"博士になった息子を「返せ」と言われた夜" 第4話
「結局、僕が必なのではなく、僕の肩きが必なんですね」
「親に向かって何だ、そのの利き方は」
「親であることを、都のいい権利として使わないでください」
「、やめて」
ひよりは息子の袖をつかんだ。正たちの言葉で傷ついているはずなのに、が自分を守るために無理をしているようにえた。
「あなたまで苦しまなくていいの。これは私とお父さんの問題だから」
「違うよ、母さん」
はひよりのを包んだ。
「僕のを誰がどう扱ったのかという問題でもある」
は胸ポケットからスマートフォンを取りした。
「父さん。僕が何もらずに今を迎えたとっていますか」
正の眉がいた。
「どういうだ」
「3、帰国した僕に叔父さんが連絡をくれました。父さんが博士号の祝いのに、母さんへ婚を切りすつもりらしいと」
ひよりの兄、彦が親戚の席から静かにちがった。
正が彦をにらむ。
「義兄さん、余計なことをしたな」
「、妹をだましてきたに言われたくない」
彦は淡々と答えた。
が画面を操作すると、内に正と子の会話が流れた。声の背では器の触れう音と、内らしい音楽が聞こえている。
『本当に、あの女は素直にていくかしら』
子の声だった。
『婚届を突きつければていく。
広告
ひよりには自分で判断する力なんてない。昔から俺に逆らったことがないんだ』
続いて、正の笑い声が流れた。
『にも私が母親だって話してくれるのよね』
『ああ。さいうちは面倒だから、ひよりに育てさせればよかった。あいつは子どもが欲しかったから、疑いもしなかったよ』
『夜泣きも病気も受験も、全部引き受けてくれたものね』
『以分の養育費と政婦代が浮いたとえば、いものだ』
親戚のから、い非難の声ががった。
録音ので子は楽しそうに笑っていた。
『でも、はもう博士よ。これからは利用価値があるわ。正さんの会社を継がせてもいいし、私のサロンの展にも名を使える』
『ひよりには円も渡さない。このも会社も俺のものだ。あいつには古いでも持たせて追いせばいい』
録音が止まった。
子の顔は青ざめ、正は拳を握っていた。
「盗み聞きしたのか!」
「の従業員が、あなたたちの話を聞いて叔父さんへ連絡しました。父さんが会社から審な支払いを続けていたため、以から調べていたそうです」
は正から線をそらさなかった。
「僕を育てるのに母さんを利用した。今度は僕の学歴を利用する。あなたたちは、族を何だとっているんですか」
「、俺はおの将来を考えているんだ」
広告
「僕の将来は僕が決めます」
は婚届をに取り、正のへ戻した。
「僕は母さんと緒にます。父さんの会社ももりません」
「おは俺の実の息子だぞ!」
「僕の族は、僕がをしたに朝までを握ってくれたです。自分の指輪を売って留学費を作ってくれたです」
ひよりは驚いて顔をげた。
「どうして、それを……」
「空港で叔父さんから聞いた。母さんは最まで黙っていたけどね」
はひよりの肩へを置いた。
「僕の母親は、ひよりさんだけです。あなたたちについていくつもりはありません」
その、彦の隣に座っていたのスーツの男がちがった。
「では、さんのも確認できましたので、次のお話へみましょう」
「誰だ、あんたは」
正が険しい声を向けると、男は名刺を差しした。
「弁護士の渡辺です。太田の代理として参りました」
「太田?」
「ひよりさんのお父様が、あなたへ貸し付けた事業資と宅建築費についてです」
渡辺は鞄から古い契約を取りした。
「正さん。あなたは先ほど、このも会社も自分のものだとおっしゃいましたね」
「事実だ」
「それでは、こちらに記された総額1億8000万円を、いつ返済したのかご説いただけますか」
正の顔から、初めてらかな余裕が消えた。
ひよりの父、太田源郎は、属部品を扱うさな会社を経営していた。
数がなく、娘の結婚にもほとんどを挟まなかったが、正が独したいと相談したには、事業資として1億2000万円を用した。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
