みかん小説
本棚

"離婚後、義母のカードを止めました" 第10話

「本が責任を取るしかありません」

子はしばらく俯いていた。

そして突然、昔の調子を取り戻すように顔をげた。

「でも、あなたにも責任はあるでしょう」

私は何も言わなかった。

「妻なら夫がおかしくなるに気づくべきだったのよ。あなたがちゃんと支えていれば、健だってこんなことには――」

まで聞く必はなかった。

「お帰りください」

「ちょっと!」

「これ以続けるなら警察を呼びます」

「実の母親みたいにってくれてたんじゃないの?」

私はその言葉に、しだけ胸が痛んだ。

確かに最初の頃は、そうおうとしていた。

父母とは違うけれど、結婚すればもう族が増えるのだと期待していた。

っていましたよ」

私は答えた。

子の顔に瞬、堵が浮かんだ。

「最初は」

その表が消えた。

「でも、族って何をしても許されるのことじゃないでしょう」

子は黙った。

「おを使わせても、侮辱しても、相してくれる関係を族とは呼びません」

私は通話終ボタンへ指を伸ばした。

「さようなら、子さん」

「待って!」

の声を聞きながら、画面を消した。

議なことに、勝ったという気持ちはなかった。

ただ、終わったとった。

5、私は何度も子を言い負かす面を像した。

もっと酷い言葉を返してやりたいとった夜もあった。

広告

けれど本当に欲しかったのは、相が泣く姿ではなかった。

もうこのたちの言葉で、自分の価値が揺れないこと。

それだけだった。

央商事の正事件について、会社から正式な発表がわれた。

島元常務は複数の架空取引への関与を認め、健も資正に流用した疑いで捜査対象となった。詳しい処分について私がではなかったが、なくとも「優秀なエリート社員だったのに妻に追いされた」という子の物語だけは、もうどこにもしなかった。

保証契約については、子本跡ではないことや契約の状況が調べられ、彼女自も事聴取へ協力していた。すべての借を背負わされたわけではないものの、健を頼り、自分の貯をほとんど残していなかったため、活はきく変わったと聞いた。

私は、それ以調べなかった。

る必がないとったからだ。

方、私はマンションを売ることにした。

と暮らした所だから嫌だったのではない。

あの部にいる自分が、もう昔の自分ではなくなったからだった。

さな賃貸へ移り、仕事を別に借りた。

《佐藤涼子公認会計士事務所》

旧姓へ戻した名が入った真しいプレートを、私は何度も眺めた。

したといっても、突然成功したわけではない。

広告

からの取引先へ挨拶し、社ずつ契約を取り直し、報告を作り、請求を送り、毎の売憂する活だった。

けれど、自分で決めた仕事だった。

まで働くがあっても、「事がおろそかだ」と責めるはいない。

忙しいは夕にコンビニのおにぎりをべてもいい。

の朝に10まで寝てもいい。

そんな当たりのことが、最初の数かは驚くほど嬉しかった。

あるの午、父から話が来た。

「涼子、今終わったよ」

「病院?」

「ああ。先が、臓の状態はかなり落ち着いてるって」

私は子の背もたれへ体を預けた。

「良かった」

父は数から臓の治療を続けていた。私が卒業すぐ働き始めた理由も、最初にきく体調を崩した父を助けるためだった。

「あのは悪かったな」

突然、父が言った。

「何が?」

学、きたかっただろ」

私は窓のを見た。

の空がく、くにが流れている。

「もういいよ」

「でも――」

「本当にいいの」

私は笑った。

かなかったから今がある、なんて綺麗なことを言うつもりはないよ。きたかったし、悔しかった期もあった」

父は黙って聞いていた。

「でも、それと私の価値は別だから」

にした瞬、自分自へ言っていることに気づいた。

学へった健

卒の私。

その違いにを持たせ続けていたのは、子や健だけではなかった。

私自もどこかで、「学歴がないから証しなければ」とい続けていたのだ。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: