"花嫁が僕を犯人にした朝" 第7話
すべてを勝つためではなく、自分が認める責任と、認めない責任を分けるためだった。
その夜、奈緒からいメッセージが届いた。
《母が封筒を持っています。圭介さんのお父さんへ渡したそうです。母は、を見れば私が誤解していると分かると言いました。でも、そのあと融資の類が差し替えられ、私はもう保証にならなくていいと言われました》
続きには、さらに別の事実がかれていた。
《朝倉さんのカードを借りたのは私です。週に封筒を縫い込み、作業台の着へ戻しました。あの夜、ドレスを切ったのも私です》
最に、こうあった。
《でも私は、まだ圭介さんと婚するか決められません》
奈緒のメッセージは、僕が切っていないことを初めて本が確に認める内容だった。崎は提に本のを確認するよう勧めたが、翌朝、奈緒自からホテル事部へ同じ文章が送られた。
会社は僕の処分を再検討した。ドレス損傷への関与は完全にされたが、報告義務違反と社員カード管理の備は残る。勤止はに縮され、格と倉庫配置は維持された。
澄はった。
「カードを盗られたのに、管理備って何?」
「ポケットから取られたことに気づかず、戻されたあとも報告できなかった。会社としては、何も責任なしにはできないんだとう」
広告
「お兄ちゃん、納得してるふりをしてない?」
僕は以なら、会社がし譲ったのだから分だと言っただろう。だが今回は、処分を受け入れることと、妥当だとうことを分けた。
組との協議で、カード管理については個だけの問題ではなく、装内に着や私物を全に保管する設備がなかった点も確認された。会社は鍵付きロッカーを増設し、格期をかに限定することでした。自宅待の賃も全額支払われることになった。
僕は英雄にはならなかった。社内の噂がすぐ消えたわけでもない。それでも、自分が切ったという嘘ので働き続けずに済んだ。
奈緒は式から週、堀と緒に僕へ会いに来た。所は崎の事務所だった。彼女は指輪をつけていたが、圭介とは別居しているという。
「本当に申し訳ありませんでした」
奈緒はったままをげた。
僕は謝罪を受け入れるとも、許すとも言わなかった。まず、なぜ支度で僕を指さしたのか尋ねた。
「母に、昨夜ドレスのくで誰かを見なかったかと聞かれました。私が黙っていたら、圭介さんのお父さんが、朝倉さんは以も問題を起こしただと言いました」
「それで、僕なら疑われても仕方ないとったんですか」
「度だけ、が欲しかったんです。式を終えてから訂正すれば、会社を辞めるほどにはならないとっていました」
広告
「僕の仕事を、あなたがを買うための代にしたんですね」
奈緒の肩が震えた。
堀がを挟もうとしたが、奈緒は止めた。
「はい。その通りです」
僕は、その返事を聞いてしだけ息がしやすくなった。泣いて否定されるより、何をしたか認めてもらう方がよかった。
奈緒は浦の融資類について説した。圭介の父は、しい歯科医院を設するため、奈緒を形式の理事にし、彼女の母が持つ舗物件も追加担保へ入れる案をめていた。圭介は詳細を父へ任せ、奈緒には「族になるための続き」としか話していなかった。
違法な文が作られたわけではない。最終には本の署名と説確認が必で、奈緒はまだ署名していなかった。だからこそ、浦側は「誤解」「事の相談」にすぎないと主張できた。
「圭介さんはっていたんですか」
「保証の話はらなかったと言っています。でも、私が何度聞いても父親に確認しなかった。式のあと、私が封筒のことを話したら、まず『父の顔を潰すな』と言いました」
圭介が全てを企てた悪なら、奈緒も決断しやすかったのだろう。彼は父に逆らえず、妻のをさく扱い、問題が起きるとの秩序を選んだ。常では優しくても、切な面で奈緒の側にてないだった。