質屋で知った夫の嘘
離婚の日、元夫・慎介は私の手に結婚指輪を握らせ、冷たく言い放った。 「売って生活しろ」 その一言を憎みながら、私は3年間、貧しい暮らしの中でも指輪だけは手放せずにいた。けれど貯金が尽き、ついに古い質屋へ持ち込んだ日、店主は指輪の内側を見て顔色を変える。 「奥様、お待ちしておりました」 そこには、私の知らない小さな印が刻まれていた。 なぜ元夫は、離婚前にこの質屋を訪れていたのか。なぜ私を突き放しながら、指輪だけを持たせたのか。 憎しみ続けた別れの言葉の裏に、3年間隠されていた真実が少しずつ明らかになっていく――。夫婦|真実|第二の人生|金銭問題1.7万字5 7 -
完結第10話
鍵をかけられた妊婦
妊娠七か月の美緒は、漏水工事のため、夫の実家で三週間だけ暮らすことになった。 最初は親切だった義母。けれど数日後から、漬物店の手伝いは少しずつ増え、母子手帳や保険証まで勝手に管理されるようになる。 医師から無理な立ち仕事を避けるよう言われても、義母は「妊婦は病人じゃない」と聞き入れない。夫に訴えても返ってきたのは、「母さんは心配しているだけ」という言葉だった。 そしてある朝、美緒が家を出ようとすると、靴は消え、玄関には外から鍵が掛けられていた。 閉じ込められた家の中で、突然お腹に強い張りが走る。 その時、美緒はようやく気づく。守らなければならないのは、家族の顔色ではなく、自分とお腹の子の命だった――。嫁姑|真実|親子関係1.6万字5 377 -
完結第14話
デブでダサいと捨てられた妻
「家で鏡くらい見ろよ」「太ってるし、服もダサい」。長年連れ添った夫から外見を馬鹿にされ、最後には別の女性を選ばれた妻は、何も言い返さず離婚届に判を押した。夫は、自分に捨てられた妻がこれからも地味で冴えない人生を送ると思っていた。しかし1年後、同窓会の会場で偶然再会した元妻を見た瞬間、その余裕は消える。髪型も服装も、立ち居振る舞いも以前とはまるで違う。だが、本当に夫を青ざめさせたのは“痩せて綺麗になったこと”ではなかった。離婚後の1年間で、彼女が取り戻していたものを知った時、元夫は初めて、自分が何を捨てたのか思い知らされる夫婦|熟年離婚2.0万字5 884 -
完結第15話
3日だけ帰るはずだった妻
「お盆は3日だけ実家に帰るね」。そう告げた恵子に、夫は「せいせいする」、20歳の息子まで「そのまま帰ってこなくていい」と笑った。だが2人は知らなかった。恵子は半年かけて必要な荷物を実家へ移し、離婚届にもすでに署名していたことを。翌朝8時30分、28年間の結婚生活を終わらせた恵子は、そのまま実家へ向かう。一方、妻がいなくなった家には夫の愛人が大きなキャリーケースを持って現れ、3人で新生活を始めようとしていた。ところが翌朝、ガス、電気、水道が次々と止まり、さらにリフォーム会社から告げられた一言で夫の顔色が変わる。「この土地と建物の所有者は、佐藤恵子様です」――。夫婦|熟年離婚2.3万字5 457 -
完結第10話
20年後、坊ちゃんは帰ってきた
財閥家の御曹司・優人は、母を亡くした直後、新しく屋敷に入ってきた女によって濡れ衣を着せられ、わずか8歳でアメリカ留学へ追いやられる。 実の父にまで見捨てられた優人のそばに残ったのは、亡き母から「この子を守って」と託された家政婦・白石千鶴子だけだった。 行き先も学校も用意されないまま、異国の地へ捨てられた二人。千鶴子は皿洗いをしながら優人を育て、優人もまた、悔しさを胸に必死で学び続ける。 そして11年後、母が残した一冊の日記から、隠されていた資産と最後の願いが見つかる。 それからさらに時が流れ、20年後。 日本の大和グループが経営危機に陥った時、正体不明の投資家「黒札」に救いを求めることになる。 しかし彼らはまだ知らなかった。 その「黒札」こそ、かつて屋敷から追い出した少年だったことを――。人生逆転|裡切られた|真相|親子関係1.4万字5 2 -
完結第11話
