"7年間介護した私を捨てた夫――愛人を連れて帰宅すると、寝たきりの母も介護ベッドも消えていた" 第7話
26を終わらせる数字
の準備と並して、52歳の由美は自分の婚続きをめた。
健から渡された婚届に、そので判を押すことはしなかった。の法律相談で紹介された弁護士へ、26の預貯、保険、退職に関する資料、そして記録を持ち込んだ。
資料は袋2つ分になった。結婚当初、由美の与からを買った記録。宅ローンと活費を分担していた期の通帳。の介護が始まり、由美の収入だけが途切れたの計簿。数字を代順に並べると、由美が庭ので何を差ししてきたのかが、ではなく記録として浮かびがった。
財産分与と分割は別の続きであり、婚届をしただけで自に終わるものではない。由美は弁護士の説を聞きながら、数字を1つずつノートへいた。
かつて経理として働いていた頃の覚が、しずつ戻ってきた。通帳の入を代順に並べ、共財産とそれ以を分け、健の与から形成された財産だけでなく、由美が退職するまで計へ入れた収入も確認した。
「介護で退職した7を、なかったことにする必はありません」
弁護士の言葉に、由美は返事ができなかった。に収入を入れられなくなってから、健に「わせてやっている」と言われたことが何度もある。
広告
だが、由美が無償で担った介護がなければ、計からは毎別の費用がていたはずだった。
請求できるものと、26をく終えるために譲るものを、由美は自分で選んだ。今度は健の嫌ではなく、自分の将来を基準に数字を決めた。
「げさなことをするなよ。婚するだけだろ」
弁護士を通した協議をった健は満を漏らした。
「26を終わらせるのよ。何も確認せずに署名はしません」
由美が財産の覧を机に置くと、健は初めて黙った。そこには、由美が計簿をつけ続けてきたからこそ把握できたの流れが、度ごとに理されていた。
倫の慰謝料を請求することもできた。ホテルの領収も元にある。しかし由美は、争いを引かせてまで健と関わり続けるを選ばなかった。必な財産分与と分割の準備をえ、1でもくこのから自由になることを優先した。
やがて、婚届を提するが来た。
役所の窓で類が受理されても、きな音はしなかった。26は、担当者が押したさな受付印ひとつで静かに区切られた。
庁舎をると、たいが頬に当たった。由美はバッグのにある続き類を確かめ、ち止まらずに歩いた。嬉しいわけではない。26のすべてが違いだったともいたくなかった。
広告
それでも、これからのだけはの当然に使わせないと決めていた。
由美は久保田姓をれ、瀬由美へ戻った。
に帰ると、健はソファに座ったまま言った。
「母さんのこと、からも頼むな」
「聞いてるのか?」
「聞いてるわ」
由美は約束しなかった。しかし健は、拒絶されなかったことを承諾だと受け取り、満そうにテレビへ目を戻した。
由美が婚もに残ったのは、のショートステイ始が3に決まっていたからだ。健への未練ではない。7世話をしたを、全に次の所へ送り届けるためだった。
その夜、廊を通ると、健が玲奈へ送った音声メッセージが聞こえた。
「やっぱり由美はに残るみたいだ。母さんのことは、もう配しなくていい」
しを置き、健は自信たっぷりに続けた。
「絶対に丈夫だ。あいつは母さんを見捨てられないから」
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
離婚した5日後、私が92億円の都心ビルを相続したと知った夫
