"開けなかった手紙" 第10話
元島民の息子や孫だった。
「さんじゃないか」
1の老が声をかけてきた。
「郵便、持ってきたか?」
「もう退職した」
「じゃあ今は何しに来た」
「おらがちゃんときとるか確認しに来た」
笑いが起きた。
920分。
が岸をれた。
正吉は甲板の端にった。
の匂いは何も変わっていない。
波の音も。
がく引いていく航跡も。
くに浮かぶ波島の形も、昔のままだった。
けれど島へづくにつれ、変わってしまったものが見えてきた。
港くのの根は部が傷み、雑貨の板はほとんど文字が読めなくなっていた。
斜面の畑には背のいがえている。
が歩かなくなった細いには、両側からがせりしていた。
が桟へ着いた。
誰も迎えに来なかった。
それが当たりなのに、正吉は瞬だけを澄ませた。
以なら、
「さん、今は何かあるか」
そんな声がどこかからんできた。
聞を待つ老。
都会へた子どもの葉を楽しみにする老婆。
包が来れば、何が入っているのか正吉にまで説する者もいた。
もう誰もいない。
元島民たちはそれぞれ墓や昔のへ向かった。
正吉は良平と緒に坂をった。
「自転なくてよかったですね」
良平が言った。
「今この坂を自転押してれと言われたら、仕事に復帰するに辞める」
「は毎やってたじゃないですか」
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「若かったからな」
「53歳だったでしょう」
「今よりは若い」
2は笑いながら歩いた。
やがて閉した学が見えてきた。
舎はまだ残っていた。
窓ガラスが何枚か割れ、庭には腰のさまでが伸びている。
鉄棒は赤く錆びていた。
正吉はのでを止めた。
運会のには、この所に島のが集まったと聞いている。
正吉自も若い頃、配達の途に覗いたことがあった。
子どもたちがり、母親たちが弁当を広げ、男たちは昼から酒をんでいた。
あの頃は、ここからがいなくなるが来るなど誰も考えていなかっただろう。
その、ろから子どもの声がした。
「ここ、本当に学だったの?」
10歳くらいの男の子だった。
隣にいた母親が答えた。
「お母さんがさい頃は、まだ学だったのよ」
「何いたの?」
「私の学は4」
男の子が目を丸くした。
「4しかいなかったの?」
母親は笑った。
「それでも運会はやったの」
「誰と?」
「島のみんなと」
正吉は2の会話を聞きながら、源次郎のへ向かった。
島で番い所。
坂は昔よりも歩きにくくなっていた。
両脇からが伸び、段の部には苔がついている。
ようやくのまで来ると、正吉はち止まった。
瓦根はまだ崩れていなかった。
玄関もある。
源次郎が毎週、正吉からを受け取っていた所だった。
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軒には古い郵便受けが残っていた。
赤茶け、蓋の端に錆が浮いている。
良平が指で軽く叩いた。
「まだありますね」
「ああ」
「もう何も入らないけど」
正吉は郵便受けの蓋をけた。
当然、は空だった。
だが目を閉じると、いくらでもいせた。
阪からの封筒。
尼崎からの封筒。
堺からの封筒。
そして源次郎のい返事。
「阪からだ」
「分かっとる」
「今は堺」
「そこ置いといてくれ」
何回も繰り返した会話だった。
そのつつが、当は特別なことだとはわなかった。
正吉は蓋を閉めた。
「源さん、元気ですかね」
良平が言った。
「元気だろ」
「どうして分かるんです?」
「忙しいらしいからな」
正吉は笑った。
源次郎から届いたには、そのもう1通だけ続きがあった。
退職祝いとして送られてきたものだった。
そこには、孫が学になったことがかれていた。
《最は学へ送らなくてよくなりました。》
正吉はそれを読んだ、し配になった。
源次郎から「の用事」が1つ減ったからだ。
だが次のには、
《その代わり、朝から犬の散歩をさせられています。》
とかれていた。
娘ので犬を飼い始めたらしい。
《散歩から戻ると、娘が買い物へけと言います。》
《孫は野球を始めたので、曜も試を見に連れていかれます。》
そして最には、
《島より暇になるとっていましたが、どうも話が違いました。
》
そういてあった。
正吉はそのも、最初の1通と緒に引きしへしまっている。
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