"「籍を抜いてから行け」と言われた嫁" 第3話
「お母様からお話は伺っています」
話で野寺先は静かに言いました。
「の件だけではありません。実は、お母様がくなるし、もうつ気になる相談を受けていました」
「もうつ?」
「吉沢さん側が、を処分しようとしている能性がある、と」
私は言葉を失いました。
「でも、は母の名義だったんですよね」
「はい。ですから正規の続きなら、お母様本の確認が必でした。ただ……」
先はし言葉を選びました。
「お母様は、ある産会社から連絡を受けたそうです。『ご族を名乗るが売却の相談に来ている』と」
胸の奥に嫌な覚が広がりました。
母が入院していた頃。
子は何度か私に言っていました。
「お母さんの実印、あなたが預かってるの?」
当は相続の準備でも気にしているのかとい、く考えませんでした。
今なら。
あの質問のが違って見えます。
「会社名、分かりますか?」
私が尋ねると、野寺先は答えました。
「田産です。お母様とは昔からのりいだったそうです」
私は話を切ったあと、仏壇のへ戻りました。
すると遺品を入れていた箱のに、古い名刺があることをいしました。
田産。
裏面には母の字で、付とがかれていました。
818、午1。
母の初盆が終わった翌でした。
広告
まるで。
そこへくことまで。
母が決めていたようでした。
翌の午、私は田産を訪ねました。駅からしれた商の端にあるさなで、褪せた青い板と昔ながらのガラス扉が目印でした。の効いた内にはとインクの匂いが漂い、奥の机から髪交じりの男性がちがりました。
「里見さんですね。お待ちしていました」
田さんは母の名を聞くと、くをげました。
「本当に残でした。お母さんとは30以の付きいだったんです」
温かい麦茶をしてもらい、私は名刺を見せました。
「母の遺品からこれがてきました」
田さんは名刺を見て、しだけ目を伏せました。
「やっぱり、あなたに残していたんですね」
カウンター奥の棚から、冊のファイルが取りされました。
「お見せするに確認したいんですが、吉沢浩司さんとは、もう別居されているんですね」
名がた瞬、胸がざわつきました。
「はい。婚するつもりです」
「それなら、っておいた方がいいでしょう」
ファイルのには、の図、査定、相談記録のコピーが入っていました。付を見ると、母がくなる約3かです。
「その頃、吉沢子さんがここへ来ました」
田さんは話し始めました。
子は「親族が所しているを売却したい」と言い、と会社倉庫が建っているの査定を依頼したそうです。
広告
田さんは名義が母であることをっていたため本確認を求めましたが、子は「本は病気でけない」「娘夫婦に任せると言っている」と説しました。
「お母さんは認症で話も分からない状態だ、とまで言っていました。でも私は昔からお母さんをっていましたから、おかしいとったんです」
実際、母は病気ではありましたが、くなる直まで識は瞭でした。
田さんは枚のコピーを私のへ置きました。
《産売却に関する委任状》
そうかれていました。
委任者の欄には母の名がありました。
けれど。
私は目で分かりました。
母の字ではありません。
丸みがく、最の払いをきくねる癖。
20、買い物メモや町内会の類で何度も見てきた子の跡でした。
「これ……お義母さんがいたんですか」
声が震えました。
「私もそう考えています。ただ、正式な鑑定をしたわけではありませんから、現点では断定できません。問題はもうつあります」
田さんが次の用をしました。
の査定依頼でした。
所者本と連絡が取れないの窓として、別の名が記入されています。
《吉沢浩司》
夫の名でした。
「浩司さんも、ここへ?」
「はい。子さんと緒でした」
私はしばらく用から顔をげられませんでした。
今までの私は、浩司についてこう考えていました。
母親へ逆らえない。
自分が責められたくないから、妻が傷ついていても黙っている。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
「昔みたいに頼むよ」と元夫は言った
離婚から6年後、48歳の真紀は、介護付き有料老人ホーム《こもれび館》で、元夫・隆弘と元姑・澄江に再会した。 かつて澄江の介護を押しつけられ、仕事まで辞めた真紀。しかし離婚後に資格を取り、今では施設運営責任者として、職員の勤務や入居契約、事故対応を統括していた。 それでも2人は、真紀を見て「まだ老人の世話をしているの」と笑い、昔のように澄江の介護を任せようとする。真紀は身内だった立場を理由に入居判定から外れ、公平な手続きを進めようとした。 ところが提出された入居相談票には、真紀が知らないうちに、緊急時の《主介護者》として現在の携帯番号まで記されていた。 誰が、離婚後に変えた番号を調べ、本人の同意なく介護者に指定したのか。調査を進めるうち、元夫がこの施設を選んだ本当の理由と、澄江にも知らされていなかった計画が明らかになっていく――。嫁姑|夫婦|介護1.6万字5 72 -
完結第12話
離婚したら140万円の請求が来た
結婚して7年。待ち望んだ妊娠が分かったさやかは、夫の勇気へ知らせるため、体調の悪さをこらえながら豪華な夕食を用意した。 ところが、義姉から「夫のお金を浪費している」と責められても、勇気は妻をかばおうとしなかった。それどころか、さやかが「自分のお金で買った」と反論しただけで、彼はあっさり告げる。 「そんなことを言い続けるなら、離婚しよう」 さやかは離婚を承諾し、初めて妊娠を伝えたうえで、その日のうちに実家へ戻った。すると3日後、これまで彼女が負担してきた義姉の息子の塾代、約140万円の請求書が勇気のもとへ届く。 慌てて支払いを求める夫に、さやかは静かに告げた。「もう私とは関係ありません」。しかし彼らはまだ知らなかった。さやかが3年前から、義姉への送金記録と、家族の会話を記録した音声を残していたことを――。兄弟姉妹|絶縁|金銭問題1.7万字5 510 -
完結第11話
40組の布団と消えた保険料
妊娠8か月の奈緒は、夫の実家が営む温泉旅館で、義母から40組の布団を敷くよう命じられた。 「嫁に産休はない」と健診へ行くことさえ許されず、母子手帳まで取り上げられた奈緒は、26組目の布団を持ち上げた直後に出血し、病院へ運ばれる。 幸い赤ちゃんは無事だったが、夫は義母をかばい、「家族経営だから産休は取れない」と告げた。不安を覚えた奈緒が翌日、給与明細と自分の加入記録を照合すると、毎月天引きされていたはずの社会保険料が、どこにも納められていないことが分かる。 さらに共同口座には、奈緒の給与の一部が毎月、旅館へ送り返されていた記録まで残されていた。 4年間、家族のためだと信じて働いてきた奈緒の給料は、いったい誰が、何のために動かしていたのか。存在しない保険料をきっかけに、義母だけでなく夫も隠していた旅館の金の流れが明らかになっていく――。嫁姑|裡の顔|修羅場1.6万字5 707 -
完結第11話
姑が剥がした私の名前
小さな菓子工房《灯菓》を営む私は、町内会の敬老会に出す96個のプリンを正式な注文として受けた。 しかし当日の朝、冷蔵庫の中からプリンがすべて消えていた。持ち出したのは義母・富美子。しかも彼女は私の店名と表示ラベルを剥がし、自分の名前を貼って「会長手作り」として配ろうとしていた。 保管温度も、消費期限も、誰が責任を持つのかも曖昧なまま、プリンは高齢者たちの前に並べられる。私は必死に止めようとするが、夫は「母さんを悪者にするな」と私の腕をつかんだ。 その夜、敬老会の参加者が体調不良で搬送される。 原因は本当に私のプリンだったのか。義母は何を隠し、夫はどこまで関わっていたのか。 一枚の貼り替えられたラベルをきっかけに、嫁の仕事を“暇つぶし”と笑ってきた家族の本音が、静かに暴かれていく――。嫁姑|親子関係|修羅場1.6万字5 840 -
完結第11話
離婚後、義母のカードを止めました
