"母が守った「4人目」" 第2話
目も待った。
目になると、信じるということがし苦しくなった。
正の布団はもうない。も残っていたものは俊夫のために仕て直された。卓に並ぶ茶碗も4つだけになっている。
なのに配所では、母は今も言う。
「うちは子どもが4です」
その夜、昭夫はい噌汁をすすりながら、母の袋を見ていた。
今もまた、4分として受け取った糧がそこに入っている。
初めて昭夫は、その袋を見て恥ずかしいとった。
そして、そんなふうにってしまった自分にも腹がった。
数もしないうちに、配所での話は町内へ広まった。
富美が通ると話をやめるがいた。共同井戸でを汲んでいれば、しれたところから線をじた。それまで「変ね」「女つで偉いね」と声をかけていたまで、糧のことになると態度が変わった。
当は誰のにも余裕がなかった。
昨まで親切だったが、の米をにすれば疑いくなる。それを責められるほど、富美のにも余裕はなかった。
ある夕方、幸子が泣きながら帰ってきた。
「どうしたの」
富美が聞いても、幸子は首を振るばかりだった。
代わりに緒に帰ってきた所の女が教えた。
「幸ちゃん、棒のの子って言われたの」
昭夫がちがった。
「誰に言われた?」
「昭夫兄ちゃん、いい!」
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幸子が慌てて袖をつかんだ。
「また喧嘩するから、かないで」
昭夫は拳を握ったままかなかった。
富美は女へ礼を言い、幸子をへ入れた。泣いている娘の頬を濡れた拭いで拭きながら、「ごめんね」とだけ言った。
その言葉を聞いた昭夫の胸に、また苛ちが湧いた。
母は誰にも説しようとしない。
正の分をどうして受け取り続けるのか。
それを話せば済むのではないか。
ところが、昭夫自も理由をらなかった。
ある晩、俊夫と幸子が寝たあと、昭夫は台所にいる母のところへった。富美はさな芋をく切り、を張った鍋へ落としていた。
「母ちゃん」
「何?」
「兄ちゃんの分、本当に貰ってるの?」
包丁の音が止まった。
「そうだよ」
「何で?」
富美は再び芋を切り始めた。
「帰ってくるから」
昭夫は奥歯を噛んだ。
「いつだよ」
返事はなかった。
「もう3だぞ」
「分かってるよ」
「分かってないだろ!」
昭夫の声に、隣の部で幸子が寝返りを打つ音がした。は瞬黙った。
昭夫はし声を落とした。
「みんな言ってる。いないの分まで貰うのはずるいって」
富美は鍋のを見つめていた。
「が何を言ってもいい」
「よくないよ。俺まで棒みたいに言われるんだぞ。幸子だって今泣いて帰ってきた」
母のが止まった。
しばらくして富美は言った。
「ごめんね」
それだけだった。
昭夫は、かえって腹がった。
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「謝るくらいならやめろよ!」
「それはできない」
「どうして!」
富美はく黙った。
それから、さな声で答えた。
「正が帰ってきたに困るから」
「何に困るんだよ」
「……困るんだよ」
昭夫にはが分からなかった。
正が帰ってくることと、今、配を受け取ることがどうつながるのか。
「帰ってきたら、そのに役所へ言えばいいじゃないか」
「そういうことじゃない」
「じゃあ何なんだよ!」
富美は答えなかった。
それから数、配所のが佐藤を訪ねてきた。
玄関先で子を取り、申し訳なさそうに富美へ話した。
「正さんの件ですが、正式に世帯数を確認することになりました」
富美はをげた。
「もうし待っていただけませんか」
「私も、佐藤さんがい探してこられたのはっています。ただ、糧事がこういう状態ですから、皆さん同じ基準でお願いしないといけないんです」
「はい」
「現ここに暮らしていない方を、ずっと配対象にしておくわけにはいきません」
の言葉は正しかった。
誰も富美をいじめようとしているわけではない。
だからこそ、昭夫にはつらかった。
母だけが、決まりを受け入れずにを張っているように見えた。
が帰ったあと、昭夫は母へ言った。
「もうやめろよ」
富美は返事をしなかった。
「兄ちゃんが帰らないって言ってるんじゃない。
ただ、配の数だけ直せばいいだろ」
「昭夫」
「母ちゃんがこんなことするから、幸子まで言われるんだよ」
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