父の葬儀が終わった直後、由美は夫・浩司から離婚届を突きつけられた。「介護にかまけて、社長の妻として何もしてこなかった」。さらに夫のそばには、会社の広報を担当する若い女性の姿。28年間の結婚生活を否定されても、由美は泣かなかった。父が亡くなる3日前、病室で託された銀色の鍵と、「浩司君が何を選ぶか黙って見ていなさい」という言葉があったからだ。由美が迷わず離婚届に判を押すと、夫は勝ち誇ったように去っていく。その直後、父の顧問弁護士が現れ、銀色の鍵で小さな金属箱を開こうとする。そこには、父が娘にだけ残した“最後の意思”が隠されていた――。夫婦|金銭問題2.3万字5 2652 -
完結第15話
博士になった息子を「返せ」と言われた夜
春樹が博士号を取得した夜、母・ひよりは二十三年間の苦労が報われたように感じていた。 赤ん坊の頃から育て、病気の夜も、受験の日も、留学の朝も、ずっとそばで支えてきた大切な息子。けれど祝賀会の席で、夫は一人の女性を連れて現れ、残酷な真実を告げる。 「春樹は、俺と愛人との子だ」 さらに夫は離婚届を突きつけ、ひよりを家から追い出そうとする。だがその場で、春樹が静かに口を開いた。 そして明かされたのは、夫と愛人だけが隠していたはずの過去ではなかった。 二十三年前、赤ん坊だった春樹に何が起きたのか。血のつながりを超えて、最後に息子が選んだ“本当の母親”とは――。夫婦|親不孝|絶縁|親子関係2.3万字5 557 -
完結第11話
質屋で知った夫の嘘
離婚の日、元夫・慎介は私の手に結婚指輪を握らせ、冷たく言い放った。 「売って生活しろ」 その一言を憎みながら、私は3年間、貧しい暮らしの中でも指輪だけは手放せずにいた。けれど貯金が尽き、ついに古い質屋へ持ち込んだ日、店主は指輪の内側を見て顔色を変える。 「奥様、お待ちしておりました」 そこには、私の知らない小さな印が刻まれていた。 なぜ元夫は、離婚前にこの質屋を訪れていたのか。なぜ私を突き放しながら、指輪だけを持たせたのか。 憎しみ続けた別れの言葉の裏に、3年間隠されていた真実が少しずつ明らかになっていく――。夫婦|真実|第二の人生|金銭問題1.7万字5 336 -
完結第10話
鍵をかけられた妊婦
妊娠七か月の美緒は、漏水工事のため、夫の実家で三週間だけ暮らすことになった。 最初は親切だった義母。けれど数日後から、漬物店の手伝いは少しずつ増え、母子手帳や保険証まで勝手に管理されるようになる。 医師から無理な立ち仕事を避けるよう言われても、義母は「妊婦は病人じゃない」と聞き入れない。夫に訴えても返ってきたのは、「母さんは心配しているだけ」という言葉だった。 そしてある朝、美緒が家を出ようとすると、靴は消え、玄関には外から鍵が掛けられていた。 閉じ込められた家の中で、突然お腹に強い張りが走る。 その時、美緒はようやく気づく。守らなければならないのは、家族の顔色ではなく、自分とお腹の子の命だった――。嫁姑|真実|親子関係1.6万字5 1244 -
完結第14話
デブでダサいと捨てられた妻
「家で鏡くらい見ろよ」「太ってるし、服もダサい」。長年連れ添った夫から外見を馬鹿にされ、最後には別の女性を選ばれた妻は、何も言い返さず離婚届に判を押した。夫は、自分に捨てられた妻がこれからも地味で冴えない人生を送ると思っていた。しかし1年後、同窓会の会場で偶然再会した元妻を見た瞬間、その余裕は消える。髪型も服装も、立ち居振る舞いも以前とはまるで違う。だが、本当に夫を青ざめさせたのは“痩せて綺麗になったこと”ではなかった。離婚後の1年間で、彼女が取り戻していたものを知った時、元夫は初めて、自分が何を捨てたのか思い知らされる夫婦|熟年離婚2.0万字5 1216 -
完結第19話
「姉は他人」と治療費を拒んだ夫――姑の救急搬送で800万円を求められた私は、通帳を閉じた
