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完結第10話
帰った家に、知らない親子がいた
昭和19年、東京・深川に暮らす11歳の佐野正一は、母に見送られて長野の寺へ集団疎開する。 「戦争が終わったら、またここへ帰ってくるんだから」 その言葉を信じ、正一は疎開先で家族からの便りを待ち続けた。けれど昭和20年3月、東京を襲った大空襲のあと、母からの葉書は一枚も届かなくなる。 終戦後、ようやく深川へ戻った正一を待っていたのは、見覚えのある町ではなかった。焼け跡、消えた目印、変わり果てた道。そして、かつて自分の家があった場所には、見知らぬ母娘が暮らす粗末な小屋が建っていた。 「ここ、僕の家です」 そう訴える正一に、女は一つの焦げた表札を差し出す。そこには、確かに「佐野」と書かれていた。 なぜこの女は、佐野家の表札を持っていたのか。 正一の母は、あの夜、何を託したのか。 これは、戦争で家も家族も失った少年が、“本当に帰る場所”の意味を知っていく物語。時代|昭和1.5万字5 0 -
完結第11話
姉の代わりに嫁いだ私
大正14年、京都の呉服商「松木屋」で、18歳の志津は父から残酷な命を受ける。 亡くなった姉・千代の代わりに、姉の婚約者だった宗一郎と結婚しろ――。 姉の葬儀からまだ12日。悲しみも癒えないまま、志津は家の借金と跡取り問題のために、自分の人生を差し出されることになる。 望まれない祝言、姉と比べられる日々、傾きかけた店。そして、夫となった宗一郎もまた、家のために夢を諦めた人だった。 やがて志津は、亡き姉が隠していた一通の手紙を見つける。 そこに書かれていたのは、姉が最後まで抱えていた本音と、志津の人生を大きく変える言葉だった。 「姉の代わり」として嫁いだ娘が、時代と家に縛られながらも、自分の生き方を選び直していく物語。時代|歴史1.6万字5 0 -
完結第11話
2本のさつま芋
「母ちゃんが、闇米を買っています」 昭和24年、14歳の正夫は、自分の母を交番へ突き出した。 父を戦争で亡くし、幼い弟妹を抱えながら必死に働く母。けれど正夫は、学校で教えられた「闇取引は悪いこと」という言葉を信じていた。 翌日、警察が家に来た。米袋を調べられ、母は事情を聞かれることになる。玄関で泣きじゃくる妹。母の袖をつかむ幼い弟。そして、最後に正夫を見つめた母は、怒鳴ることも責めることもなく、ただ一言だけ残した。 「弟たちを頼むね」 その夜、台所には食べ物がほとんど残っていなかった。 正しいことをしたはずなのに、なぜ家族は泣いているのか。 空腹の夜を越えた正夫は、初めて気づくことになる。 自分が守った「正しさ」は、誰を救い、誰を傷つけたのか――。時代|昭和1.7万字5 0
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