"果樹園の奥の家" 第16話
従業員が来客へりんごを切り分ける姿を見て、建物の記憶がしずつ別のものへ変わるのをじた。
私はそこへ、しいの板を取りつけた。
「梨果 の休憩所」
誰かの嘘を隠していたが、働くなら誰でも扉をけられる所へ変わる。板を見げていると、先から連絡が入った。
健太郎と初枝の起訴が決まり、判決までの程がき始めたというらせだった。
第18話 判決と婚届
裁判が終わるまで、10かかかった。
健太郎は最まで、会社のと夫婦のを区別できなかったと主張した。しかし、会社座からの4700万円、私から引きした1300万円、計6000万円の流れは、細と契約でつながっている。さらに0円の株式譲渡契約、夜018分のクラウド映像、美代子へ罪をかぶせようとしたLINEが、単なる勘違いではないことを示していた。
判決の、健太郎には業務横領、詐欺、印私文偽造・同使などにより、懲役56かの実刑が言い渡された。
傍聴席の方には、野さんと取引先の代表が座っていた。美代子は子どもを連れず、弁護士と静かに判決を聞いている。健太郎が守ると言った族も、称えてくれた町のも、今は彼のために声をげなかった。自分で切り捨ててきた信頼が、空席のように被告席を囲んでいた。
裁判が理由を読みげる、健太郎は度も私を見なかった。
広告
会社と従業員を質にし、証拠を削除し、へ責任を転嫁しようとした点が悪質だと指摘されると、肩だけがさく揺れた。
閉廷の直、健太郎は弁護を通じ、損害賠償を減らすなら謝罪文をくと申した。私は断った。謝罪の値段を交渉する言葉より、判決文に残る事実のほうが、会社と従業員をく守るとったからだ。
初枝は偽造への関与を認め、懲役2、執猶予4。民事の返還にも応じることになった。奈緒は捜査始すぐに端末と鍵を提し、偽造そのものへの関与は認められなかったが、私のを求したことについて面で謝罪した。私は返事をせず、今接触しないという約束だけを受け取った。
美代子は資操作に関与しておらず、健太郎に独だと欺かれていたこと、端末と資産を自ら提したことから、横領では起訴されなかった。ただし正資で得た利益は返還し、京のマンションとのに関する民事続きへ協力した。
マンションは売却され、残ったローン2000万円を精算した、3900万円が回収された。美代子の座に残っていた286万円と、会社名義へ戻したのの評価額約900万円をわせ、回収・保全できた価値は約5100万円。残る900万円についても、健太郎への損害賠償請求が認められた。
額だけを見れば、完全な元通りではない。
広告
弁護士費用も調査費用もかかり、町の噂で失った契約もある。それでも、18の雇用は守られ、残業代は支払われ、果園のも1株の株式も奪われなかった。何を取り戻したかは、座残だけでは測れない。
6000万円という傷は消えない。それでも、数字のき先をひとつずつ追ったことで、失われたものの半を会社へ戻せた。
裁判所をると、先が1枚の類を渡してくれた。10かに提した婚届の受理証だった。
私はあのから法にはすでに婚し、戸籍の姓もから梨へ戻っている。けれど事件と会社の処理に追われ、自分の名を取り戻した実を持てずにいた。
「梨栞さん。これで、刑事裁判も区切りです」
名を呼ばれ、私はようやく顔をげた。裁判所の段の向こうでは、がりの空からいが差している。
帰りので、私は受理証を黒いケースからし、父の写真の隣へしまった。復讐が終わったからへむのではない。奪われかけた名と仕事を、自分ので選び直したからめるのだとった。
第19話 豚汁がめないうちに
それから1、梨果園は再び収穫の朝を迎えた。
斜面には赤いりんごが連なり、たいが吹くたび、葉のから甘いりが流れてくる。かつて秘密のだった建物には「の休憩所」
の板がかかり、ウッドデッキでは見学客が採れたてのりんごをわっていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
四十九日の絶縁
夫を突然亡くした三十七歳の裕子。悲しみに暮れる間もなく迎えた四十九日法要の日、帰宅した彼女を待っていたのは、ゴミ捨て場に放り出された自分の荷物だった。「息子が死んだら嫁は赤の他人よ!」そう言い放つ姑は、さらに幼い二人の子供まで裕子から引き離そうとする。だが、姑が三歳の息子だけを異常に可愛がる裏には、恐ろしい計画が隠されていた。子供たちを守るため、裕子は静かに反撃の準備を始める。そして数か月後、助けを求めて電話してきた姑に、裕子が告げた言葉とは――。人生逆転|裡切られた|嫁姑|夫婦|相続|裡の顔|介護2.3万字5 184 -
完結第20話
「息子が高熱なのに来い!」夫一家に185万円の請求書を押しつけられた私の正体
夫と義家族から「何もできない専業主婦」と見下され、金銭まで搾り取られてきた松岡美央。しかし彼女には、世界的なホテルグループの最高責任者という、誰にも明かしていない秘密があった。ある夜、高熱を出した息子を看病していると、義母から三十件以上の着信が届く。「緊急事態だから今すぐ来なさい!」慌ててホテルへ駆けつけた美央を待っていたのは、豪華な食事を楽しむ夫一家と、185万円もの請求書だった。裡切られた|怒り|嫁姑|夫婦|親子関係|修羅場2.6万字5 1444 -
