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"母が守った「4人目」" 第1話

23京の町には、まだ戦争の跡が常のに残っていた。焼け落ちたの跡には板とトタンで作ったさなが並び、が吹けば、壁の隙から砂埃と気が入り込んだ。終戦から3が過ぎ、しずつ戻り始めていたが、卓のだけを見れば、平という言葉はまだいものだった。

佐藤富美は、そのも古びた布袋を抱え、町内の配所へ向かった。42歳になった富美は、昭20の空襲で夫をくしてから、14歳の昭夫、10歳の幸子、6歳の俊夫をで育てている。昼は縫製で働き、夜は所から頼まれた繕い物をし、針を持ったまま眠ってしまうことも珍しくなかった。

所のには、朝からい列ができていた。

誰も余計な話はしなかった。がどれだけ受け取ったのか、自分のより数がいのかないのか、そんなことだけを黙って見ている。べ物が分でない代には、よそのの茶碗杯まで気になってしまうのだった。

やがて富美の番になった。

係員のは、配台帳をくと、いつものところでを止めた。

「佐藤さん」

その呼び方だけで、富美には何を言われるのか分かっていた。

男の正さんですが、今回も数に入っていますね」

「はい」

民確認では、現この所にはおられないことになっています。

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20から消息が分からないんですよね」

富美はし背筋を伸ばした。

「正もおりますから」

ろの列で、誰かがさく息を吐いた。

は困ったように眉をげた。

「お気持ちは分かります。ただ、もう3です。本がここで活していない以、このままずっと世帯数に入れておくのは……」

「帰ってきます」

「佐藤さん」

「帰ってきますから」

富美は声を荒らげなかった。ただ、いつものようにの目を見てそう答えた。

ろから女の声がした。

「ずるいわね」

富美は振り向かなかった。

「うちだってべ盛りがいるのよ。いないの分まで受け取っていいなら、みんなそうするわ」

別の女も声で応じた。

「まだ見つかってないってだけでしょう。3も帰ってこないなら……」

までは言わなかった。

それでも分に伝わった。

富美は配された米と雑穀を袋に入れ、何も言わずに配所をた。ると、曇りの空から細かなが落ち始めていたが、傘を差すほどではなかった。

そのの夕方、昭夫が学から帰ってくるなり、乱暴に戸を閉めた。

「兄ちゃんはんでない!」

まで聞こえそうな声だった。

台所にいた富美が振り返った。

「どうしたの」

「何でもない」

昭夫は鞄を畳へ投げた。頬の横が赤くなり、制の襟がし伸びている。

富美は理由を察したが、すぐには聞かなかった。

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幸子が声で言った。

「昭夫兄ちゃん、今で喧嘩したんだって」

「幸子!」

昭夫が睨むと、妹は黙った。

富美は芋を洗いながら尋ねた。

「何て言われたの」

昭夫はしばらく答えなかった。

やがて畳へ座り込み、い声で言った。

「うち、んだ兄ちゃんの分まで米もらってるって」

包丁を持つ富美のが、瞬だけ止まった。

「それで殴ったの?」

「向こうが先に言ったんだ」

「言われたからって、殴っていいことにはならないよ」

「じゃあ、何て言えばいいんだよ!」

昭夫が顔をげた。

「兄ちゃんはきてるって言えばいいのか? んでるって言えばいいのか? 母ちゃんだって分からないんだろ!」

富美は何も答えなかった。

が消えたのは3だった。

203の空襲の夜、族は燃え広がる町を逃げていた。富美はまだ3歳だった俊夫を抱き、幸子のをつかみ、昭夫をへ押しながら防空壕へ向かった。

は父親と緒だった。

の波に押され、り、振り返ったにはの姿が見えなくなっていた。

夫の消息は数に分かった。

だけが、どこにもいなかった。

病院。

寺。

役所。

警察。

富美は歩ける所を全部歩いた。

負傷者が運ばれたという話を聞けば見にき、元の分からない子どもがいると聞けば仕事を休んだ。復員者や引揚者が駅へ着くという話を聞けば、正がいるはずもない齢だと分かっていても、混みのへ探しにった。

最初のは昭夫も兄が帰ってくると信じていた。

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