"消された合格通知" 第9話
「何が悪かったとう?」
昭は眉をひそめた。「謝っているだろう」
「俺を学へかせなかったことか、嘘をついたことか、も当然だとっていたことか」
「全部だ。これ以、どう言えばいい」
父は答えを急かした。謝罪を渡せば、息子は許しを返すべきだとっている。その考えはまだ変わっていなかった。
「今は許すと言えない。でも、謝ったことは聞いた」
昭は満そうにちがった。「たいになったな」と言い、杖を鳴らして帰った。
直は追わなかった。以なら、父をらせた罪悪で仕事を違えただろう。そのは予約表を確認し、いつもどおりを捏ねた。
術、拓から頼まれ、直は父の病院へ度だけ見いにった。洗濯や退院の事は、域の支援と配サービスを使うことになっていた。直が毎通う提にはしなかった。
父はベッドで「族なのにげさだ」と文句を言ったが、訪問リハビリを断れば自分が困ると分かり、最終には受け入れた。
退院の、昭は玄関の段差でを止めた。以なら子か直が腕をつかみ、父は礼も言わず体を預けただろう。今回は理学療法士に教わったとおり、すりを使って自分でがった。
「こんな物まで付けて、病扱いしやがって」と父は言った。
拓が「転んで俺にを休ませる方が困る」
広告
と返すと、昭は黙った。優しい言葉ではなかったが、弟も父の嫌より自分の活を優先していた。
直は蔵庫へ配サービスの予定表を貼り、緊急連絡先を確認した。昭は「の昼くらい作っていけ」と言ったが、直はパンとスープを分だけ置いた。
「から届く。は拓と相談して」
「昔のおなら、それくらい黙ってやった」
「昔の俺に戻すために、病気を使わないでくれ」
父はったが、直が帰ったあとに話はしてこなかった。翌、拓とで凍うどんをべたらしい。げさな解より、誰かの犠牲なしにが終わったことの方が、直にはきかった。
見いから週、父はリハビリ担当者に「息子はパンをしている」と話したという。どちらの息子かは言わなかったらしい。以なら、直は自分の名をしてほしいと願っただろう。今は、父の説のに居所を求める必がれていた。
昭から礼の連絡はなかった。ただ、配サービスを度も断らず、予定どおり通院した。父にとっては謝をにするより、の助けを受け入れる方が難しかったのかもしれない。直はそれを成と呼ばず、起きた事実として受け取った。
親を見捨てるか、全て背負うか。そのつしかないとわされてきた直は、必な続きを伝い、できないことは断った。
広告
境界線はたさではなく、関係を続けるための形だった。
歳の、榊はをに閉めるつもりだと従業員へ告げた。体力の問題であり、誰かに無理に継がせる気はないという。
「直君が買い取ってもいい。別のを始めてもいい。ここで働き続ける権利も、継ぐ義務もない」
直はすぐ決めなかった。売、設備の修繕費、自分の貯を理たちと確認した。にも相談し、事業計画は度き直した。
結局、直は《舟》をそのまま継がなかった。駅の再発で賃ががる見込みだったからだ。郊のの角を週借り、予約製造をにしたさな共同を、理と宋とちげた。
初度は黒字にならなかった。設備費を払うと、の収入は以より減った。型注文を受けすぎて徹夜し、翌から限を決めたこともある。直は経営者になれば自由になるのではなく、断る基準を自分たちで作る必があると学んだ。
業か目には、直自が父と同じ違いをしかけた。百貨の催事から注文が入り、断れば次はないとい、理と宋の休を変更しようとした。
「族のじゃないから、黙って従わなくていいんですよね」
宋にそう言われ、直は言葉を失った。自分では皆のために売を作るつもりだった。
しかし、目がを守ることなら個の予定を奪ってよいという考えは、昭と同じだった。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
現地払いの還暦旅行
旅行会社に勤める弘志は、義父の還暦祝いに伊豆の高級ホテルを手配する。ところが旅行当日、義父母と義姉、さらには妻の優希までが、駅で「お前はもう帰れ」と弘志を追い返した。 屈辱をこらえて帰宅した弘志のもとに、妻から不可解なメッセージが届く。一方、義家族はホテルで高級料理や酒、エステを次々と注文していた。 しかし彼らは、旅行のしおりに記された重要な支払い条件を見落としていた。チェックアウトの日、彼らを待ち受ける驚愕の請求と、妻が隠していた秘密とは――。人生逆転|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|絶縁|修羅場2.8万字5 703 -
完結第15話
義妹が奪った父のベンツ――事故の電話で義母が絶句
義母や義妹の身勝手な要求に耐えてきた由美。ある日、亡き父の形見であるベンツの鍵を義母に取り上げられ、義妹の美穂に渡されてしまう。車の位置情報を調べると、向かった先はレストランではなく港の倉庫街。無断で売却しようとしていることを知った由美は、弁護士とともに証拠を集め始める。ところが夫まで関与していたうえ、生命保険の受取人を変更しようとした疑いも浮上。そんな中、ベンツが事故を起こしたという電話が入る。義母が電話口で放った信じられない一言をきっかけに、家族が隠していた本当の思惑が明らかになっていく。兄弟姉妹|嫁姑|修羅場2.1万字5 16 -