「婚を決められないことと、僕へしたことは別です」
「分かっています」
広告
おすすめ作品
-
完結第23話
山に捨てられた妻は立ち上がる
建築会社の社長・鈴木佳奈は、工事現場から転落し、体を動かせないまま入院生活を送っていた。献身的に支える夫・健二は、周囲から理想の夫と称賛されている。だが夜になると、彼は佳奈の実印を持ち出し、署名を偽造し、愛人と会社や不動産を奪う計画を進めていた。さらに佳奈は、真夏の山中へ自分を置き去りにする相談まで耳にする。誰にも意思を伝えられないと思われていた彼女は、密かに回復しながら証拠を集め始める。夫婦22年の信頼を利用した計画の奥には、最初の転落事故へつながる秘密も隠されていた。因果応報|人生逆転|夫婦3.4万字5 229 -
完結第12話
靴磨きの少年と会長の時計
有楽町の高架下で靴を磨く18歳の佐藤蓮には、他人には聞こえない微かな機械音を聞き分ける力があった。ある日、常連客である東都ホールディングス会長・田中健三の腕時計から、機械式時計には存在しない電子音を聞き取る。留め具から現れたのは、米粒ほどの盗聴器だった。会長に請われて本社へ入った蓮は、次々と情報漏洩を防ぐが、やがて産業スパイに仕立て上げられる。300万円の入金、深夜の入館記録、捏造写真。会社だけでなく帰る場所まで奪われた少年は、古い靴箱に残した証拠を抱え、会長を追い落とそうとする陰謀に立ち向かう。職場逆転|人生逆転1.7万字5 265 -
完結第12話
留守番を命じられた妻
父が遺した築43年の家で、夫・浩司と義母・和子に尽くしてきた52歳の由美子。和子の喜寿を祝う2泊3日の温泉旅行を予約し、32万円を用意したのも彼女だった。ところが出発直前、「車が狭いから留守番ね」と置き去りにされる。後部座席の見知らぬ鞄、妊婦向けプランに変えられた予約、消えた実印。夫と義母は、妊娠した若い愛人を迎え、由美子の父の家まで奪おうとしていた。しかし2人を笑顔で見送った由美子は、すでに登記事項証明書と偽造書類を揃え、静かな反撃を始めていた。人生逆転|嫁姑|不倫1.8万字5 705 -
完結第12話
「中卒は留守番してろ」と空港に置き去りにされた私――数時間後、高級旅館の女将が上司だけを追い返した
中卒ながら独学で資格を取り、旅行会社に中途入社した22歳の天野澪。現場経験を生かして難航していた企画を救っても、学歴を嘲る竹内部長に成果を奪われ続けていた。やがて澪は、予約困難な老舗旅館・天祥館の視察枠を獲得する。ところが出発前夜、竹内は部下を脅し、澪の航空券だけを密かに取り消した。羽田空港に1人残された澪へ届いたのは、「中卒は留守番してろ」というLINE。事情を知らず天祥館へ着いた同僚たちを待っていたのは、チェックインを認めない女将だった。なぜ女将は、不在の新人を待つのか。そして澪が保存した操作履歴と録音は、竹内の嘘をどこまで暴くのか。人生逆転1.8万字5 925 -
完結第13話
夫の赴任先にいた「妻」
夫の単身赴任先を訪ねた美玲を迎えたのは、見知らぬ若い女性だった。 「うちの主人のお友達ですか?」 その一言で、2年間信じてきた結婚生活は音を立てて崩れ始める。夫・隼人は、赴任先で別の女性と暮らし、彼女には「妻とはもう終わっている」と話していた。 しかし、美玲が知ることになる夫の秘密は、不倫だけではなかった。 義母の介護を理由に仕事を辞めさせられ、義実家で“嫁”として家事と介護を背負わされていた美玲。そんな中、義母の部屋に設置されていた見守りカメラが、夫の人生を揺るがす決定的な会話を記録していた。 妻として、嫁として、都合よく扱われ続けた美玲が、最後に取り戻したものとは――。夫婦|修羅場|不倫2.0万字5 635 -
