"知らない家族が守った家" 第7話
朝、が玄関で靴を履くに、正は必ず仏へ寄る。
最初、千恵は廊で待っていた。
そのうち「私もやる」と正の隣へ座るようになった。
忠雄が仕事へるに仏を覗くと、のさな背が並んでいる。
自分の娘が、自分の両親の位牌へをわせる。
それは本来、何もおかしな景ではない。
しかし千恵へそれを教えたのは、忠雄ではなかった。
「お父さん」
ある朝、千恵が言った。
「おじいちゃんって、どんなだったの?」
忠雄はし驚いた。
これまで自分の父について、娘へほとんど話したことがなかった。
「厳しいだったよ」
「正くんのお父さんみたい?」
「何で俺がさんのお父さんをってるんだ」
「でも帳面いたでしょ」
千恵にとっては、会ったことのないの父親が同じので繋がっているらしい。
忠雄は苦笑した。
「うちのおじいちゃんはな、柿が好きだった」
それからしずつ父の話をした。
庭の柿を勝にもいで忠雄が叱られたこと。になると鉢のをで占領して、母にられていたこと。
千恵は声をげて笑った。
その夜、忠雄は久しぶりに父母の位牌のへ自分から座った。
を取り戻すことばかり考えていた7。
そので誰と暮らしていたのか、そのたちをいすことを、自分はどこかで回しにしていたのかもしれない。
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がけ、昭28になった。
京のは野よりがない代わりに、のまで染み込むような寒さがあった。造の古いでは朝になると廊の板がえ切り、吐く息がく見えるもある。
ある朝、管が凍った。
忠雄が台所で蛇を捻っても滴もない。
「困ったな」
呟くと、正が「父ちゃんの帳面」と言った。
忠雄は押し入れから健の帳面をした。
《昭252 凍結。側配管、布と藁で巻く。元栓横より湯をかけること》
かれた通りにすると、しばらくしてが流れ始めた。
忠雄は蛇からるを見ながら笑った。
「んだに助けられたな」
美津はし寂しそうに笑った。
「主、そういう細かいことだけは忘れなかったんです」
「だけは、って」
「ほかはよく忘れましたから」
財布を置いた所も、買い物を頼まれたことも忘れる。
なのに根の瓦が枚ずれたことだけは覚えていた。
忠雄は、会ったことのない健をしずつるようになった。
方で、がづくにつれて忠雄にはしい悩みがまれていた。
は予定通りていかなければならない。
それは最初からの約束だった。
は広くない。
浩も14歳になり、いつまでもと緒では落ち着いて勉する所もない。
美津もそのことは分かっており、けから本格に部探しを再した。
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しかし条件のよい借はなかなか見つからない。
ある、浩が言った。
「このままんでもらえばいいじゃないか」
「簡単に言うな」
忠雄は聞を畳んだ。
「おだって自分の部が欲しいだろ」
「階の端でいいよ」
「今はそう言っても、そのうち嫌になる」
浩は納得しなかった。
「じゃあ、になったら追いすの?」
「追いすんじゃない。約束だ」
「同じじゃないか」
忠雄は腹をてた。
だが、以のように鳴ることはできなかった。
がみ続ければ、いずれ互いの満が増える。
善だけで緒に暮らし続けることが、必ずしも正しいとは限らない。
だから忠雄は別の方法を探した。
仕事帰りに所の産へ寄った。
「母親と子どもなんですが」
そう言うと、主は渋い顔をした。
「保証は?」
忠雄はし黙った。
「私がなります」
主が顔をげた。
その瞬、自分で言っておきながら忠雄は驚いた。
とは血の繋がりもない。
数かまで、から追いそうとしていた族だ。
それでも、からた言葉を撤回する気にはならなかった。
数、産から軒の借を紹介された。
杉浦から歩いて15分ほど。
古い平の部を仕切ったで、呂はないが炊事は専用だった。
主は最初、美津の事を聞いて迷った。
忠雄が保証になると言うと、ようやく首を縦に振った。
「杉浦さん」
帰宅して話を聞いた美津は、しばらく声がなかった。
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