夫から届いた23年分の請求書
23年ぶりに働き始めた51歳の晴美は、初めての給料日を少し誇らしい気持ちで迎えていた。 しかし夫の隆司が食卓に並べたのは、祝福の言葉ではなく、12枚の「生活費精算案」だった。結婚してから自分が支払ってきた生活費の半額、合計1140万円を、これから返してほしいというのだ。 家事も育児も、義母の通院も、家族の予定管理も、すべて「養われていた時間」として扱われるのか。 納得できない晴美は、自分がこの家でしてきたことを記録し始める。すると押し入れの奥から、夫が密かに動かしていた800万円の明細が見つかった。 夫が本当に隠していたものは何だったのか。 そして、23年間の夫婦生活は「借金」だったのか。 一枚の請求書をきっかけに、家族の中で見えないまま積み重なっていた不公平が、静かに崩れ始める――。夫婦|第二の人生|金銭問題1.6万字5 175 -
完結第17話
果樹園の奥の家
夫・健太郎は、妻の栞が父から相続した長野の果樹園を任され、週5日を山で過ごしていた。ある日、「東京へ出荷に行く」と聞いていた栞は、昼食を届けようと果樹園へ向かう。ところが山の奥で見つけたのは、知らない平屋と2人の幼い子ども、そして健太郎を「パパ」と呼ぶ声だった。そこには、健太郎と6年間家族として暮らしてきたという女性までいた。さらに調べると、秘密の家や東京のマンションに使われた金は、栞自身が果樹園へ補填した1300万円と会社資金4700万円、合計6000万円と一致する。そして夫が栞と結婚した本当の理由まで明らかになる。「あなたは、健太郎の借金を返すために選ばれた人でしょう」――。夫婦2.5万字5 322 -
完結第9話
財産は長男へ――8年間介護した次男に残されたのは、古びた倉庫一軒だけだった
父・正一を8年間介護した次男の浩司。しかし遺言で、兄の裕二には家、田畑、預金、車が渡され、浩司に残されたのは荒れ果てた倉庫と、4時20分で止まった腕時計だけだった。兄夫婦に家を追い出され、娘の大学入学金82万円さえ用意できない浩司。四十九日にも仏壇へ入れてもらえず、家族で倉庫に父を供養した時、作業台の奥にある西壁から不自然な音が響く。壁の中から現れた鉄扉と巨大な金庫。父が時計に隠した暗号を解いた時、兄が見下した遺産の本当の価値と、20年前から封じられていた家族の秘密が動き始める。親子関係1.4万字5 266 -
完結第7話
山奥に捨てられた下半身不随の妻妻は立ち上がる
建築会社の社長・鈴木佳奈は、工事現場から転落し、体を動かせないまま入院生活を送っていた。献身的に支える夫・健二は、周囲から理想の夫と称賛されている。だが夜になると、彼は佳奈の実印を持ち出し、署名を偽造し、愛人と会社や不動産を奪う計画を進めていた。さらに佳奈は、真夏の山中へ自分を置き去りにする相談まで耳にする。誰にも意思を伝えられないと思われていた彼女は、密かに回復しながら証拠を集め始める。夫婦22年の信頼を利用した計画の奥には、最初の転落事故へつながる秘密も隠されていた。人生逆転|夫婦1.1万字5 195 -
完結第10話
預けた通帳が消えた日
六十七歳の山田静は、膝の手術費を用意するため、息子夫婦に預けていた通帳を返してほしいと頼んだ。 しかし嫁の美香は、薄く笑ってこう言った。 「お母さん、私たちにお金なんて預けましたっけ?」 夫と二人で魚屋を営み、三十年かけて貯めた老後の資金。息子を信じて渡した通帳も印鑑も、いつの間にか静の手元から消えていた。さらに息子の健一まで、母をかばうどころか「知らない」と目をそらす。 不安を抱えた静が耳にしたのは、預金を使い切ったあと、彼女を認知症扱いして施設へ入れようとする恐ろしい計画だった。 家族を信じ続けた母が、ようやく気づいた真実。 奪われたのはお金だけではなかった。 自分の人生そのものを取り戻すため、静は亡き夫との思い出が残る藤沢へ向かい、静かな反撃を始める――。怒り|親不孝|親子関係|介護|金銭問題1.5万字5 406