"知らない家族が守った家" 第8話
「どうしてそこまで」
忠雄は線を逸らした。
「別にあなたのためだけじゃありません」
「はい?」
「正と千恵が毎くまで会いにくと言いしたら面倒ですから」
美津はしばらく忠雄を見たあと、笑った。
「そういうことにしておきます」
「そういうことです」
3の終わり。
庭の柿のにさな芽が始めた。
が杉浦をるは、本当のでづいていた。
今度は、誰も追いされるわけではなかった。
のがしかくなった朝、は杉浦をた。
最初にていこうとしたの朝とは違い、今度の荷物にはさな机がつ増えていた。
忠雄が古具で見つけたものだった。
「正も勉するだろう」
そう言って渡すと、正は机の傷を何度も撫でた。
澄子は美津へ鍋をつ渡した。
「これは持っていって」
「でも杉浦さんの」
「同じきさのがつあるから」
本当はつとも使っていた。
それでも美津は言わずに受け取った。
浩は正の本を呂敷へ包んだ。
以勝に読まれてった本も、そのに入れている。
「これも持っていけ」
「いいの?」
「返さなくていい」
「じゃあ俺のじゃん」
「そうだよ」
千恵と恵子は朝から泣いていた。
「歩いて来られるでしょう」
澄子が何度言っても、は別れのように抱きっている。
最に正は仏へ入った。
いつもの所へ座る。
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忠雄もろへ座った。
正は線をて、しばらく目を閉じた。
「今までありがとうございました」
さな声で言う。
忠雄が聞いた。
「誰に言ったんだ」
正は目をけ、し考えた。
「分かんない」
忠雄は吹きした。
「分からないのか」
「でも言った方がいいとった」
「そうか」
正はちがり、仏壇を度振り返った。
その顔は、に初めて会ったよりしだけびて見えた。
がたあと、のは驚くほど静かになった。
階と階を自由に使える。
台所で誰かとぶつかることもなく、呂の順番を相談する必もない。
忠雄がずっと望んでいた活だった。
ところが最初の晩、夕飯をべながら千恵が言った。
「静かだね」
誰も答えなかった。
澄子の噌汁はおいしかった。
それなのに、以より卓袱台が広くじられた。
「父さん」
浩が言った。
「何だ」
「寂しい?」
「馬鹿を言え」
「俺はちょっと寂しい」
忠雄は聞を広げるふりをした。
「15分だろ。会いたければってこい」
浩は笑った。
「父さんもけば」
「何で俺が」
その週の曜。
忠雄は結局、のしい借へった。
表向きの理由は、の具を見るためだった。
「別に壊れてませんよ」
美津に言われ、忠雄はし困った。
「古いだから応見ておこうとっただけです」
「主みたいになってきましたね」
「冗談じゃない」
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美津は笑った。
狭いながらも、そこは確かにのだった。
壁には正の学のが貼られ、恵子の形が窓際へ置かれている。
杉浦にいた、美津たちの荷物はいつでも運びせるようさくまとめられていた。
ここでは違った。
箪笥のに写真が置かれている。
健の写真だった。
忠雄は初めてその顔を見た。
痩せた頬と、し器用そうな笑顔。
「このが」
「はい」
忠雄は写真へ軽くをげた。
自分でも、なぜそうしたのか分からなかった。
美津は何も言わなかった。
そのの、が杉浦へ夕飯をべに来た。
澄子がしめに煮物を作り、千恵が「正くんたち呼ぼう」と言いしたのがきっかけだった。
狭い茶のに7が座る。
のは毎の景だったのに、数かれただけで妙に窮屈にじた。
「狭いな」
忠雄が言うと、美津が笑った。
「のは毎この数だったじゃないですか」
「よく暮らせたな」
「暮らすしかなかったんですよ」
その言葉に、忠雄はし黙った。
暮らすしかなかった。
野で兄のへ世話になっていた杉浦もそうだった。
このへを寄せていたもそうだった。
誰かの親切だけで暮らしていたわけではない。
選べる所がなかったから、その所で暮らすしかなかった。
戦争が終わって7。
世のはしずつ変わっていた。
には物が戻り始め、にはしいが建ち、にも活気が戻っている。
本の占領期も終わった。
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