"3人の息子は、夫の隠し子だった" 第8話
由は鞄から古いスマートフォンをした。には総郎、静子、医療法の担当者とのメッセージが残っていた。記録の偽装、会社からの送、私に署名させる類の準備。さらに総郎が、婚もの親権を確保し、創業の信託株式を管理する計画まで記されていた。
「なぜ今になって裏切るの」
「昨、総郎さんから連絡がありました。ちゃんを連れしたのは全部私の判断だったことにしろと。従わなければ、3とも施設へ入れて私を追いすと言われました」
由は自分を守りたいだけだった。それでも、彼女の証言と記録がであることに変わりはない。
「協力すれば許してもらえるとはわないで」
「分かっています」
「にしたことについても、責任を取ってもらう」
由は震えながらうなずいた。
面会が終わる、私はどうしても確認したいことを尋ねた。
「蓮たちは、私が実の母親ではないとっていたの?」
「蓮には2に話しました。自分は斎藤を継ぐ特別な子で、あなたは世話係にすぎないと。蒼太と陽斗には、まだはっきり話していません」
蓮の態度が急に変わった期と致していた。それまではがきかないことはあっても、眠るには私のを求めた。ところが7歳になった頃から私を名で呼び、使用のように命令し、にも「女は役にたない」
広告
と言うようになった。
「あの子を、どうしてそんなふうにしたの」
「私の息子を、あなたの子のままにしておきたくなかった」
「母親であることを取り戻すために、子供から優しさを奪ったのね」
由は顔を覆った。その涙が悔なのか、自分へのれみなのかは分からなかった。ただ、蓮の歪みがまれつきではなかったとれたことだけが、私にはわずかな救いだった。
資料の確認が終わるころ、田弁護士が1通のメールを見せた。総郎の会社で経理を担当していた元社員からだった。斎藤の医療法への自然な支払いを内部告発しようとして解雇され、証拠を保管しているという。
会社のは、の偽装だけに使われていたのではなかった。総郎は複数の関連会社を通じ、にわたって資産を私座へ移していた。
私たちの婚問題は、斎藤全体を揺るがす事件へ変わり始めていた。
証拠の理は田弁護士と専に任せ、私はの常を取り戻すことに集した。娘は連れられたあと、玄関のチャイムが鳴るだけで机のへ隠れるようになった。夜に目を覚まして「おばあちゃんが来る」と泣くこともあった。
児童理士は、怖かった記憶を無理に話させず、全な常を積みねることが切だと教えてくれた。
広告
私は毎朝同じに起き、緒に朝を作り、保育園までをつないで歩いた。帰宅は、今あった良いことをつずつ話した。
「今は、赤い葉っぱを見つけた」
「ママは、がただいまってきな声で言ってくれたのが嬉しかった」
さな来事を言葉にするたび、私たちの部にしい記憶が増えていった。
私は児童の仕事にも本格に取り組んだ。物語は、暗い森から逃げした鹿と母鹿が、太陽の見える丘へ向かう話だった。編集者は、母鹿がすぎず、迷いながらむところが良いと言ってくれた。
「守るだって、本当は怖いんですよね。その怖さが描かれているから、読者は信じられるんだといます」
完成した見きをに見せると、娘は鹿を指さした。
「この子、みたい」
「そうかな」
「でも、この子はもう泣いてないね」
私は返事の代わりに、を抱きしめた。
方、斎藤では混乱が広がっていた。由が敷をたあと、3の息子の世話をする者がいなくなった。使用は事を担当しても、子供たちの暴言や暴力までは受け入れなかった。庭教師も次々に辞め、学からは蓮と蒼太の問題について呼びしが続いた。
総郎からは何度も連絡が来た。
「蓮たちはおが育てた子だろう。しは責任をじないのか」
「私が育て方を違えた責任はじているわ。
でも、これから向きうべきなのは実の両親よ」
「由は母親失格だ。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
帰国した僕を待っていたボロ家
7年間、アメリカで必死に働き続けた木村健二。 妻と息子、そして母のために仕送りを続け、岐阜の実家も新しく建て替えた。帰国の日、健二は家族が立派な新居で自分を待っていると信じていた。 しかし、そこで彼を迎えたのは母と兄夫婦だけ。妻・早苗と息子・勇気の姿は、家のどこにもなかった。 不審に思った健二が辿り着いたのは、町外れの川沿いに建つ古びたプレハブ住宅。そこには、やつれた妻と、破れた問題集を大切に使う息子の姿があった。 自分が送った大金は、どこへ消えたのか。 なぜ妻子だけが新居から追い出されたのか。 7年間信じてきた“家族”の裏側で、健二の知らない嘘と沈黙が静かに積み重なっていた――。夫婦|真相|親子関係2.0万字5 45 -
完結第12話
私の名前を消した夫