完結第10話
元夫に投げつけられたカード、残高は一億五千万円
「もう二度と、俺の前に現れるな」離婚の日、夫の大地に冷たく突き放され、ひな子は六歳の息子とともに家を追い出された。渡されたのは、養育費を振り込むという一枚のキャッシュカードだけ。ひな子はそれを封印し、工場で働きながら必死に息子を育ててきた。三年後、口座を解約するため銀行を訪れると、なぜか支店長自らが現れ、特別応接室へ案内される。通帳に記されていた残高は、なんと一億五千万円。さらに差し出されたのは、元夫の筆跡で「ひな子へ」と書かれた一通の封筒だった。あの日の冷酷な離婚には、誰も知らない秘密が隠されていた――。夫婦|真実|第二の人生|金銭問題|熟年離婚1.6万字5 834 -
完結第20話
高熱の娘を置き去りにした姉は、私の夫と不倫旅行中だった
結婚五年目の美和は、実の姉・麻里奈から生後十一か月の姪を十日間預けられる。ところが、姉が海外旅行へ出発した直後、幼い心ちゃんの容態が急変。必死に救急搬送する美和だったが、姉にも出張中の夫にも連絡がつかない。不審に思って姉のSNSを調べると、南国の写真に写り込んでいたのは、見覚えのある夫の腕時計だった。怒り|夫婦|親子関係|不倫1.8万字5 1513 -
完結第10話
泥の作業着と誇り
高校卒業から十七年ぶりの同窓会。咲は、夫が農家だと話した途端、華やかな暮らしを自慢する同級生のレナから大勢の前で笑いものにされてしまう。「泥だらけの旦那なんて恥ずかしくないの?」心ない言葉に傷つきながらも、咲は「世界一自慢の夫よ」と言い返した。やがて、仕事帰りの夫・大地が泥のついた作業着で迎えに現れると、再び嘲笑が巻き起こる。しかし次の瞬間、幹事の西村が顔色を変え、夫に向かって深々と頭を下げた。誰も知らなかった大地の本当の姿が、少しずつ明らかになっていく。人生逆転|夫婦|真相|第二の人生|修羅場1.7万字5 552 -
完結第18話
離婚翌日、父と食事中の私を「また金持ちに寄生か」と笑った元夫の末路
結婚生活のすべてを一円単位で折半しながら、家事だけは妻に押しつけていた夫・亮介。「お前は寄生虫だ」と離婚を突きつけられた綾乃は、静かに別れを受け入れた。 その翌日、実父と高級ホテルで食事をしていると、偶然現れた亮介と不倫相手が「もう次の金持ちを捕まえたのか」と嘲笑する。因果応報|夫婦|真実|金銭問題|修羅場|不倫1.9万字5 431 -
完結第21話
赤ペンで消した夫
四十一歳の黒沢洋子は、出版社で腕を認められるベテラン校正者。編集長として出世した夫・和也を支え、七年間、穏やかな結婚生活を送ってきた。ところがある夜、夫から頼まれた若い女性作家の原稿に、見覚えのある文章を発見する。それは、かつて夫が洋子だけに囁いた愛の言葉だった。疑念を抱いた洋子が調べ始めると、原稿の裏には夫の不倫だけでは済まない重大な秘密が隠されていた。やがて和也は、女性作家との十日間の執筆合宿へ出発する。何も知らず帰宅を楽しみにする夫に、洋子は静かに最後の準備を進めていた。夫婦|真実|修羅場|不倫2.3万字5 601 -
完結第10話
産後七日目の決別
帝王切開からわずか七日。傷の痛みと貧血に苦しむ真帆に、夫の直人は「産んだ人が自分で育てればいい」と冷たく言い放った。生まれたばかりの娘を守るため、真帆は実家へ避難する。ところが直人と義母は、彼女を「産後うつで勝手に家出した妻」に仕立て上げ、親族に嘘を広め始めた。追い詰められた真帆は弁護士に相談し、あの日の暴言が記された助産師の記録を手に入れる。そして、夫の勤務先から届いた一通の回答書が、直人の主張を根底から覆そうとしていた――。夫婦|裡の顔|修羅場|不倫1.9万字5 490 -
完結第14話
夫のいない四日間
人気ミステリー作家の安田里美は、無職の夫・博之と七歳の娘を養いながら、仕事も家事も一人でこなしていた。ある深夜、夫のスマートフォンに届いたメッセージから、博之が高校時代からの親友・裕子と不倫していることを知る。しかも二人の豪遊費は、里美の書斎から盗まれたクレジットカードで支払われていた。娘を思って離婚をためらう里美だったが、七歳の美香が口にした言葉で決意を固める。そして夫が裕子と沖縄へ旅立った朝、里美はカード会社と引っ越し業者に電話をかけた。さらに、夫の荷物には思いがけない届け先が指定されていた――。夫婦|親子関係|不倫2.0万字5 2223 -
完結第18話
4億円の私の家を義弟に譲る義母――夫の一言で凍りついた古希祝い
義父母が住む場所を失った十五年前、黒田彩は自分名義の家を無償で貸した。ところが義母・文子の古希祝いで、突然「あの家は次男の公平に譲る」と宣言される。親族が賛同する中、普段は母親に逆らえない夫が立ち上がり、衝撃の事実を告げた。しかし義母は、彩が昔書いた一通の手紙を持ち出して反論。因果応報|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|相続|裡の顔|金銭問題2.0万字5 1271