完結第10話
子どもを救って、僕は処分された
交差点で飛び出しかけた子どもを避けるため、市営バス運転士の北川蓮はとっさに急ブレーキを踏んだ。 子どもとの接触は避けられた。しかし車内では、降車しようとして立ち上がった高齢女性が転倒し、右手首を骨折してしまう。 翌朝、会社が蓮に差し出したのは「前方確認不足による危険運転」を認める謝罪文だった。 信号は見落としていない。子どもは確かに車道へ出かけていた。けれど、乗客を傷つけたこともまた事実だった。 会社は早く責任を運転士ひとりに押しつけようとし、世間は記事の見出しだけで蓮を責める。そんな中、蓮のもとに差出人不明の一通の手紙が届く。 そこには、事故の日に誰も語らなかった“もう一つの真実”が書かれていた。 守った命と、傷つけてしまった人生。 正しさだけでは割り切れない事故の先で、若い運転士が本当の責任と向き合っていく物語。因果応報|人生逆転1.5万字5 173 -
完結第11話
消えた指輪と義父の手帳
結婚2年目の美咲は、義母・富美子から突然、亡き義父が贈った大切な指輪を盗んだと疑われる。 防犯カメラには、夜中に美咲が仏間へ入る姿が映っていた。だが美咲は、ただ窓を閉めただけ。身に覚えのない疑いをかけられたうえ、夫の亮介までもが「バッグを見せれば終わる」と言ったことで、美咲は家を出る決意をする。 しかしその後、義姉から告げられたのは、7年前にも同じような“盗難騒ぎ”があったという事実だった。 さらに、亡き義父の手帳には、富美子が隠し続けてきた家族の秘密が残されていた。 消えた指輪は、誰が持ち出したのか。 そして義母はなぜ、真実を知りながら美咲を疑い続けたのか――。嫁姑|真実|親子関係1.6万字5 718 -
完結第10話
12年前も、彼が犯人だった
毎週月曜日、会社の金庫から1万円だけが消える。 疑いを向けられたのは、土曜の夜に出入りしていた無口な清掃員・佐々木誠だった。ロッカーからは、消えた金額と同じ3万円が見つかり、誰もが彼を犯人だと思い始める。 しかし、44歳の配送主任・高瀬直人だけは、その状況に違和感を覚えていた。 本当に金庫から金は盗まれたのか。なぜ清掃員は何も説明しようとしないのか。そして、12年前の古いタイムカードに残されていた佐々木の名前。 調べるほどに、消えた1万円は過去の事故と、会社が長年隠してきた“ある責任”へとつながっていく。 犯人を作れば、会社は楽になる。 その言葉の意味を知った時、直人は信じていた上司と、12年前の自分自身に向き合うことになる――。真実|裡の顔|修羅場1.5万字5 271 -
完結第10話
「無職の父」と呼ばれた6年間
「無職のあなたに、病気のある子どもを育てられると思う?」 妻・美咲からそう言われた佐伯公平は、言葉を失った。10歳の息子・悠人は、4歳の頃から1型糖尿病と向き合っている。血糖値の確認、食事管理、通院、学校との連絡――そのすべてを6年間支えてきたのは、公平だった。 しかし妻は、安定した収入を理由に息子を連れて出ていこうとしていた。さらに、悠人にはすでに新しい部屋や転校の話まで伝えられていた。 父親として過ごしてきた時間は、「無職」という一言で消されてしまうのか。 公平は、6年間の連絡帳と医療記録を手に取る。そこには、誰にも見えなかった父と息子の日々が残されていた。 親権をめぐる争いの中で明らかになる、夫婦のすれ違い、息子の本当の気持ち、そして“家族”の形。 これは、父親として生きてきた時間を取り戻すための、静かな戦いの物語。人生逆転|夫婦|親子関係1.5万字5 313