"母が守った「4人目」" 第3話
富美は洗った茶碗を布で拭きながら、度だけ昭夫を見た。
「分かった」
その言に、昭夫はし戸惑った。
「分かったって……」
しかし富美は、それ以何も言わなかった。
翌の夕方。
昭夫は学から帰る途で配所のにっていた。
へ入るまでに、何度も引き返そうとった。
それでも扉をけた。
が帳簿を理していた。
「佐藤さんのところの……昭夫君だったね」
昭夫は拳を握った。
「兄は、ここにはいません」
がを止めた。
「うん」
「3からいません」
言葉にした瞬、胸が痛んだ。
まるで自分ので兄をから追いしているようだった。
それでも続けた。
「だから、もう兄の分はいりません」
はすぐには答えなかった。
「お母さんはってるの?」
昭夫は黙った。
それだけで答えになった。
はため息をつかなかった。叱りもしなかった。
「分かった。今は帰りなさい」
昭夫はをげ、逃げるようにへた。
帰り。
自分は正しいことをしたのだと何度も言い聞かせた。
それなのに、へづくほどはくなった。
そのの夕は芋と根の葉を入れたい噌汁だった。
富美は何も言わなかった。
昭夫も、配所へったことを自分から話さなかった。
幸子は学であったことを俊夫へ話し、俊夫は途から何度も欠伸をした。いつもなら昭夫も何か言うところだったが、その夜は族の声がくに聞こえた。
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事が終わると、幸子が茶碗を洗い、富美は俊夫を布団へ入れた。
昭夫は自分も寝たふりをしようとった。
そのだった。
「昭夫」
台所から母の声がした。
「ちょっと来なさい」
胸が鳴った。
配所へったことが分かったのだとった。
昭夫は覚悟を決めてちがった。
「俺がった」
「何が?」
「配所」
富美は驚かなかった。
「そう」
「兄ちゃんはもういないって言った。だから数からしてくれって」
鳴られるとっていた。
ところが富美は、「そう」ともう度言っただけだった。
「らないの?」
「ってどうするの」
「勝にしたんだぞ」
「分かってる」
「じゃあ何なんだよ」
富美は答えず、掛けをした。
「着を着なさい」
「どこくんだよ」
「裏」
の裏には、板を寄せ集めて作ったさな物置があった。
以は夫が具や炭を置いていたが、今は使わない鍋や古着、壊れた子などが詰め込まれている。になると戸が湿気で膨らみ、く引かなければかなかった。
富美は両で戸を引いた。
たいの匂いがした。
裸球などない。富美が持ってきたさな蝋燭のかりだけが、物置のを揺らしていた。
「何だよ」
昭夫が聞くと、富美は番奥までんだ。
そこには古い箱が積まれていた。
夫がきていた頃からあったものだった。
富美はそのつを横へずらした。
「伝って」
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昭夫も持ちげた。
ったよりい。
そのから、きな甕が現れた。
昭夫は眉をひそめた。
「漬物?」
「違う」
富美が蓋をした。
には布が敷かれていた。
さらに、そのにさな布袋がいくつもねてある。
どれも丁寧にが縛られていた。
昭夫はつをに取った。
妙なさがあった。
「けてごらん」
母が言った。
昭夫は紐をほどいた。
袋のをしいたところで、が止まった。
い粒が見えた。
米だった。
米だけではない。麦や雑穀も混じっている。
しかし、それは数分という量ではなかった。
甕の底まで、同じような袋が並んでいる。
「これ……どうしたんだよ」
富美は答えなかった。
昭夫はもうつの袋へを伸ばした。
そこにはさな切れが糸で縫いつけられていた。
蝋燭ので読めるよう、袋を顔へづける。
には、富美の字でたった文字がかれていた。
《正》
昭夫は息を止めた。
「母ちゃん……」
富美は黙ったまま、甕の横へ膝をついた。
昭夫は初めて気づいた。
配所から持ち帰ったはずの兄の分を、卓で見た記憶が度もない。
自分たちは毎のように腹を空かせていた。
母だって、夕飯をべずに「でしもらったから」と言う夜が何度もあった。
それなのに。
ここには、分のべ物が残されている。
昭夫は震える声で聞いた。
「母ちゃん、これ……いつからここにあるんだ?」
富美は袋のつにを置いた。
「正がいなくなったからだよ」
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