"夫の実家は空き家だった" 第10話
健康診断でられたから」
義母はを押した。
義父も話で笑っていた。
「私は昔から今の母さんが好きなんだけどね」
裕介がその話を聞いて、複雑そうな顔をした。
「父さん、ぽっちゃりな母さんが好きだったのか……」
「何が問題なの?」
「いや、別に」
私は笑った。
裕介もようやく笑った。
両親の姿を恥ずかしがっていた頃の彼なら、聞けなかった言葉だとう。
それから半。
私は洗面所で、でさな検査薬を見つめていた。
何度見ても結果は変わらない。
妊娠していた。
しばらくけなかった。
嬉しい。
でも怖い。
そして真っ先に、裕介のことがに浮かんだ。
その夜、仕事から帰ってきた裕介へさな箱を渡した。
「何これ?」
「けて」
には、私が買ったさな赤ちゃん用の靴が入っている。
裕介は最初が分からない顔をした。
数秒。
私を見る。
靴を見る。
もう度私を見る。
「え?」
「うん」
「俺……」
声が震えた。
「パパになるの?」
私は頷いた。
裕介はしばらく何も言えず、やがて目に涙を浮かべた。
「触っていい?」
「まだ全然分からないとうよ」
それでも彼は私のお腹へそっとを当てた。
「嘘のない族にしたい」
私はその言葉を聞いて、し笑った。
「完璧な族じゃなくていいよ」
裕介が顔をげる。
「嘘をついたら謝る。違えたらやり直す。それでいいんじゃない?」
「うん」
「それに、子どもがどんな見た目でも絶対に誰かと比べないでね」
広告
裕介は真剣に頷いた。
「それは絶対にする」
「太ってても?」
「もちろん」
「私に似てすごい美でも?」
裕介が吹きした。
「自分で言う?」
「にられるから練習してる」
で笑った。
数、義両親へ報告すると、義母は話の向こうで泣いた。
「私、おばあちゃんになるのね」
義父はろから「今度こそ俺も痩せないとな」と言っている。
「どうしてお父さんが?」
「孫とるためだよ」
義母の笑い声が聞こえた。
以、裕介はこのを私に見せることができなかった。
今では毎週のように写真が送られてくる。
ウォーキング途の公園。
スーパーで買った野菜。
で入った定。
々、義父が撮った義母の変な寝顔まで送られてくる。
裕介はそれを見て普通に笑うようになった。
にも妊娠を伝えた。
「おお、筋肉夫の遺伝子が次世代へ」
「言い方」
「健康第でお願いします」
彼女はそう笑ったあと、し真面目な顔になった。
「ところで私のしいドラマ、見る?」
はついにゴールデン帯にいの連続ドラマを任されるようになっていた。
タイトルは『フェイスレス・ラブ』。
見に振り回されるたちを描いた群像劇だった。
「まさか私たちをモデルにしてないでしょうね」
「まさか。若菜ほど性格よくないし、旦ほど筋肉もない」
「そこ?」
ドラマは予以に評判になった。
登物たちは、容姿に自信があるもないも、それぞれ別の形で誰かの目を気にしていた。
広告
裕介と緒に最終回を見終えた夜、彼がぽつりと言った。
「昔だったら、こういうドラマ見られなかったかも」
「どうして?」
「自分のこと言われてる気がして」
「今は?」
「俺だけじゃないんだなってう」
私はその横顔を見た。
は変われる。
ただし、過を消すことで変わるのではない。
過も含めて自分だと認めることで、ようやくへめるのかもしれない。
ある休。
裕介が押し入れから、あの古いアルバムを持ってきた。
「これ、に置いていい?」
「もちろん」
以は隠したがっていた族写真。
今はリビングの棚のすぐに置かれている。
その隣には、私たちのフォトウェディングの写真がある。
やがてここに、子どもの写真も増えていくのだろう。
「若菜」
「何?」
「俺、髪増えてもしわだらけになっても、若菜のこと好きだとう」
「う、なの?」
「絶対好き」
慌てて言い直す。
私は笑った。
「私も、裕介が太りしてもすぐ婚したりしないよ」
「すぐって何だよ」
「健康診断次第」
裕介は困った顔をした。
その表が今ではおしい。
完璧ではない。
格好悪いところもある。
いところもある。
私にもある。
夫にもある。
たぶん、これからまれてくる子どもにもあるだろう。
それでいい。
私は昔、見だけで判断されることが嫌だった。
裕介は昔、見で傷つけられた自分を消そうとしていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
息子が遺した証拠