完結第10話
四年分の介護記録
四年間のシンガポール赴任を終え、出世を手に帰国した52歳の高橋健一。胸には、妻・由美に突きつけるための離婚届があった。 しかし帰宅した彼を待っていたのは、真っ白な髪と痩せ細った体に変わり果てた妻、そして半年前に亡くなった母の仏壇だった。 重度の認知症を患った義母を、たった一人で介護し続けた由美。夫が毎月送った30万円では到底足りず、彼女はすべてを犠牲にしていた。 そして由美が差し出した四年分の介護記録と、亡き母が残した最後の遺言が、健一の人生を大きく揺るがしていく。嫁姑|夫婦|親子関係|介護1.7万字5 638 -
完結第20話
葬儀3日後、姑に追放された私に亡き夫からの連絡
物流センターの事故で夫・直人を突然失った41歳の美和。しかし義母の数枝は、妻である美和に夫の顔を見ることすら許さず、葬儀を強引に取り仕切る。さらに葬儀の三日後、香典三百万円以上を独占し、13歳の娘・咲と美和を雨の夜に家から追い出してしまう。 絶望の中、親友に助けを求めた美和のスマートフォンに、午前四時、信じられないメッセージが届く。 「生きてる。母には言うな」 送信者は、火葬されたはずの夫だった。 閉ざされた棺の中にいたのは誰なのか。義母が隠そうとしたものとは――。夫の事故をめぐる疑惑と家族の裏切りを描く、衝撃の逆転サスペンス。因果応報|嫁姑|夫婦|親子関係|金銭問題2.3万字5 452 -
完結第12話
雨宮停留所の黄色い傘
私は六十二歳。幼いころから、ときどき人には見えない姿や声を感じることがある。 山梨の小さな町で叔母の家を片づけていたある雨の日、廃止された停留所の水たまりに、黄色い傘を差した少年が映った。 そこで出会った老女は、四十年近く前に失踪した息子を今も待ち続けているという。 「まだ帰れない」 少年が残した言葉を手がかりに調べ始めると、破り取られたバスの運行日誌、隠された手紙、そして家族が長年伏せてきた秘密が浮かび上がる。 あの少年は、いったい何を伝えようとしているのか。日常ホラー|ミステリー|真相|親子関係2.2万字5 182 -
完結第13話
返せなかった六百二十円
昭和二年、金融恐慌に揺れる東京・神田。銀行員の徳田美佐は、取り付け騒ぎのさなか、印刷所を営む父が請求した預金六百二十円だけを、自分の判断で留めてしまう。 給金を払えなくなった父の工場では職人が去り、父娘の間にも深い溝が生まれる。さらに銀行は「いつでも全額払える」と記した宣伝紙を配り、美佐が認めていない報告書には「確認済」の印が押されていた。 自分の過ちと、銀行が隠そうとする事実。美佐は職を失う覚悟で真相に向き合うことになる。時代|歴史|昭和|親子関係2.8万字5 183 -
完結第10話
「バカ息子」と笑う義父母、旅行中に息子夫婦が消えた
結婚五年目の立花はる子と夫の琢磨は、念願の新居を手に入れた。しかし、何の相談もなく押しかけてきた義父母が居座り、生活費も払わず、家事をすべてはる子に押しつけるようになる。 ある日、買い物から帰った二人は、義父母が自分たちを嘲笑し、子どものことまで侮辱しているのを聞いてしまう。 長年、親の暴言に耐えてきた琢磨が、初めて口にした「もう限界だ」という言葉。 正面から逆らえない夫を守るため、はる子は義父母に三泊四日の温泉旅行を贈り、その留守中に密かな計画を実行する。何も知らず帰宅する義父母を待つ、予想外の光景とは――。人生逆転|嫁姑|親子関係1.7万字5 1476 -
完結第12話
母の葬儀写真に現れた女――銀の花に隠された秘密
幼いころから、人には見えないものが見える紀子。62歳になった彼女は、87歳の母を亡くした葬儀の日、誰も立っていなかったはずの場所に、黒い服の女が写っていることに気づく。女の胸には、銀色の花のブローチ。さらに母の遺品から、見知らぬ女性との古い写真と、秘密の子どもについて書かれた手紙が見つかった。生前、母が繰り返し呼んでいた「千恵子さん」とは誰なのか。そして、棺のそばで聞こえた「あの子はまだ生きてる」という声の意味とは。葬儀写真に残された不可解な影が、半世紀以上封じられてきた家族の秘密を呼び覚ます。日常ホラー|真相|親子関係2.2万字5 324 -
完結第20話
山奥の身代わり花嫁
29歳の水野美緒は、幼い頃から姉ばかりを優遇する両親のもとで、家事と仕事に追われる日々を送っていた。 ある日、姉が見合いの直前に逃げ出し、美緒はその身代わりとして山奥の男に嫁ぐよう命じられる。逆らえば家にも戻れない。古い鞄一つで送り出された美緒だったが、たどり着いた先は想像もしなかった大きな屋敷だった。 しかも門が開いた瞬間、使用人たちが深々と頭を下げ、「お帰りなさいませ、奥様」と迎えた。 まだ結婚の返事すらしていない美緒を、なぜ彼らは待っていたのか。そこには、家族が隠していた縁談の秘密があった。人生逆転|兄弟姉妹|第二の人生|親子関係2.8万字5 1255