"「母さん、車に乗れないから来なくていい」――家族に捨てられた母と消えた1200万円" 第17話
1200万円が戻る
たちが帰った翌朝、桜産から予定されていた買主へ、田のマンションを売却しないという通が送られた。私が所者として同しておらず、委任状の署名も否認している以、118の契約をめる余はなかった。
午には、恵理が申し込もうとしていたタワーマンションの担当者からも、自己資を用できなければ申込みを受け付けられないという連絡が尚弥へ入ったらしい。販売価格7280万円、必な自己資は約2000万円。今のを売っても400万円に届かず、私の1860万円がなければ分を埋められない。
恵理から届いたメッセージは、謝罪ではなかった。
《お義母さんのせいで、全部駄目になりました》
私は返信せず、佐藤弁護士へ転送した。自分のを売らなかっただけで、なぜ誰かの計画を壊したことになるのか。以なら、その文だけで眠れなくなっただろう。けれど今は、誰の責任かを取り違えなかった。
回答期限の14、桜産は3度説を変えた。最初は宅取得支援の報酬、次は私からの贈与、最は尚弥への貸付を会社がに預かっただけだという主張だった。
しかし、業務委託契約も贈与契約も借用もない。方、私の側には、として渡した経緯を記した当の帳、1200万円の振込記録、宅購入に1円も使われていないことを示す精算、から作られた請求がある。
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さらに、43分18秒の録音には、尚弥が「半に返すと聞いていた」と話し、恵理が会社の支払に使ったと認めた声まで残っていた。
期限を過ぎても返還の申がなかったため、佐藤は準備していた続をめた。申てと同に必な資料を提し、私は求められた担保を用した。数、桜産が所する駅事務所を対象とした仮差押えの決定がた。
会社の営業がそので止まったわけではない。それでも、自社物件に処分の制限が付けば、売却もたな担保設定も難しくなる。が守ろうとしていた「30続く会社」という板に、1200万円の問題が初めて目に見える形で返ってきた。
決定が送達された翌、は佐藤の事務所へ話をかけてきた。
「族同士で、ここまでする必があるのか。仮差押えをしてくれれば、半分はすぐ用する」
佐藤は私に受話器を渡さず、希望する条件をへいて確認した。私は《1200万円全額》《支払期限7》《虚偽の請求を撤回》《マンションと介護に関する類を今切使用しない》の4点を伝えた。
「600万円で分でしょう。子さんだって、娘夫婦と5も同居して恩恵を受けたはずだ」
話から漏れたの声を聞き、私は5のをいした。振込用へ0を数えながらいた1200万円は、誰かの都で半分になるではない。
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「私が事をした5と、嘘をついて受け取った1200万円を相殺するつもりはありません」
私がそう伝えると、佐藤は同じ言葉をへ返した。
そのの夕方、尚弥からも話が入った。ると、最初に聞こえたのは謝罪ではなく、「義父さんの会社が本当に危ない」という訴えだった。
「母さん、俺からも頼む。600万円で終わりにできないか。残りは、これまで世話になった分だとってくれ」
「私が返還を求めないと言った620万円は、私ので族へ使った活費です。1200万円は、だと嘘をついて別の会社へ送らせたです。混ぜてはいけません」
尚弥はしばらく黙った、「そんなに俺たちが憎いのか」と呟いた。
「憎いからではありません。自分のものを自分のへ戻すだけです」
7目の午216分、佐藤の事務所で待っていると、私の座へ1200万円が振り込まれた。通帳に印字された数字を見ても、びは湧かなかった。5の信頼まで戻ったわけではないからだ。
それでも、失ったままにしなかったという事実は残る。
佐藤は入を確認し、の条件どおり仮差押えを取りげる続に入った。同に、偽造の疑いがある委任状と介護関係類については、返とは切りして警察への相談を継続した。を返せば、私を病に仕てた為まで消えるわけではない。
警察には、施設が保していた体験利用申込、役所の受付記録、青葉メンタルクリニックの回答も提した。窓で「娘です」と名乗った物の特徴と恵理の姿が致し、申込の連絡先には彼女の番号がかれている。が話した架空の診察内容も録音に残っていたため、、3はそれぞれ事を聞かれることになった。
まだ結論はていない。けれど、族のだけなら押し通せるとっていた嘘は、施設、医院、役所、、警察に同じ系列で残った。誰かひとりを言いくるめても、もう全部の記録をき換えることはできない。
事務所をると、の午の差しがの残る歩へ反射していた。私のスマートフォンには、尚弥からしいメッセージが届いていた。
《今度は俺ひとりで謝りにきたい》
私はすぐに許すとも、会わないとも返さなかった。
会うかどうかも、いつ会うかも、今度は私が決める番だった。
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