長野県松本市に暮らす70歳の元宮大工・柏木源一郎は、一人息子の健太を交通事故で亡くした。しかし、慎重だった息子が居眠り運転をしたという警察の説明に、どうしても納得できない。 そんな中、同居を始めた嫁の美咲が、毎週木曜の夜に化粧をして外出し、若い男の車に乗っているという噂を耳にする。さらに息子の勤務先から、500万円の見舞金と引き換えに不可解な合意書への署名を求められる。 嫁を信じたい源一郎は、ある夜、密かに後を追う。そこで目にしたのは、息子の死につながる恐ろしい事実だった――。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場2.3万字5 94 -
完結第10話
四年分の介護記録
四年間のシンガポール赴任を終え、出世を手に帰国した52歳の高橋健一。胸には、妻・由美に突きつけるための離婚届があった。 しかし帰宅した彼を待っていたのは、真っ白な髪と痩せ細った体に変わり果てた妻、そして半年前に亡くなった母の仏壇だった。 重度の認知症を患った義母を、たった一人で介護し続けた由美。夫が毎月送った30万円では到底足りず、彼女はすべてを犠牲にしていた。 そして由美が差し出した四年分の介護記録と、亡き母が残した最後の遺言が、健一の人生を大きく揺るがしていく。嫁姑|夫婦|親子関係|介護1.7万字5 326 -
完結第20話
葬儀3日後、姑に追放された私に亡き夫からの連絡
物流センターの事故で夫・直人を突然失った41歳の美和。しかし義母の数枝は、妻である美和に夫の顔を見ることすら許さず、葬儀を強引に取り仕切る。さらに葬儀の三日後、香典三百万円以上を独占し、13歳の娘・咲と美和を雨の夜に家から追い出してしまう。 絶望の中、親友に助けを求めた美和のスマートフォンに、午前四時、信じられないメッセージが届く。 「生きてる。母には言うな」 送信者は、火葬されたはずの夫だった。 閉ざされた棺の中にいたのは誰なのか。義母が隠そうとしたものとは――。夫の事故をめぐる疑惑と家族の裏切りを描く、衝撃の逆転サスペンス。因果応報|嫁姑|夫婦|親子関係|金銭問題2.3万字5 250 -
完結第16話
母の初盆を禁じた義父が、土地の名義を知った日
亡き母の初盆へ帰ろうとした由美は、義父から「籍を抜いて出ていけ」と言い渡される。結婚二十五年の夫・浩司も味方にはならず、由美は静かに家を出ることを決意した。 しかし、義父一家が暮らす家の土地は、十五年前に母が購入した由美名義のものだった。さらに夫が、その土地を無断で借金の担保にしようとしていたことが発覚する。 母の残した古い鍵と書類を手に、弁護士を訪ねた由美。やがて明らかになる夫の裏切りと、義父母が隠していた計画。二十五年間耐え続けた妻の、静かな人生逆転の物語。怒り|嫁姑|夫婦|修羅場2.3万字5 580 -
完結第12話
雨宮停留所の黄色い傘
私は六十二歳。幼いころから、ときどき人には見えない姿や声を感じることがある。 山梨の小さな町で叔母の家を片づけていたある雨の日、廃止された停留所の水たまりに、黄色い傘を差した少年が映った。 そこで出会った老女は、四十年近く前に失踪した息子を今も待ち続けているという。 「まだ帰れない」 少年が残した言葉を手がかりに調べ始めると、破り取られたバスの運行日誌、隠された手紙、そして家族が長年伏せてきた秘密が浮かび上がる。 あの少年は、いったい何を伝えようとしているのか。日常ホラー|ミステリー|真相|親子関係2.2万字5 139 -
完結第14話
「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知
高校三年生の高瀬優馬は、恋人・彩佳の受験勉強を支えるため、自分の研究や試験対策を後回しにしてきた。「どちらかが落ちても一緒に浪人しよう」――その約束を信じていた優馬だったが、合格発表の日、受かった彩佳は彼をあっさり突き放す。しかし優馬には、彼女に隠していた特別奨学生の選考通知があった。自分の未来を取り戻す決意をした優馬は、名門工科大学で研究の才能を開花させていく。やがて大学のコンテストで再会した二人を待っていたのは、残酷なほど鮮やかな立場の逆転だった。因果応報|人生逆転|修羅場2.3万字5 389 -
完結第13話
返せなかった六百二十円
昭和二年、金融恐慌に揺れる東京・神田。銀行員の徳田美佐は、取り付け騒ぎのさなか、印刷所を営む父が請求した預金六百二十円だけを、自分の判断で留めてしまう。 給金を払えなくなった父の工場では職人が去り、父娘の間にも深い溝が生まれる。さらに銀行は「いつでも全額払える」と記した宣伝紙を配り、美佐が認めていない報告書には「確認済」の印が押されていた。 自分の過ちと、銀行が隠そうとする事実。美佐は職を失う覚悟で真相に向き合うことになる。時代|歴史|昭和|親子関係2.8万字5 129