"12年前も、彼が犯人だった" 第3話
『私が盗んだではありません。それだけです』
話は切れた。
岸本は、説できないこと自体が怪しいと言った。理恵も当初ほど佐々を擁護しなくなった。
「自分のおなら、どうして理由を言わないんでしょう」
「に話したくない事があるのかもしれない」
「でも、それと会社のおが消えたことは別です」
理恵の指摘は正しかった。
そのの夕方、川は警察へ相談することを決めた。正式な被害届ではなく、まず状況を説して今の対応を確認するという。
直は夜になっても帰る気になれず、1で事務所へ残った。机には3週分の帳簿と現回収表が並んでいる。
曜の業務終には、帳簿と現が致していた。曜に確認すると、1万円がしている。
だから全員が、曜の午から曜までに庫から札が抜かれたと考えた。
しかし、本当にそうなのだろうか。
曜にが判しただけで、が庫から盗まれたとは限らない。
フーズでは曜の午にも配をっている。曜にドライバーが回収した現は、曜の朝に曜までの現とまとめて処理される。
つまり、曜に帳簿がわない、曜の回収分にも原因がある能性があった。
直は3週分の曜回収表を取りした。利用者名、回収額、領収番号を1件ずつ照していく。
広告
30分ほど経った頃、ある名でが止まった。
《森川キヨ》
84歳。内の団で1暮らしをしており、独居齢者向けの配サービスを利用している。週に度、曜にまとめて現を支払っていた。
回収額は、毎回1万円だった。
そして3週とも、森川キヨの入だけが帳簿へ正しく反映されていない。
「庫から1万円が抜かれたわけじゃないのか……」
誰かが庫をけたのではなく、曜に回収されたが、最初から会社の現として処理されていなかった能性がある。
それなら清掃員が庫番号をる必はない。
直は、3週の曜に森川宅を担当したドライバーを確認した。
すべて同じ名だった。
岸本翔太。
翌朝、直は岸本を会議へ呼んだ。最初から責めるつもりはなかったため、川や理恵にはまだらせていない。
「森川キヨさんの曜の集、3週続けておが担当しているな」
岸本は特に警戒する様子もなく、うなずいた。
「はい。それがどうかしましたか?」
「現は受け取った?」
「受け取りました」
「どこへ入れた?」
「会社へ戻って、ほかの回収と緒に袋へ入れました」
直は3週分の回収票を机へ並べた。森川キヨの名、回収額、岸本の署名が記されている。
「この3件だけ、入処理されていない。現もりない」
岸本の表が、ほんの瞬だけ変わった。
広告
「浦さんの入力ミスじゃないですか?」
「入力されていないだけなら、現は庫に残るはずだ」
「じゃあ、回収袋から誰かが抜いたんでしょう」
「誰が?」
直が尋ねた瞬、岸本は迷わず答えた。
「佐々さんじゃないですか」
あまりにい返事だった。
「おは最初から佐々さんを疑っていたな」
「だって怪しいでしょう。曜に会社へいるのは、あのだけなんですから」
「無で、曜にいる。それだけか?」
岸本は愉そうに子へ座り直した。
「瀬さん、俺を疑っているんですか?」
「まだ何も決めていない。だから確認している」
「俺はなんて盗ってません」
「森川さんのだけが、3週続けて消えているんだ」
岸本は顔を背け、それ以答えなかった。
そのの午、直は配担当の職員と緒に森川キヨの団を訪ねた。玄関へてきた森川は柄な女性で、はしかったが、受け答えははっきりしていた。
「ここ3週、曜の代を誰へ渡したか覚えていますか?」
「若い男のだよ。いつも来るお兄ちゃん」
岸本に違いない。
「領収は残っていますか?」
森川は居へ戻ると、財布から3枚の領収を持ってきた。いずれにも会社名、付、額、岸本の署名が記載されていた。
これで岸本が現を受け取った事実は確認できた。
会社へ戻った直は、今度は川と理恵を同席させた。
