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開けなかった手紙

開けなかった手紙

潮風とうたた寢 完結 28

昭和49年、過疎化が進む瀬戸内海の白波島。住民がわずか10世帯になっても、郵便配達員の木村正吉は毎朝、渡し船に乗って島へ通い続けていた。 島の高台に一人で暮らす大崎源次郎には、離れて暮らす三人の子どもから毎週必ず手紙が届く。ところが正吉が偶然目にしたのは、封も切られないまま何十通も積み上げられた手紙だった。 「読まないなら、なぜ受け取るんだ」 問い詰められた源次郎は、ようやく秘密を明かす。一通を明日へ残しておけば、明日起きる理由になる――手紙は孤独な老人が自分のために用意した「明日の予定」だった。 やがて島への毎日の定期便が廃止され、源次郎も娘の暮らす堺へ移ることを決める。最後の船が出る直前、正吉は娘から届いた一通の手紙を手渡した。 いつもなら明日まで開けないはずの源次郎が、その場で封を切った。そこには「今度からは手紙を書きません」と記されていた――もう手紙を残さなくても、明日になれば同じ家で話せるから。

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