"裏口に回された仕立て屋" 第8話
半、理奈から佐子へ着の装が送られてきた。美の次のソロ発表用に、自分で縫った試作品だった。
《脇の縫い方だけ見てください。料を教えてください》
謝罪ではなかったが、初めて依頼の範囲と料を先に尋ねていた。佐子は通常の相談料を示し、作業へ持参するを決めた。
理奈が来ると、袖のがわずかに違い、裏が引きつっていた。佐子は黙って直さず、原因と修正方法をへいた。
「直してくれないんですか」
「相談の料です。直すなら別の作業になります」
理奈は唇を結んだが、追加料を払わず自分でやると決めた。かけて縫い直し、途で度糸をほどいた。
「着で、こんなにがかかるとわなかった」
「最初はかかるわ。私も何千着も失敗したから速くなったの」
理奈は、佐子の技術を性の器用さだとっていたと話した。佐子がで検品に落ち、料からやり直しを引かれた若い頃の話をすると、初めて黙って聞いた。
は仲直りしなかった。帰り際、理奈は美を連れて事をしようとも、を緒にしようとも言わなかった。ただ相談料を封筒で払い、領収を受け取った。
完成した装を見た美はんだ。し歪んだ飾りを指して「ここ、ママが作ったの」と友達へ話した。
佐子は直したくなったが、をさなかった。
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理奈が失敗しながら作った着は、佐子の完璧な着とは違う価値を持っていた。
拓也だけは、母と妻が仕事を通して話せたことを解だとい、「これでみたいに戻れるな」と言った。
佐子は否定した。「には戻らない。しい約束が守れただけ、次の話ができるのよ」
理奈は試作品を持ち帰った、週連絡しなかった。佐子はらせたかとったが、追いかけなかった。料を払い、必な助言を受けた取引は既に終わっている。
週目、美が完成装の写真を送ってきた。袖は揃い、裏の引きつれも減っていた。理奈からは《教わった方法で直しました》とだけ添えられていた。
佐子は《確認しました。台でいた、脇に負担がないか見てください》と返した。褒めすぎて距を縮めることも、過を理由に欠点だけ探すこともしなかった。
発表会当、理奈から予備の糸を持ってきてほしいと頼まれた。佐子は自分で準備するよう答え、必な品番を教えた。理奈は以ならたいとっただろうが、そのは芸で購入した。
さな自は、誰かが代わりに準備しないところから始まる。佐子もまた、役につことで族のに戻ろうとする癖を抑えた。
台、美は装のままで写真を撮りたいと言った。
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佐子は理奈の隣にったが、肩を寄せる演はしなかった。拓也が「もっとづいて」と言うと、美が「このままでいい」と答えた。
写真ので、のにはしずつ隙があった。それでも全員が同じ方向を見ていた。距がある写真を失敗だとわなくなったことも、族の変化だった。
、理奈は完成した装を自分のの試作品として掲載した。今回は美の顔をさず、本と拓也の同を取ったで、《デザイン・縫製/藤原理奈》《技術相談/つ針》と記載した。
佐子のところにも掲載確認のメールが届いた。文章には相談内容までかれていたため、ファスナーの構造に関する詳細は削除してほしいと伝えた。料を払ったからといって、助言のをすべて広告へ使えるわけではない。
理奈は度、《そこまで細かくしますか》と返したが、翌には修正版を送った。佐子は承認し、そのメールを案件フォルダへ保した。
なら、確認の往復をくさいとじただろう。今は、言葉をねるこそ相を勝に決めつけないために必だとえた。
理奈のはすぐにはかなかった。勤務先で、原価計算と返品処理を学び、商会の講座にも通った。補助へ再申請したは、佐子の発表会装を自分の制作実績からした。
審査では回の取りげ理由を聞かれた。理奈は族の協力範囲を曖昧にし、本同のない確認を提した経緯を説した。
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