領収のコピーを岸本のへ置くと、若いドライバーは顔をこわばらせた。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
消えた指輪と義父の手帳
結婚2年目の美咲は、義母・富美子から突然、亡き義父が贈った大切な指輪を盗んだと疑われる。 防犯カメラには、夜中に美咲が仏間へ入る姿が映っていた。だが美咲は、ただ窓を閉めただけ。身に覚えのない疑いをかけられたうえ、夫の亮介までもが「バッグを見せれば終わる」と言ったことで、美咲は家を出る決意をする。 しかしその後、義姉から告げられたのは、7年前にも同じような“盗難騒ぎ”があったという事実だった。 さらに、亡き義父の手帳には、富美子が隠し続けてきた家族の秘密が残されていた。 消えた指輪は、誰が持ち出したのか。 そして義母はなぜ、真実を知りながら美咲を疑い続けたのか――。嫁姑|真実|親子関係1.6万字5 563 -
完結第13話
離婚後に生まれた息子
10年間の不妊治療の末、「子供もできなかった」と姑に責められ、夫・健一から離婚を告げられた38歳の由美。ところが離婚から2週間後、最後に受けた治療が実っていたことが判明する。由美は悩んだ末、元夫には知らせず、実家で1人の男の子を出産した。それから1か月。離婚から10か月後のある日、玄関に現れたのは健一と、彼が再婚する28歳の美香だった。「来月、結婚式をするんだ」と招待状を差し出そうとした健一。しかし、由美の腕に抱かれた赤ん坊を見た瞬間、その笑顔が消える。「その子……まさか俺の?」。10年間「子供を産めない妻」と責められ続けた由美の人生が、そこから大きく動き始める。夫婦|真相|修羅場2.0万字5 4189 -
完結第13話
閉じ込められた臨月の妻
妊娠38週、予定日まであと12日の加奈。夫が海外出張へ出た2日後、突然訪ねてきた義両親は「様子を見に来た」と言いながら、家事や学歴を責め続けた。そして義母に促され、家庭用サウナの中を確認しようと入った瞬間、背後で扉が閉まる。外側には南京錠。スマートフォンまで奪われた。「私たちから息子を奪った罰よ」。そう言い残し、義両親は5泊7日の温泉旅行へ出発した。水もなく、いつ陣痛が始まってもおかしくない密室。しかし加奈には、義両親が知らないことがあった。このサウナは、かつて一級建築士だった加奈自身が安全設計に関わった機種だった――。嫁姑|親子関係|修羅場2.0万字5 1025 -
完結第12話
面接官の誤算
夢だった大手企業の最終面接。 24歳の小館達郎は、人事の仕事に憧れ、努力を重ねてようやく最終面接までたどり着いた。だが、中央に座っていた人事部長は、彼の学歴や家庭環境を見下し、面接の途中で冷たく言い放つ。 「低学歴の貧乏人は、面接する必要なし。不採用で決まりだな」 母子家庭で育ち、必死に支えてくれた母への思いまで踏みにじられた達郎。悔しさをこらえながらも、彼はその場で言い返さず、静かに会社を後にした。 しかし1か月後、達郎は再び同じ会社へ呼び出される。 案内されたのは、あの日と同じビルの役員会議室。そこには人事部長の佐野、社長、そして達郎のよく知る一人の男が座っていた。 達郎の姿を見た瞬間、佐野の顔色が変わる。 あの日の「不採用」は、ただの終わりではなかった。 一人の応募者を見下した面接官が、会社全体に隠されていた問題を暴き出すきっかけになる――。真実|修羅場1.8万字5 635 -
完結第12話
団地に残された17通
