みかん小説
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"鍵をかけられた妊婦" 第10話

すぐにはかなわず、の半分は夜勤だったが、送迎表には祖父母ではなく、の勤務と病児保育の連絡先をいた。

節子が結菜と会ったのは、謝罪からさらにだった。所はではなく、駅の子育て支援センター。美緒と、邦夫も同席し、だけという約束だった。

節子は抱き方を教えようとする職員に「を育てたから分かります」と言いかけ、途でやめた。「今の抱き方を教えてください」と言い直した。

さな変化だった。美緒はその言を見逃さなかったが、だからといって次回からきりで預けようとはわなかった。

面会は度から始めた。節子は々、「昔はそんなこと気にしなかった」「族なのに予定を決めるの」と満を漏らした。美緒は聞き流さず、「その言い方が続くなら今は帰ります」と伝えた。

実際に度、帰ったこともある。節子はを介さず、美緒へいメッセージを送った。

《約束のを延ばそうとしてごめんなさい。次はを守ります》

のようない弁はなかった。

邦夫とは、もうし穏やかに話せた。彼はの収支表を美緒へ見せ、「事務が得だから見を」と頼んだが、美緒は仕事として依頼するなら検討すると答えた。

翌週、邦夫は作業内容、期限、報酬をいた依頼を持ってきた。

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美緒は部の帳票理だけを引き受け、請求した。節子は最初、で請求とはくさいと言ったが、支払いには指定座へ報酬を振り込んだ。

川漬物はの駅の棚を半分失った。その代わり、種類の商品を定期便で売るようになり、繁忙期の徹夜はなくなった。売は以よりないが、邦夫は「夕を作業べなくなった」と笑った。

節子はを縮めたことを完全には納得していなかった。親戚の集まりでは、今も「昔の嫁はもっと働いた」とにする。聞いたには、美緒を厳しすぎる嫁だとう者もいた。

美緒は、その評価を訂正するために集まりへかなかった。全員に理解されることを目標にすると、また自分のと体を差しすことになる。

との同居は、結菜がに再した。元通りになったわけではない。美緒は自分名義の座と、いつでも泊まれる姉の鍵を持ち続けた。夫婦相談も度通った。

ある曜の夜、節子から話が来た。翌朝までに百袋の追加注文へ対応したいので、伝ってほしいという。

なら、美緒へ相談するに「分かった」と答えただろう。彼はで、「今は返事しない。としてを雇うか、納期を交渉して」と言った。

節子は「な息子ね」

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と言って切った。

はしばらく画面を見つめていた。「断ると、今でも胸が苦しくなる」と美緒に話した。

「苦しくても断れたね」

「うん。母さんが困っていることと、俺が必ず解決することは別だから」

翌朝、節子は臨材サービスへ話し、分の費用を払った。利益はほとんど残らなかったが、注文は終わった。が助けに来なかったせいでが潰れることも、節子が倒れることもなかった。

結菜が歳になったは昼のレストランで事をした。で祝わなかったのは、誰かが台所へち続ける会にしたくなかったからだ。

節子はさな積みを贈った。箱を差しに、「けてもいい物か、先に聞こうとって」と美緒へ尋ねた。

「ありがとうございます。結菜に渡してください」

節子はへ座り、積みつずつ並べた。結菜は赤い積みを握り、すぐに崩した。節子は積み直そうとを伸ばし、途で止めた。

「自分でやりたいのね」

その言葉を、美緒は静かに聞いた。

事の帰り、は駅で別れた。節子は次の予定を勝に決めず、「また会えるは、に候補を聞いてもらうわ」と言った。

ホームへ向かう途が美緒へ尋ねた。「母さんを許せた?」

美緒はすぐには答えなかった。

「許すって、回決めたら全部消えることじゃないとう。

会えるはある。でも、あののことをなかったことにはしない」

「それでも族でいられる?」

族だからづくんじゃなくて、全な距を守れるからづけるんだよ」

は頷いた。

自宅へ戻ると、結菜が玄関の鍵へを伸ばした。まだ届かず、抱いていたしかがむ。美緒が鍵を回し、扉をけた。

あの朝、美緒を閉じ込めたのは本の補助錠だけではなかった。泊めてもらった恩、族なら助けるべきだという言葉、夫の疲労、を失う恐怖、善を断ればたいになるというい。そのどれも、から見れば鍵には見えなかった。

だから美緒は、もう鍵だけを警戒しなかった。誰かが自分のためと言って選択肢を奪うさな違のうちににする。断ったことで関係が壊れるなら、守るべきなのは関係の形ではなく、自分と子どもの活だった。

では、が保育園の汚れ物を洗濯へ入れている。結菜は積みを袋からし、いっぱいに散らかした。

美緒はつ拾おうとして、やめた。結菜が自分で赤い積みをつかみ、黄へ置く。し傾いていたが、崩れなかった。

族も同じなのかもしれない、と美緒はった。誰かが完成した形を押しつければ、ほかのは息ができない。何度崩れても、それぞれが自分ので置き直すしかない。

窓ので、がカーテンを揺らした。玄関の鍵は閉まっていたが、内側からいつでもけられる。

美緒はそのことを確かめるように度だけ扉を見て、それから娘の隣へ座った。

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