"出生届を止めた助産婦" 第2話
血はどうか、子宮の戻りはどうか、赤子が乳を吸えるか。つずつ確かめてからでなければ、をたくはなかった。
しかしのには、ハル以に助産婦はいない。
「フミさん、よく聞いてください」
ハルは湯の替え方と静の様子を見る点を、いつもよりい調で伝えた。もし血が増えればすぐをらせること、赤子をやさないこと、静をにしないこと。
「この子はどうします」
フミが尋ねた。
ハルは瞬迷った。
静は産直で疲れ切っており、まだでく抱かせるにはがあった。ハルは赤子をい布に包み、自分の持ってきた籠へ寝かせた。
「へく途まで連れていきます。途の松本さんのへ預けようといます」
ところがへると、はさらに激しくなっていた。川沿いのが増しているとに聞かされ、寄りをしている余裕はない。
ハルは赤子の入った籠を胸へ抱えた。
「清吉さん、静さんをお願いします。必ず戻ります」
たいの、ハルはの炭焼きへ向かった。
そのにはまだ、自分の腕のにあるさな命と、これからまれるもうつの命が、つの族のを何にもわたって結びつけることになるとは、考えもしなかった。
炭焼きへ着いた、ハルの着物の裾はを吸ってくなっていた。
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戸をけると、囲炉裏の煙と湯気、そして産独特の々しい匂いが度に押し寄せてきた。
「先!」
作蔵は救いを求めるようにちがった。
千代は奥の布団で横向きになり、汗で髪を額へ張りつかせていた。ハルが声をかけても反応が鈍く、陣痛が来るたびに苦しそうに呻く。
「いつからこんな状態です」
「夜の8頃からです。さっきから急に血が……」
ハルは千代の状態を確認し、表を引き締めた。すぐに命が危ないと断言する状態ではなかったが、決して楽な産ではない。
静の赤子を連れてきた籠は、囲炉裏からしれたかい所へ置いた。ハルは作蔵に湯を沸かさせ、清潔な布をあるだけ集めるよう言いつけた。
「先、子どもは」
作蔵が籠へ目を向けた。
「の静さんの子です。向こうも今夜まれました」
「緒のか」
「ええ。女の子です」
千代がく目をけた。
「……女の子?」
「そうですよ。でも今はの子の配をしているじゃありません。千代さん、自分の子を迎えないと」
ハルがを握ると、千代は々しく握り返した。
それからのは、計を見る余裕さえなかった。
陣痛は続くのに、赤子がなかなかりてこない。千代は途で何度か識をくし、そのたびにハルが頬を叩き、名を呼んだ。
「千代さん、眠っちゃいけない。聞こえますか」
「先……この子は……」
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「丈夫。あなたも子どもも、ここまで頑張ったんだから」
本当に丈夫だという保証などなかった。それでもハルは、産婦のではを見せるわけにはいかなかった。
夜けがづき、音がわずかにくなった頃だった。
千代の体から、さな赤子が滑りた。
瞬、部がしんとした。
「先……?」
作蔵の声が震えた。
次の瞬、細くい泣き声ががった。
「泣いた……」
作蔵はそのへ座り込み、両で顔を覆った。
ハルも胸の奥できく息を吐いた。
「女の子ですよ」
赤子は静の子よりひと回りさく、皮膚も赤かった。泣き声も頼りないが、ちゃんと息をしている。
ところがする暇はなかった。
千代の血がかった。
ハルは赤子を拭きながら千代の様子も確かめ、作蔵へ次々と指示をした。作蔵は慌てて湯を運んだ拍子に桶をひっくり返し、畳の端まで湯が流れた。
「作蔵さん、落ち着いて!」
ハルが声をげた。
籠にいた静の赤子が、その声に驚いたように泣きした。まれたばかりの千代の赤子も細い声をげ、狭い部に分の泣き声がなった。
ハルは千代を見なければならなかった。
の赤子もやしてはいけない。
その、ハルはを度、同じ布団の端へ並べた。
どちらも女の子。
どちらもい産着。
病院のような名札などない。
には肩の痣があり、の指がし曲がっていた。
しかし暗い灯ので、産着に包まれてしまえばからは分からない。
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