"「母さん、車に乗れないから来なくていい」――家族に捨てられた母と消えた1200万円" 第18話
50件の着信の最
尚弥と会ったのは、1200万円が戻ってから2週だった。自宅へは入れず、田駅くの喫茶を指定し、佐藤にもと所を伝えておいた。
午1、尚弥は約束より10分く現れた。価なコートは着ておらず、目のには濃い隈がある。私の向かいへ座ると、注文したコーヒーにも触れず、くをげた。
「母さん、本当に悪かった」
私は窓のをるバスへ度目を向けてから、尋ねた。
「何について謝っているの?」
尚弥は顔をげた。謝ればすぐ受け入れてもらえるとっていたのか、答えを準備していなかったらしい。
「全部だよ。義父さんの会社のことも、施設のことも……」
「“全部”では分かりません」
員がを置き、隣の席からスプーンの触れう音が聞こえた。尚弥は両で額を押さえ、しばらくしてから、途切れながらも具体に話し始めた。
5、1200万円を桜産へ回すとりながら、だと嘘をついたこと。半に返らなくても黙っていたこと。恵理が私を施設へ入れようとしているとりながら、反対しなかったこと。正10、に乗れると分かっていながら、恵理の嫌を優先して私を残したこと。そして田の部で、が私の類を奪おうとしてもかなかったこと。
「俺は、自分で悪いことを決めたつもりがなかった。
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いつも恵理か義父さんが言いしたことに、仕方ないって頷いただけだった。でも、そのたびに得をするのは俺たちで、傷つくのは母さんだった」
初めて、尚弥は誰かのせいにせず自分の沈黙を認めた。
「あの、に母さんを乗せなかったのも、恵理が嫌がったからだ。でも、荷物をどけなかったのは俺だ。施設の予定を共カレンダーに入れたのも、母さんの部を探すことに同したのも俺だった」
尚弥はそこまで言うと、両を膝へ置いた。私は慰めるためにを伸ばさなかった。謝罪するの苦しさまで、傷つけられた側が軽くしてやる必はないとった。
京のでは、追加カードの8万4000円と塾代5万円がなくなり、計をから見直したという。タワーマンションの申込みは断し、今のを売る話も止めた。恵理はのへ戻り、2は別居しているらしい。
朝も洗濯も弁当も、自分たちで分担しなければならない。尚弥は初めて、私が毎朝5に起きていた理由をったと言った。
「翔太にも美咲にも、母さんが勝にをたんじゃないと話した。俺たちがしたことも、隠さず説した」
私はそこだけは黙って聞いた。子どもたちに両親の罪悪を背負わせる必はないが、私だけを悪者にした嘘を残されるのも違う。
尚弥は鞄から封筒をした。
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には、ケアホームと役所へ提した訂正文の控え、私の部から持ちした類と写真の覧が入っていた。や私物は、希望する所へ業者を使って送るという。
「鍵は返した。施設も売却も、もう度と勝にめない。だから……いつか、また緒に暮らすことを考えてくれないか」
私は首を横に振った。
「謝罪は受け取ります。でも、京のへは戻りません」
尚弥の顔が曇ったが、私は言葉を続けた。
「許すことと、以の暮らしへ戻ることは別です。あなたが本当に変わるなら、私に世話をしてもらうためではなく、自分の庭で責任を果たしてください」
私は佐藤と作った確認事項のを渡した。私名義の座、印鑑、産、介護、医療について、尚弥たちが本の同なく問いわせや申込みをしないこと。私物を2週以内に覧どおり返すこと。違反があれば、族の話しいには戻さず記録を添えて対応すること。尚弥は最まで読み、付と自分の名をいた。
私は、子どもたちとは本たちが望めば会うこと、銭や産の相談は今も佐藤を通すこと、突然自宅へ来ないことを伝えた。尚弥は反論せず、1つずつメモにいた。
「分かった。守るよ」
席をつ、尚弥はポケットから梅柄のお玉袋を2つした。
「美咲から、今は見せるだけにして、自分で渡すから持って帰ってきてって言われてる」
封筒には、正10に私がいた翔太と美咲の名が残っている。の1万円を惜しいとはわなかった。ただ、捨てられずにいたさな気持ちが、今も続いていることが嬉しかった。
尚弥がをてから、私はめかけた茶をゆっくりんだ。スマートフォンには、あのから保したままの着信履歴がある。カードと実印を取り戻そうとした話を含め、50件を超える記録だった。
私は履歴を消さず、連絡先の表示だけを《尚弥》に戻した。《息子》という言で、何をされても許す必はない。それでも、責任を認めてやり直すまで閉ざすつもりもなかった。
その夜、翔太から初めてメッセージが届いた。
《ばあちゃん。肉を焼くのが遅いって言って、ごめん。おの話じゃなく、会って謝りたい》
続いて美咲から、《休みに2で田へってもいい?》と届いた。
私はカレンダーをき、誰かに決められた予定ではなく、自分で選んだに丸をつけた。
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