毎朝5時、誰よりも早く団地へ来て、廊下も階段もごみ集積所も黙って掃除してきた61歳の藤本志津江。 13年間続けてきた仕事は、ある日突然、31世帯の署名によって終わりを告げられる。理由は「住民の生活をのぞいている」「勤務時間外に声をかけすぎる」というものだった。 志津江は反論しながらも、自分の善意が誰かにとっては重荷になっていたことを知る。 そして契約終了が決まった直後、清掃用具庫から見つかったのは、長年誰にも届かなかった17通の手紙だった。 その中には、15年前に団地で起きた火災と、当時責任を負わされた元管理人、そして亡くなった女性が残したはずの言葉が含まれていた。 志津江は本当に住民を見張っていたのか。 17通の手紙は、なぜ用具庫に残されていたのか。 そして、団地が長年隠してきた火災の真相とは――。因果応報|人生逆転|真実1.8万字5 521 -
完結第10話
父の葬儀の日_夫は愛人を車に乗せて去った
48歳の由美は、3年間ほぼ1人で父を介護し、78歳の父を見送った。ところが葬儀の帰り、20年連れ添った夫・浩司は、愛人と思われる女性を助手席に乗せたまま、喪服姿の由美を雨の駅前で車から降ろす。「俺だって1日付き合って疲れてるんだ」。由美は泣かず、父が亡くなる2日前に渡してくれた古い革鞄を開いた。中にあったのは、1通の手紙、弁護士の名刺、そして夫の会社に関する資料。手紙の最初には、「浩司君に、私の通帳も印鑑も渡してはいけない」と書かれていた。なぜ父は、娘の夫をそこまで警戒していたのか。由美は父が最後に残した手がかりを追い始める。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場|不倫1.5万字5 632 -
完結第12話
花嫁が追い出した親友
幼なじみであり、仕事の相棒でもある親友・陸人の結婚式。 車椅子で生活する平井圭人は、心から親友の幸せを祝うつもりで式場へ向かった。だが、そこで待っていたのは、花嫁・美智からの冷たい拒絶だった。 「あなたがいると品格が下がる」 そう言われた圭人は、静かに式を去ろうとする。しかし美智はそれだけでなく、陸人との長年の友情まで断ち切るよう迫ってきた。 親友を困らせたくない圭人は、一度は身を引こうとする。 だが、美智は知らなかった。 目の前にいる車椅子の男が、陸人の人生を大きく変えた人物であり、さらに彼女が見下していた相手こそ、陸人が働く会社の代表だったことを。 結婚式当日、花嫁の一言から、隠されていた過去と本当の人間性が明らかになっていく――。怒り|修羅場1.9万字5 1122 -
完結第13話
0円の注文帳
母の死後、55歳の直子は、43年間続いた弁当屋「こもれび弁当」を片づけるため、久しぶりに実家へ戻った。 店の奥から見つかったのは、母が残した古い注文帳。そこには、直子が20歳の誕生日に母を嫌いになった夜の記録が残されていた。 《6号棟504 2食 0円》 《白いタオル》 《直子には言わない》 あの日、母は誕生日の食卓を途中で抜け出し、急ぎの配達へ行った。直子はずっと、母が自分より店の客を選んだのだと思っていた。 しかし30年後、注文帳に残された「0円」の意味を追ううちに、直子は知らなかった母の顔、父が隠した事実、そして自分が娘に繰り返しかけていた言葉の重さに気づいていく。 母は本当に、娘の夢を奪った人だったのか。 古い弁当屋に残された一冊の帳面が、30年間止まっていた母娘の時間を静かに動かし始める。金銭問題|修羅場1.9万字5 929 -
完結第14話
返されなかった合鍵
25年間、誰にも知られず借り続けられていた203号室。 夫の葬儀の日、見知らぬ女性から渡された一本の合鍵が、妻・千鶴の人生を大きく揺さぶる。 亡き夫はなぜ、家族に隠れて古い部屋を借りていたのか。 そこに残されていたのは、31本のカセットテープと、一人の少女の思い出だった。 最初は裏切りだと思った秘密。 しかし調べるほどに明らかになる、夫が25年前に背負った約束と、誰にも話せなかった苦悩。 守ることと、信じること。 家族を思う気持ちと、誰かを救おうとする気持ちは、時にすれ違ってしまう。 一つの合鍵から始まった真実の先で、千鶴が見つけたものとは――。人生逆転|相続|修羅場2.0万字5 749