東京国際リハビリテーション医療センターの着工記念式典当日、神崎しおりは会場入口で足を止められた。 招待者名簿から、彼女の名前だけが消されていたのだ。 3年間かけて基幹設計を作り、祖父から受け継いだ絵画を売って5億円まで投じたプロジェクト。その晴れ舞台に立っていたのは、夫・尚弥と、しおりのVIPバッジを胸につけた若い女性だった。 「肩書きを貸すだけだ」 そう言い放つ夫を前に、しおりは静かに会場を去る。 しかしその直後、彼女が一本の電話をかけた瞬間、巨大プロジェクトは音を立てて崩れ始める。 奪われた名前、盗まれた設計、消えた5億円。 すべてを踏みにじられた女が、自分の名で立ち上がる逆転劇――。人生逆転|夫婦|不倫1.7万字5 0 -
完結第11話
喪服妻を捨てた3日後
父の告別式を終えた直後、由美の前に夫・浩司が離婚届を置いた。 「会社に戻らない妻はいらない」 父の介護に半年を費やした由美を責める夫。その背後には、会社の若い広報主任・美穂の姿があった。由美は喪服のまま離婚届に判を押し、静かに夫のもとを去る。 しかし、亡くなる直前の父は、由美に一本の古い鍵を託していた。 葬儀が終わった後、父の作業場を開けた由美は、三つの灰色の容器と一枚の試験記録を見つける。そこに記されていたのは、夫の会社の主力商品に関わる、見過ごせない異変だった。 父が最後まで守ろうとしていたものは何だったのか。 そして3日後、浩司の会社では、主力商品の出荷が静かに止まり始める――。夫婦|裡の顔1.6万字5 67 -
完結第19話
「姉は他人」と治療費を拒んだ夫――姑の救急搬送で800万円を求められた私は、通帳を閉じた
48歳の佐藤由美は、病に倒れた実姉・直子の治療と生活のため、夫婦で貯めた口座から120万円を出そうとする。だが夫の浩司は「他人に使う金はない」と一蹴。さらに由美が通帳を確認すると、800万円のうち500万円が、見知らぬ不動産会社へ送金されていた。残る300万円を守った5日後、姑が救急搬送され、浩司は「あの貯金を使ってくれ」と泣きつく。由美が静かに拒むと、夫と姑は直子の家まで売らせようとするが、通帳、LINE、契約書、録音、そして5年前の領収書が、彼らの嘘を次々と暴いていく。夫婦|金銭問題2.4万字5 524 -
完結第11話
その家、私のです
離婚届を差し出した夜、夫は当然のように言った。 「この家には、俺と母さんが住む」 18年連れ添った妻・絵里に出て行けと言いながら、夫は家だけは手放さないつもりだった。義母もそれを当然のように受け入れ、絵里の荷物を勝手に片づけ始める。 けれど、その家は絵里が結婚前に買い、ローンを完済したものだった。 怒鳴ることも、泣きつくこともせず、絵里は静かに家を出る。そして弁護士に相談しながら、夫と義母に明渡しの準備を進めていく。 だが調停の中で、夫が家にこだわった本当の理由が少しずつ見え始める。 「母さんのため」という言葉の裏に隠されていた、もう一つの計画。 3か月後、絵里が送った一通の通知が、夫と義母の思い込みを崩していく――。因果応報|嫁姑|夫婦|熟年離婚1.6万字5 124 -
完結第19話
「母さん、車に乗れないから来なくていい」――家族に捨てられた母と消えた1200万円
正月10日、72歳の春子は息子一家と焼肉へ行くはずだった。ところが玄関で息子から「母さん、車に乗れないから来なくていい」と告げられる。5人乗りの車には、荷物をどかせば十分座れる場所があった。それでも春子は何も言わず、家族を見送る。直後、共有カレンダーに表示された翌日の予定を見て、表情が変わった。《母・施設送迎》《通帳と実印を確認。拒否したら部屋を探す》。さらに、本人の知らない老人ホームの資料、偽造された介護申請書、1860万円と査定された自分名義のマンションまで見つかる。春子は通帳、実印、権利証を鞄に詰め、その夜、新幹線の指定席12Aに座った。家族が母を“病人”に仕立てて財産を動かそうとしていた計画が、そこから崩れ始める。嫁姑|親子関係2.6万字5 770 -
完結第17話
7年間介護した私を捨てた夫――愛人を連れて帰宅すると、寝たきりの母も介護ベッドも消えていた
52歳の高瀬由美は、26年間連れ添った夫・健二から離婚を切り出される。愛人と再婚するという健二は、由美に「離婚後も母の介護は続けろ」と言い放った。半年だけという約束で始めた介護は、すでに7年。毎晩2時13分に起き、仕事も人生も手放した由美を、健二は無料の介護要員としか見ていなかった。だが、認知機能の明瞭な義母・住江は、自ら施設へ移ることを決断する。離婚から3日後、愛人を連れて帰宅した健二が見たのは、介護ベッドの消えた部屋と、約2200万円について記された母の手紙だった。嫁姑|夫婦|熟年離婚2.3万字5 1019 -
完結第16話
午前2時、義母に追いやられた離れ
水野由香は、脳梗塞で倒れた義父・正一を3年間支え、死後も遺品と会社書類の整理を続けていた。夫が出張へ出た夜、義母から庭の古い離れで寝るよう命じられる。午前2時、家政婦の富子が「今すぐ逃げて」と駆け込み、直後に3人の男が窓を破った。狙いは由香の実印と遺贈辞退書。逃走中に残した26秒の録音が義母の嘘を崩し、亡き義父の遺言から25%の株式と黒い手帳が現れる。そこには18件、合計3,240万円へ続く赤い線が残されていた――。夫婦|親子関係2.2万字5 588