離婚成立から3日後の午前2時。涼子のもとへ、ハワイ旅行中の元姑・和子から怒りの電話がかかってきた。 「このクソ女! なんで私のカードが使えなくなってるの!」 和子が使っていたのは、涼子名義の家族カードだった。離婚後に解約したと伝え、「すみません、どちら様ですか?」と返した涼子に、和子は“エリート社員の息子”を捨てたことを後悔すると言い放つ。 だが元夫・健一は、3年前に一流企業を懲戒解雇されていた。その事実を隠したまま毎朝スーツで家を出て、借金を重ねながら母親への仕送りと豪華な旅行を続けていたのだ。 さらに涼子が見つけた600万円の保証契約には、何も知らない和子の名前と実印が使われていた。そして元夫が会社を追われた本当の理由を示す資料には、借金だけでは済まない不正の痕跡が残されていた――。嫁姑|第二の人生|絶縁1.6万字5 26 -
完結第11話
夫の実家は空き家だった
結婚して半年。32歳の若菜は、穏やかで誠実な夫・裕介と、静かな新婚生活を送っていた。 裕介の両親は長く海外で暮らしており、日本へ戻ったばかりだと聞かされていた。正月、仕事になった夫の代わりにお年賀を届けようと、若菜は以前教えられた義実家を一人で訪ねる。 しかし、家は人が暮らしているとは思えないほど荒れていた。隣人へ尋ねると、返ってきたのは信じられない言葉だった。 「そこは5年前から空き家ですよ」 混乱した若菜が住所を尋ねても、裕介は決して教えようとせず、贈り物の蟹も自分で届けると言い張った。ところが数日後、見知らぬ男女が突然マンションを訪れ、若菜へ笑顔で告げる。 「この前は高級な蟹、ありがとうね」 5年前から誰も住んでいない「夫の実家」と、若菜の名前を知る謎の男女。裕介はなぜ家族の存在を隠し、他人の家を自分の実家だと偽ったのか――。嫁姑|親子関係|修羅場1.6万字5 621 -
完結第10話
ソファの下のピンクのスマホ
息子の家へ掃除を手伝いに行った58歳の幸子は、ソファの下から見覚えのないピンク色のスマートフォンを見つける。 画面に映っていたのは、息子の妻・優奈と、知らない男が寄り添う写真だった。 最初はただの不倫だと思った。けれど端末の中には、「愛しい人」という名前の相手とのやり取り、500万円の振込記録、そして息子夫婦の家を売る計画まで残されていた。 さらに、金の行き先には優奈の弟・翔太の名前があった。 息子の雄大は何も知らないはずだった。だが幸子が問いかけた時、彼は明らかに嘘をつく。 嫁の裏切り、弟への巨額送金、謎の男、そして息子が隠していた本当の理由。 ソファの下に隠されていた一台のスマホが、家族の平穏を少しずつ崩していく――。裡切られた|嫁姑|真実1.5万字5 838 -
完結第11話
裏口に回された仕立て屋
孫の発表会の日、68歳の佐和子は嫁から「業者は裏口から入ってください」と告げられる。 舞台に立つ47人の子どもたちが着る衣装は、すべて佐和子が三か月かけて縫い上げたものだった。材料費も立て替え、客席にも座れず、舞台裏で補修を続けた佐和子。 しかし終演後、保護者たちの会話から、嫁が衣装代として大金を集めていたことを知る。 さらに衣装箱には見知らぬ店名のシールが貼られ、ネットには佐和子の作業場が“嫁の実績”として掲載されていた。 家族のため、孫のため。そう思って飲み込んできた佐和子だったが、ある書類に自分の名前が勝手に使われていることを知った瞬間、静かに立ち上がる。 奪われたのは、お金だけではなかった。 名前も、時間も、技術も――。 佐和子は、自分の仕事を取り戻すため、初めて家族に「無償ではない」と告げる。嫁姑|親不孝|真相1.6万字5 814 -
完結第11話
その家、私のです
離婚届を差し出した夜、夫は当然のように言った。 「この家には、俺と母さんが住む」 18年連れ添った妻・絵里に出て行けと言いながら、夫は家だけは手放さないつもりだった。義母もそれを当然のように受け入れ、絵里の荷物を勝手に片づけ始める。 けれど、その家は絵里が結婚前に買い、ローンを完済したものだった。 怒鳴ることも、泣きつくこともせず、絵里は静かに家を出る。そして弁護士に相談しながら、夫と義母に明渡しの準備を進めていく。 だが調停の中で、夫が家にこだわった本当の理由が少しずつ見え始める。 「母さんのため」という言葉の裏に隠されていた、もう一つの計画。 3か月後、絵里が送った一通の通知が、夫と義母の思い込みを崩していく――。因果応報|嫁姑|夫婦|熟年離婚1.6万字5 4259