48歳の佐藤由美は、病に倒れた実姉・直子の治療と生活のため、夫婦で貯めた口座から120万円を出そうとする。だが夫の浩司は「他人に使う金はない」と一蹴。さらに由美が通帳を確認すると、800万円のうち500万円が、見知らぬ不動産会社へ送金されていた。残る300万円を守った5日後、姑が救急搬送され、浩司は「あの貯金を使ってくれ」と泣きつく。由美が静かに拒むと、夫と姑は直子の家まで売らせようとするが、通帳、LINE、契約書、録音、そして5年前の領収書が、彼らの嘘を次々と暴いていく。夫婦|金銭問題2.4万字5 0 -
完結第16話
午前2時、義母に追いやられた離れ
水野由香は、脳梗塞で倒れた義父・正一を3年間支え、死後も遺品と会社書類の整理を続けていた。夫が出張へ出た夜、義母から庭の古い離れで寝るよう命じられる。午前2時、家政婦の富子が「今すぐ逃げて」と駆け込み、直後に3人の男が窓を破った。狙いは由香の実印と遺贈辞退書。逃走中に残した26秒の録音が義母の嘘を崩し、亡き義父の遺言から25%の株式と黒い手帳が現れる。そこには18件、合計3,240万円へ続く赤い線が残されていた――。夫婦|親子関係2.2万字5 24 -
完結第13話
旅行代を全額68万円出したのに現地で「年寄りはすぐ疲れて足手まとい」と別行動された
72歳の母は、息子夫婦に誘われ、2泊3日の箱根旅行へ出かけた。「たまには3人でゆっくりしよう。親孝行もしたい」。その言葉を信じ、宿泊費も食事代も送迎代も、68万円すべて母が支払った。ところが翌朝、嫁は「年寄りはすぐ疲れて足手まといになる」と言い、母だけをホテルに残して息子と観光へ出かけてしまう。息子も止めなかった。静かなロビーで1人になった母のスマートフォンに、家族LINEの通知が届く。そこには嫁から、「お金だけ出してくれれば、それでいいのよ。年寄りはホテルで留守番させておけばいいから」という、送る相手を間違えた一文が残されていた嫁姑|親子関係1.7万字5 1238 -
完結第11話
夫から届いた23年分の請求書
23年ぶりに働き始めた51歳の晴美は、初めての給料日を少し誇らしい気持ちで迎えていた。 しかし夫の隆司が食卓に並べたのは、祝福の言葉ではなく、12枚の「生活費精算案」だった。結婚してから自分が支払ってきた生活費の半額、合計1140万円を、これから返してほしいというのだ。 家事も育児も、義母の通院も、家族の予定管理も、すべて「養われていた時間」として扱われるのか。 納得できない晴美は、自分がこの家でしてきたことを記録し始める。すると押し入れの奥から、夫が密かに動かしていた800万円の明細が見つかった。 夫が本当に隠していたものは何だったのか。 そして、23年間の夫婦生活は「借金」だったのか。 一枚の請求書をきっかけに、家族の中で見えないまま積み重なっていた不公平が、静かに崩れ始める――。夫婦|第二の人生|金銭問題1.6万字5 431 -
完結第17話
果樹園の奥の家
夫・健太郎は、妻の栞が父から相続した長野の果樹園を任され、週5日を山で過ごしていた。ある日、「東京へ出荷に行く」と聞いていた栞は、昼食を届けようと果樹園へ向かう。ところが山の奥で見つけたのは、知らない平屋と2人の幼い子ども、そして健太郎を「パパ」と呼ぶ声だった。そこには、健太郎と6年間家族として暮らしてきたという女性までいた。さらに調べると、秘密の家や東京のマンションに使われた金は、栞自身が果樹園へ補填した1300万円と会社資金4700万円、合計6000万円と一致する。そして夫が栞と結婚した本当の理由まで明らかになる。「あなたは、健太郎の借金を返すために選ばれた人でしょう」――。夫婦2.5万字5 406