祖父を迎えた家に福が来た
祖父が最近、どこかおかしい。 そう感じた恵子は、夫の匠とともに実家を訪ねるたび、祖父の表情が少しずつ暗くなっていることに気づいていた。兄夫婦と同居しているはずなのに、服はいつも同じ、部屋は荒れ、食事もろくに取れていないように見える。 ある日、祖父はぽつりと呟いた。 「もうダメじゃ……」 不安を覚えた恵子が確かめてみると、そこには想像以上にひどい現実があった。兄嫁は祖父を邪魔者のように扱い、さらに年金手帳や通帳まで握っていたのだ。 「うちで一緒に暮らそうよ」 恵子と匠は祖父を連れ出し、新しい生活を始める。少しずつ笑顔を取り戻していく祖父。だがその後、思いもよらない知らせが届く。 祖父が突然、3億円もの財産を相続することになったのだ。 そのお金をめぐって、祖父を粗末に扱ってきた兄夫婦の本性が、ついに世間の前で暴かれていく――。祖父母と孫|絶縁|親子関係1.6万字5 468 -
完結第9話
家族じゃないなら、援助も終わり
63歳の遠藤由美子は、ある日突然、息子夫婦から8500万円のタワーマンション購入の連帯保証人になってほしいと頼まれる。 「形式的なものだから」 「親なら普通、協力するでしょう」 そう言われても、由美子は簡単に頷けなかった。退職後の老後資金まで巻き込む大きすぎる借金。しかも息子夫婦は、すでに物件を申し込み、由美子が保証人になる前提で話を進めていた。 断った瞬間、息子は言い放つ。 「保証人にならないなら、もう家族じゃない」 さらにその夜、銀行からの確認電話で、由美子は信じられない事実を知る。自分たちの預貯金額が勝手に書類へ記載され、1000万円の援助まで予定されていたのだ。 誰が、いつ、なぜそこまで知っていたのか。 親の愛情を当然の権利だと思い込んだ息子夫婦と、初めて「援助しない」と決めた母。 家族という言葉の裏に隠れていた歪みが、静かに崩れ始める――。絶縁|親子関係1.4万字5 2476 -
完結第12話
家族写真の左端
明治42年、信州の城下町で生糸問屋を営む高瀬家は、初めて一家そろって写真館を訪れた。 紋付き袴の父、着物姿の母と子どもたち、そして椅子に座る祖母。出来上がった写真には、たしかに家族全員が写っていた。 しかし、背景の柱のそばに、誰も知らない若い男が一人だけ立っていた。 撮影の日、その場にいたのは高瀬家の者だけだったはず。しかも男の姿は、まるで古い記憶が重なったように薄く写っていた。 写真を見た祖母は、震える声で一つの名前を呟く。 「宗吉……」 家族の誰も聞いたことのないその名前は、高瀬家が長い間封じてきた過去へとつながっていた。 なぜ、その男の存在は家族から消されていたのか。 一枚の失敗写真が、明治の商家に隠された“もう一人の家族”の真実を静かに浮かび上がらせていく。昭和|兄弟姉妹1.8万字5 208