"出生届を止めた助産婦" 第6話
清吉は膝ので拳を握った。
「それで子どもを交換しろっていうんですか」
誰も責められなかった。
その通りだった。
痣は見違いかもしれない。
の形も赤子なら変わるかもしれない。
ハルの記憶だけで、「あなたが3抱いてきた子は別のの子です」と決めるには、あまりにもすぎた。
「絶対と言えないんですか」
作蔵が尋ねた。
ハルは首を横へ振った。
「申し訳ありません」
部にい沈黙が落ちた。
鉢の炭がさく弾けた。
赤子のが泣き始めると、静がすぐに胸へ抱き寄せた。もうもつられるように声をげ、千代が背を優しく叩いた。
とも、何も考えずに体がいていた。
。
たっただった。
けれど母親にとって、そのはくなかった。
静は腕のの赤子が初めて乳を吸ったのことを覚えていた。うまく吸えずに何度もをし、そのたびにフミが「焦らなくていい」と言ってくれた。
千代は夜、かった泣き声がしきくなっただけで嬉しくなった。のを失っているだけに、朝まで息をしているか何度も先へ指をづけた。
その子が。
自分の子ではないかもしれない。
静が先に泣きした。
「分からなくなっちゃった……」
清吉が妻を見る。
「静」
「自分で産んだ子なのに、顔をちゃんと見たにはもうこの子だったんです」
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涙が赤子の産着へ落ちた。
「向こうにいる子が私の子だと言われても……この子を抱いたら、この子も私の子みたいで……」
千代も唇を噛んだ。
「私もです」
作蔵が驚いたように妻を見る。
千代は赤子の頬を指でなぞった。
「私、この子を産んだ、顔を覚えてないんです」
産直は識が朦朧としていた。
ハルに「女の子ですよ」と言われたことさえ、になって作蔵から聞いていしたほどだった。
「でも昨の夜、この子が泣いた、胸が苦しくなったんです」
千代は静を見た。
「抱かなきゃってった」
静は泣きながら頷いた。
「私も」
「じゃあ」
千代は度言葉を切った。
「どっちが先だったとしても、もう母親になってしまったんじゃないでしょうか」
正解ではなかった。
誰も「それならこのままでいい」とは言えない。
血のつながった実の子をらずに育て続けることへの迷いも残る。
だが、3のまでしなかったことにはできない。
清吉がく息を吐いた。
「今は決められません」
作蔵も頷いた。
「うちもです」
もう晩。
それぞれのへ帰って考えることになった。
ハルはつの族を見送り、戸に残った。
にはい夕がていた。
誰の子か。
誰が育てるのか。
届に、どの父と母の名をくのか。
本来なら、そんなことに迷う必などなかった。
全部、自分がんだ迷いだった。
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その夜、ハルはをることまで考えた。
助産婦を辞める。
度と赤子を取りげない。
それが責任の取り方なのではないかとった。
ところが夜更け、戸を叩く音がした。
けると、清吉がでっていた。
「先」
「どうしました」
清吉はしばらく黙っていた。
「の朝、うちへ来てもらえませんか」
「静さんに何か?」
「違います」
清吉は暗いへ線を落とした。
「決めました」
その言だけを残し、清吉は帰っていった。
翌朝、ハルが静のへくと、清吉とフミはすでに居へ座っていた。静は奥の布団で、赤子を胸へ抱いている。
「先」
清吉がハルを見る。
「入れ替えます」
ハルは何も言えなかった。
清吉は昨夜ほとんど眠らずに考えたという。
「今このまま育てても、きっと考えます。この子は本当にうちの子なのかって。先の記憶が違っていたらどうしよう。でも、本当に取り違えていたなら、うちの娘は別ので育つことになる」
清吉の声は震えていた。
「分かった点で戻すしかないといます」
フミも顔を伏せながら頷いた。
「私もそううよ」
誰より反対するとわれた姑だった。
しかしフミは赤子を見ながら、「になって本当のことが分かったの方が、もっと残酷だ」と言った。
静だけは何も言わなかった。
ハルがづくと、ようやく顔をげる。
目は赤く腫れていた。
「静さん」
「分かってます」
静はさく言った。
「戻す方がいいって」
そのの午、作蔵も同じ答えを持ってきた。
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