"知らない家族が守った家" 第1話
昭2711の終わり、京には朝から乾いたが吹いていた。
世田のれにある古い造ので、杉浦忠雄はきな荷物を面へろした。柱にはに削られながらも、まだ「杉浦」という文字が残っている。玄関脇の灯籠も、庭の柿のも、忠雄がこのをれた7とほとんど同じ所にあった。
「やっと帰ってこられたな」
誰に言うともなく呟くと、妻の澄子は胸ので呂敷包みを抱き直した。14歳になった男の浩は庭を見回し、9歳の千恵は初めて訪れた所を見るような顔で父のろにっている。
千恵には、こので暮らした記憶がほとんどなかった。
終戦のし、杉浦は野にむ忠雄の兄を頼って疎した。当初は数かのつもりだったが、京へ戻るに終戦を迎え、空襲を免れた自宅はその、駐軍関係者が利用する宅として接収された。
が焼けなかったとった、忠雄はからんだ。
焼け野原になった京でを失ったがどれほどいるのかを考えれば、根も柱も残っているだけで運が良かった。それでも、自分のが目のにあるのに帰れないという事実は、が経つほどくなった。
野では兄と畳を分けった。忠雄は農作業を伝いながら町へ仕事を探しにかけ、澄子は子どもたちが寝静まったあとまで縫い物の内職を続けた。
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兄夫婦は決してたくなかった。
べ物がりない代に族4を置いてくれたことだけでも、忠雄は謝しなければならなかった。だが、子どもが成し、布団を敷く所さえ窮屈になっていくにつれて、「京には自分たちのがある」といういだけが忠雄を支えるようになった。
今の、ようやく接収解除のらせが届いた。
忠雄は京で働きを探し直し、荷物をまとめた。澄子が「本当に戻れるのね」と何度も類を確認する横で、忠雄は7ぶりに自分のの畳へ座るのことばかり考えていた。
だからこそ、をけた直に千恵がにした言葉を、最初は理解できなかった。
「お父さん、誰かいるよ」
庭の物干し竿に洗濯物が揺れていた。
さな男児用のシャツ。膝の擦れたいズボン。女物の肌着と、幼い女の子のものらしい桃の着まである。
忠雄のが止まった。
「何だ、これは」
澄子も顔をげた。
い使われていなかったなら、庭に雑が伸びていることは像していた。しかし洗濯物が干されているとはっていない。
忠雄はに玄関へ向かい、戸へをかけた。
鍵はかかっていなかった。
「誰かいますか」
声をかけても返事はなかった。
には見覚えのない駄と子どもの靴が並び、忠雄はますます眉をひそめた。靴を脱いで廊へがると、壁にはらない釘穴が増え、以あった箪笥や飾り棚もなくなっている。
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それでも、そのものは確かに杉浦だった。
柱についた浩の幼い頃の背比べの傷も残っている。澄子が正にを飾っていたのも、し褪せただけで形は変わっていなかった。
忠雄は廊の突き当たりでを止めた。
仏だけは、ほとんど昔のままだった。
そして仏壇のに、さな男の子がで正座していた。
7歳くらいだろうか。痩せた背をまっすぐ伸ばし、両をわせ、目を閉じている。
仏壇には忠雄の父と母の位牌が並んでいた。
らない子どもが、自分の両親に向かってをわせている。
忠雄はしばらく声をせなかった。
「おい」
ようやく呼びかけると、は肩を震わせて振り返った。
その直、奥の部から女がってきた。
「正!」
30歳をし過ぎたくらいの痩せた女性だった。着古した割烹着を着ており、そのろから4歳ほどの女の子もそうに顔をしている。
忠雄は女を正面から見た。
「あなたは誰です」
女は忠雄の顔を見つめたまま、見る見る青ざめていった。
「もしかして……杉浦さんですか」
その言で、忠雄のに押し込めていた7分のものが気に噴きした。
「分かっているなら話はい」
声がった以にきくなった。
「ここはうちのです。接収は解除された。今から私たちが戻ることになっています」
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